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【バイエルン考察】複雑すぎるCB問題

2023年7月バイエルンはPSGへ移籍したルカ・エルナンデスの後釜としてナポリからキム・ミンジェを獲得した。移籍金は5000万ユーロとも言われ、アジア人史上最高額となった。移籍後初の公式戦DFBスーパーカップでライプツィヒに0-3で負けている中で途中出場してバイエルンデビューを飾った。敗戦確実となった中でも献身的なスライディングなど闘志あふれたプレーはトゥヘルを納得させるには十分な要素となっただろう。ブンデスでは毎試合先発に名を馳せ、デリフトやウパメカノが手薄なCB陣を支え続けた。
一方デリフトは度重なる故障や低調なパフォーマンスからベンチを温めることが増えた。センターバックは右ウパメカノ、左ミンジェが固定された。
年が明けた2024年、ミンジェはアジアカップのために離脱し、デリフトの出場機会が少しずつ増え始めた。しかしそこにまたしても横槍が入った。トッテナムからエリック・ダイアーが加わったのだ。ダイアーの加入でデリフトはCBの4番手との報道も飛び交った。そして、退団希望報道も流れ、バイエルンファンの間で波紋が広がった。


ミンジェには酷な話

昨夏加入したばかりのミンジェには多くの試練が待っていた。

まずは兵役。韓国人男子には必ず課されるが、ミンジェは夏に兵役をしつつの移籍となった。当然チームとの合流は遅れ、調整は困難を極めたはずだ。

CB陣の度重なる怪我による酷使も彼にとっては大きな負担となっただろう。デリフトとウパメカノが入れ替わりに怪我をしたため、ミンジェはほとんどの試合でフル出場を強いられた。疲労のためかビルドアップや対人のミスが目立つようになり、足をすくわれることも多々あった。

ここまでの問題に対してミンジェはうまく対応してきたが、やはりアジアカップでの離脱は彼にとっては大きかっただろう。気候や時差により疲労は蓄積され、復帰後も本来のパフォーマンスからはかけ離れたものであった。特に復帰初戦のレヴァークーゼン戦、低調なウパメカノにも足を引っ張られた上、何といってもトゥヘル政権初の3バックという状況下でもあったためでもあるが、組み立てのパスはつながらず、難しい試合となってしまった。
それ以降の試合も失点に絡むシーンが増え、ラツィオ戦の2ndレグではベンチとなってしまった。

ウパメカノの将来は不透明?!

ラツィオ戦1stレグでPKを与えて退場になったウパメカノ。週末のボーフム戦でもイエローカード2枚で退場になってしまった。今シーズンのパフォーマンスにおいても満足できるものとは言えず、多くの失点に関与し、その評価は急降下となっている。
昨シーズンもシティ戦の2試合で多くのミスを犯し、不安定さを露呈している。
圧倒的なフィジカルとスピードを武器にバイエルンのピンチを幾度となく救ってきた彼は再び輝きを取り戻せるのだろうか。
移籍の噂が徐々に取り沙汰される彼は今夏の売却リストにも入っているとされている。本人は残留を望むが、その去就は保証されていない。

ファンのお気に入りデリフト

デリフトの出場機会が減ったとき、移籍が取り沙汰されたとき、ファンは常にデリフトの味方だ。
それは至って単純、22/23シーズンのCLラウンド16パリ戦2ndレグのゴールラインクリアだ。無人のゴールに流されたシュートをゴールラインでクリアし、ファンに向かってガッツポーズと雄叫びをあげたその姿勢は多くのバイエルンファンやウルトラスの記憶に今も新鮮に残る。その忠誠心に対してファンは最大限の敬意を払っているのだ。

見出されたデリフト/ダイアー

ラツィオ戦2ndレグはトゥヘル政権になって以降でベストと言える試合の1つだろう。その最終ラインを支えたのはデリフトとダイアーだ。開幕からスタメンを続けたウパメカノとミンジェはスタメンから外され(ウパは出場停止)、序列を下げつつあったデリフトと今冬加入のダイアーだ。意外にもこの組み合わせは多くのドイツメディアが予想しており、韓国メディアはそれに強く反発したということもあった。
蓋を開けてみればこの組み合わせはフィットした。ダイアーは移籍後から安定したパフォーマンスを続けており、デリフトは絶対的なディフェンスリーダーとしての役割も担うようになった。よって、この2人の相性は非常によく、ラツィオ戦以降も先発はダイアーとデリフトとなっている。この2人の唯一の弱点といえばスピードだろう。カウンターに対応できるほどのスピードはない。ここまでカウンターを喰らうシーンは見られていないが、CLで勝ち進むと避けては通れないだろう。この課題をクリアできればこの2人は世界最高峰のCBともなり得るだろう。

今夏チームを出るのは誰か

ダイアーのレンタル期間が延長され、スタニシッチがレンタルから復帰する今夏、守備陣の人員整理を迫られることになるバイエルン。チームを後にするのは誰なのか、報道陣の間でも議論が加熱している。
デリフトは放出候補であったが、パフォーマンスが向上し、チーム愛もあるこの男が去るとは考えにくい。
そうなるとミンジェかウパメカノだが、ウパメカノの方が有力だろう。直近数試合はベンチを温めるようになり、サポーターからの批判や、勝負所での弱さなどを踏まえると自然な流れだ。年齢もまだ若いので引く手あまただろう。
ウパメカノには申し訳ないがバイエルンのように最終ラインから組み立てを行うチームでビルドアップの不安定さは致命的な欠陥となってしまう。彼はドルトムントのようなチームが適している。そのフィジカルは筆者好みではあるが、バイエルンのファンとしてはそれが本音なのだ。彼の成功を心から願っている。

監督が変わり、多くのドイツ人選手が30歳を迎える来季、バイエルンは一つの過渡期を迎えることとなる。放出する選手の人選を誤ってはならない。さらに未来のバイエルンを担う選手の契約延長や新たな選手の獲得など課題は山積みだ。
今後のバイエルンの動向に注目したい。

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