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【考察】なぜストーンズは左CBだったのか?|マンチェスター・ダービー|23/24 プレミアリーグ第10節|

23/24プレミアリーグ第10節マンチェスター・ダービー。ペップ・シティが赤い悪魔のホームで攻守で躍動した90分となった。

この試合でペップが用いた戦術がストーンズの偽CB。昨季国内そして欧州の舞台で猛威を振るった戦術の一つ。

そんなペップ・シティの象徴的な戦術に一つの変化がこの試合見られた。

その変化がストーンズの左CB起用だ。
今までストーンズの偽CB戦術を用いる際に、ストーンズのスタートポジションは右CBだった。しかし今節のマンチェスター・ダービーでは右CBではなく、左CBを主としていた。

本当に小さな変化。本当に僅かな変化。しかしそこには明確なペップの狙いがあったはず。ゲームの流れの中での一時的な変化かもしれない?いや監督はペップ・グアルディオラだぞ。絶対に何か意味が隠されているはずだ!という気持ちに駆り立てられ、ストーンズの左CB起用の狙いを考察してみた。

①GKエデルソンの左CB化

ストーンズの左CB起用の1つ目の狙いはGKエデルソンの左CB化。ストーンズを右CBではなく、左CBで起用したからこそよりエデルソンの配給力を引き出す土台が用意されることに。

エデルソンは非常にキックが上手い左利きのGK。左利きというのが一つのポイントなので頭の隅に置いておいてここからの話をぜひ聞いてほしい。

GKエデルソンはいつものように、この試合もシティの後方が窮屈そうにボールを動かすとゴールマウスから離れてビルドアップをお助けする役回りを担った。

GKエデルソンから右SBカイル・ウォーカーへのフィード。右ハーフスペースで待つアルバレスへのフィード。左サイドへ中央から流れたベルナルドへのフィード。

いつも以上にGKエデルソンからビルドアップの出口となるような、相手のプレスをひっくり返すようなフィードが前線で待つ選手たちに正確に送り込まれる回数が多かった。

その理由はエデルソンのキックが素晴らしいのはもちろんだが、彼が左寄りのエリアでビルドアップに関与できたことも大きな要因に。

この試合エデルソンがボールを頻繁に受けたエリアが左CBのエリアだ。左CBに入ったストーンズはビルドアップの際に中盤に上がる『偽CB』を発動する。その為ストーンズが開けた左CBのスペースにエデルソンが移動してビルドアップに関与できるように。

そして頭の隅に置いてもらったようにエデルソンは左利き。左利きが最終ラインでボールを受けた際に複数の選択を持つことが出来るのは左寄りのポジションになるはず。

もしストーンズが右CBだったらエデルソンがボールを受けるエリアは右CBのエリアとなり、右寄りでボールを受ける回数が多かったのかもしれない。エデルソンは右足でも十分なキック精度はあるが、左足に比べれはキックの精度とパスコースは減ってしまうはずだ。

ユナイテッドのハイプレスを交わすためにGKエデルソンのビルドアップに組み込む→エデルソンの配給力をより引き出す舞台を整える→右よりも左寄りでプレーさせたい!→ストーンズに左CBから「偽CB」を実行させることで左CBのスペースを開ける!→GKエデルソンが左寄りでビルドアップに関与できるようになる!→GKエデルソンからいつも以上にビルドアップの出口となるようなパスが前線へ送り込まれるように!

こんな流れをペップは想定したのかもしれませんね。

前節のブライトン戦でもストーンズの偽CB戦術は用いられた。この試合ストーンズの立ち位置は右CBだった。GKはエデルソンではなく、右利きのオルテガだった。この試合を振り返るとオルテガは右利きということもあり、ストーンズが右CB→右CHへ移動したことで生まれたスペースで、頻繁にビルドアップに参加してブライトンのプレスを剥がすシーンがあった。今季は昨季以上にGKが高い位置に上がってビルドアップに関与するシーンが多く見られるかもしれない。それに伴いストーンズの立ち位置も右に左に変わっていくのかもしれない。

②ラッシュフォード対策

ストーンズの左CB起用の2つ目の狙いはラッシュフォード対策。ユナイテッドの大きな得点源になる選手はマーカス・ラッシュフォード(今季はここまでなかなか調子が上がらない様子ですが…)。

ブルーノ・フェルナンデス(こちらも中々調子が上がらない様子ですが…)と並んでユナイテッドの攻撃の中心的選手。ラッシュフォードに時間とスペースを与えれば一気にゴールに迫られてしまいます。カウンター局面になった時の彼の切れ味はそれはそれは恐ろしい。

そんなことをペップも踏まえてラッシュフォードの鋭い刃をどう隠すのか考えていたはず。その対策として最終ラインに留まっているルベン・ディアスをラッシュフォードサイドに配置することだったのかなと。

ラッシュフォードは左WGを主戦場にしている為ルベン・ディアスを右CBを軸に起用。そうなるとストーンズが左CBになった流れが2つ目の私の考察だ。

ストーンズはボール保持局面になると、何度も話してきたが中盤より前に上がってボールに関わっていく。その為に自分の守備の持ち場であるCBのエリアに戻るまでに少しの時間が必要になることも。その僅かな時間でラッシュフォードはカウンターを完結させてしまう。

↑ストーンズが戻れない場合はグヴァルディオルがカバー!彼のスピードが活かされる!

こういった理由からもストーンズを左CBから『偽CB』を発動させ、右CBにルベン・ディアスを最終ラインに留まらせてラッシュフォードに時間とスペースを与えない狙いがあったのではと考察してみた。

前半はそんなルベン・ディアスがラッシュフォードと対峙するシーンも多くウォーカーと共に彼の持ち味をうまく隠していった。

おわり

ここまで「なぜストーンズが左CBで起用されたのか?」について私の考察を書いてきた。

こういったペップ・シティの僅かな変化を考察するのもこのチームを長く観察する楽しみ。

立ち位置がいつもとは少し違う中でも自分の特徴を存分に発揮したロドリとストーンズは本当に凄いなと感じた。むしろ攻撃面ではいつも以上にポジションを入れ替えて、アグレッシブにプレーしていた印象。ボールを触ればミスらないし、動き回る上に動く場所を間違わないし、動くタイミングも絶妙。ため息が出てしまうほどの巧さを見せつけられるシーンも。

最後にあくまでこの形(ストーンズの左CB起用)はオプションの一つに過ぎないと強調したい。戦い方の手札を増やしたという表現をした方がよさそうだ。次の戦いではしれっとストーンズの立ち位置を戻しているかもしれないし、また左CBかもしれません。

そんな僅かな変化を汲み取ってサッカーを見るのは面白い。そんな僅かな変化に気付けるのも一つのチームを定期的に観察するメリット。

またペップ・シティの僅かな変化に気づけましたらご紹介したいと思いますので乞うご期待!それではまた!


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