見出し画像

不発に終わった時限爆弾。猪瀬直樹:作 弘兼憲史:画『ラストニュース』

社会人になったら行きつけのスナックの1つや2つできるんだろうなと考えてた時期が僕にもありました。

それは、大学の研究室にみんなで買い揃えた島耕作の影響に他なりません。

結局、社会人になって10年経った今も、行きつけのスナックなんてものはできてはいないけれど、課長から会長に駆け上がった島耕作のサラリーマン列伝は今も変わらず読み続けています。

その愛してやまない島耕作の作者弘兼憲史さんと、最近ゼミにも通わせていただいている猪瀬直樹さん共作の漫画があったとは驚きました。それが『ラストニュース』です。

ラストニュースの概要はwikipedia先生に頼ります。

在京キー局のCBSテレビで平日の夜11時59分から放送される、わずか11分間のニュース番組『ラストニュース』。基本的には直近の話題のニュースの中から1テーマを取り上げ深く背景を掘り下げていく番組である。しかし業界のタブーとされる話題に鋭く切り込んだり、他の放送局や時には同じCBSテレビの他のニュース番組をも出し抜いてスクープを連発することも多く、業界内では異端児扱いされている。そんな『ラストニュース』の舞台裏の様子を中心に、様々な犯罪の裏に隠された真相や、時に日本の政財界の闇に迫ったりしていく。(wikipediaから引用)

早速買い揃えて読んでみると、1991年〜1995年の作品であるにもかかわらず、取り扱っているテーマは20年以上経った今も古くなってないものばかり。

特に勉強になったものを以下にいくつかピックアップします。


Freedom of press

憲法第21条にある「出版の自由」について。

憲法の原文はGHQが作ったものなのでもともとは英語。それを日本語に翻訳したという成り立ちです。「出版の自由」の原文は「Freedom of press」。

本来、「Freedom of press」を翻訳すると「出版の自由」ではなく「報道の自由」となるはずなのに、そうならなかったのには官僚の意図があった、という話。

報道、と、出版ではずいぶん意味が違います。「Freedom of press」は公の権力に対してアクセスする自由のこと。好き勝手報道、詮索されるのはうっとうしい、という官僚達の悪だくみにより、官僚達の狙った通り、日本は戦前も戦後も官僚主権バンザイになっています。

Newspicksアカデミア 猪瀬ゼミの模様


不偏不党とは

放送法第1条にある「不偏不党」のワード。ただ単に「中立」の意味で解釈されることが多く、たいした主張がないのを、中立じゃなきゃいかんから仕方ない、という免罪符として使います。

これもGHQ作成の原文では、権力に干渉されても立場を歪められない、という権力に対する不偏不党という説明が添えられていたにもかかわらず、そこはごっそりカット。雑に言うと、そうしてできあがったのが、ドンファン大好きなジャパニーズテレビ放送、と言えるかもしれません。


東条英機処刑の日

東条英機らA級戦犯7人の処刑の日は12月23日。クリスマス前の休日ヤッホイとしか思ってなかったこの日に処刑が行われたという事実。初めて知りました。

この点は、先日発売された『平成の重大事件 日本はどこで失敗したのか』にも描写があるので引用します。

マッカーサーは天皇制と軍国主義の結びつきを完全に断とうと考えたのではないかと思います。いわば、昭和天皇の戦争責任を、次代の天皇が「返済」する仕組みなのではないかと。

つまり、一年に一度は敗戦を、そしてアメリカを思い出せという意味で仕込んだと。ただ、僕を含む多くの人がそうであるように、その仕掛けは失敗に終わります。

ところが、昭和天皇が長生きしたので、日本国民はすっかり12月23日がA級戦犯処刑の日であることなど忘れてしまって、年末の天皇誕生日をクリスマスとセットで楽しんでいる。 マッカーサーが仕掛けた時限爆弾は、結局、導火線が長すぎることで不発に終わったのかもしれません。

来年以降今の天皇誕生日がどうなるのかわかりませんが、とりあえず平成最後の天皇誕生日の今年は、豆知識披露してドヤッとしたいと思います。


ちなみに、僕の誕生日は5月3日の憲法記念日。せっかく憲法記念日に生まれたので一年に一度くらいは、現行憲法のこと、日本のこと等々考えてみたいと思った漫画『ラストニュース』でした。


おまけ

途中、初芝電産の中沢社長というワードが出てきたり、主人公日野プロデューサーお祝いパーティーのサプライズ演出など弘兼先生ならではな要素もあり、小ネタで島耕作ファンはさらに楽しめる内容になっています。


#比喩 #漫画 #マンガ #猪瀬直樹 #弘兼憲史 #コラム #書評

サポートありがとうございます! こんな俺にアリガトウ こんな俺なのにアリガトウ 謝りたいと感じている だから感謝というのだろう これを感謝というのだろう