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Le seul et l’unique(厚木)

February 3, 2019

昨日書いた、唯一無二という名のベーカリーは厚木にある。

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公園(いまは貯水池工事中)に面した、鉄と木とコンクリートのシンプルな外観の店は、焙煎の香りでもしてきたら、コーヒーショップと思ってしまうかもしれない。でも外のベンチから見えるのは、ドイツ製のオーブンと磨かれて光を放つ作業テーブルだ。(設計施工 有限会社東匠)。

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パンを焼いているのは、山神高志さん。菓子職人としてフランスで修業するうちにパンの魅力にとりつかれてしまい、帰国後はパンの道へ。ジョエル・ロブションとブラフベーカリーを経て独立。

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「イチゴとリュバーブのクロワッサン」は自家製のコンフィチュールをサクサクのクロワッサンが包み、その上をアーモンドとチーズのクリームで軽く覆っている。繊細な仕事。可愛い甘さ。

「リンゴとフランボワーズのマフィン」は石臼挽きの全粒粉の、ほろほろとした粗い食感。けれど柔らかい。これはもう菓子職人ではなくてパン職人の仕事だ。小麦の粒度にこだわり、口に入れたときの崩れかたを考えている。

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「クールショコラ」はリーンな生地にカカオとチョコチップをたっぷり練りこんだ、濃厚なハートチョコ。艶のあるセミドライオレンジがちょっとはみ出ていて、ハートをくすぐる。ベンチで食べていると、カレーパンが焼きあがる。隣に座ったお客さんに薦められて、再び買いに戻る。ロブションさんのカレーパンを思い出す。山神さんのカレーパンも揚げずに、オリーブオイルを塗って焼いている。冬日なか、火傷しそうに熱々のカレーパンを齧るのって、いいね。

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九州産の小麦粉で仕込んだ「栗とカシスのパン」には、隠し味に麦茶が入っている。ほうじ茶テイストが流行の昨今だけれども、これはあえて麦茶。この味を知っている。ただ、パンで感じるのは初めてのことだ。麦の香ばしさを楽しむ。

ひとつひとつのパンは一話完結する物語だ。それらがいくつもいくつも連なって、この店をかたちづくっていく。

ロブションとブラフでパンを焼いてきた山神さんがこれから目指すのは、唯一無二のパン。とても、楽しみだ。

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Le seul et l’unique(ルスルエルユニック)
所在地 神奈川県厚木市旭町1-21-8 旭ビル102
営業時間 9時〜18時(売り切れ次第終了)月・火曜定休


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