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【バイエルン考察】トーマストゥヘルは解任されるのか

現地2/14日チャンピオンズリーグR16バイエルン対ラツィオ
ホームのラツィオが1-0で勝利を収めた。


試合内容がひどい

トゥヘルバイエルンではいい意味でも悪い意味でも試合に落ち着きがない。原因はいくつかある。
1つは組み立てのおぼつかなさだ。
ナーゲルスマンの時代はキミッヒが最後列から組み立てに参加した。それにより後ろの枚数が増え、安定した組み立てができた。トゥヘル就任以降のキミッヒは降りるのではなく、完全に中盤で受ける形となった。結果としてキミッヒが囲われるケースが増え、あわただしく前に出したパスはカットされるか、繋がったとしてもすぐにロストしてしまう。それは相手のショートカウンターを誘発し、失点につながるケースも見られた。
決定機の少なさも気になる。
今期のバイエルンのゴール数は59、xGが1試合当たり2.26(21節時点footystats参照)だ。参考にレヴァークーゼンはxG2.01に対して55ゴール。レヴァークーゼンより決定機はあるように見えるが、例えば先日のレヴァークーゼン対バイエルンは1.61と0.98とレヴァークーゼンが圧倒。ラツィオ戦に関してはデータが調べきれなかったが、シュート7に対し、枠内0の時点でお察しだ。試合を見ていてもチャンスというチャンスは前半のケインのシュートと連携からのムシアラのシュートほどでいずれも点には至らなかった。
決定機の少なさは試合全体で押し込む展開が少ないことに由来する。今季のボール奪取の遅さが気になっていた。前2政権下では、ゲーゲンプレスを貴重とし、ボールを奪ってから攻撃をすることによって相手に陣形を整える時間を与えずに攻撃することができた。今季はそれができていない。ボールを失った直後の意識が人によりまちまちだ。プレスをかける人がいれば、全く追わない人もいる。当然プレスははまらずにかわされ、カウンターを喰らって結果的に決められる。よく見たパターンだ。プレスをかけないにしても守備をしなくていいわけではないが、特にサネに守備意識の低さが目立つ。プレスをかけず、ただ俯瞰しているだけ。
トゥヘルの守備の意識の高さが選手の守備意識の低さに繋がっているのはなんとも皮肉な話だ。
プレスだけではない。決定機の少なさは得点パターンの少なさも要因の一つだ。
今季のバイエルンはカウンターからの得点が10を超え、ブンデス最多だ。カウンターで点を決めることは否定しないが、それ以外の得点パターンがやはり少ないように感じる。ペナルティエリアに侵入する回数が少なく、かと言って相手を揺さぶる動きがあるわけでもない。個人任せ過ぎて連携による得点があまりない。
この2つはトゥヘルになってから常に言われてきたことだ。それはバイエルンらしからぬスタイルであり、トゥヘルの試合が面白くないと言われる要因でもある。
実際、ファンの間で解任論は昨シーズンから既にあった。ブンデスをなんとか制したから良かったものの、内容面では満足するような展開はほとんどなかった。開幕前のスーパーカップでライプツィヒ相手に完敗したときもそうだった。その後、リーグ戦では戦績は安定していたのの、トゥヘルの試合は面白くないと言われ続けていた。ナーゲルスマンがドイツ代表監督に就任する前はナーゲルスマンを戻せと言われ、ナーゲルスマンがドイツ代表監督に就任した後はフリックに戻せと言われる始末だ。それでも解任されなかったのは、試合内容がだめでも勝ちを拾える試合が多かったからだ。
ドイツメディアはよく、トゥヘルとナーゲルスマンの比較として、逆転の数を引き合いに出していた。確かに就任当初はそうだったかもしれない。しかし、ここに来てそれも怪しくなってきた。トゥヘルはこの2連敗で公式戦43戦10敗、ナーゲルスマンは84戦10敗となり、逆転云々ではなく、単純にナーゲルスマンの時はそもそもリードを奪われることが少なかったということだ。さらに、重要な試合での敗戦が多いことから批判の声が高まっている。
これに関しては、選手のメンタルもある気もするがそれも含めて監督の責任といわれても仕方はない。

後任は誰なのか

これは、解任のパターンにもよるだろう。
今解任するのであれば、ハンジフリックが再登板が一番可能性として高いだろう。これは、ファンが最も期待するプランだと言われている。また、これはあくまで筆者の推測なのだが、選手もこれが望みなのだろう。そう思ったのはラツィオ戦の選手の態度だ。今季最低の試合となったあの試合、いくらなんでも選手のやる気や闘志を全く感じない。勝つために試合をやっているようにはとても感じなかった。トゥヘル解任のためにあえてやっているとどうしても感じてしまったのだ。似たようなことはアンチェロッティ時代にもあった。監督を解任させるためにあえて怠慢プレーをする。選手達なりの訴えなのだ。もし本当にわざとやる気ないプレーをしたのであれば、それは後任はこの後紹介するシャビアロンソではなく、ハンジフリックを選手たちは望んでいるから以外に理由は想像できない。もちろんあくまで憶測なので、真相はわからない。
シーズン後の解任なのであれば、シャビアロンソは有力候補の一人だ。フロントにとってこれが理想形なのだろう。報道ではシーズン終了後まではトゥヘルで行くという記事は多々見られる。それは他でもなくシャビアロンソ招へいを狙っているからだろう。しかし、リヴァプールのクロップ監督が今季限りで退任するため、争奪戦が予想され一筋縄ではいかないのが難しいところだ。筆者の考え的にはいずれバイエルンで彼が指揮をとるところも見てみたいものの、今はまだ早いのかとも思っている。
大きくこの2パターンだろう。
筆者の希望はどちらなのか。
どちらかといわれれば、前者寄りだ。バイエルンでの確かな実績もある上、立て直すという面でもハンジに指揮をとってもらうのが一番だとは思う。
実は筆者はナーゲルスマンのフットボールが嗜好であるため、本当のところは彼に続きを託したいとも思っているが、残念ながらそれはかなわない。

ブンデスが一番大事

これは近頃のバイエルンが失いつつある精神であるが、CLよりもブンデスリーガが大事だ。もちろんCLで勝つことも重要であり、それはドイツフットボールにとってもとても重要なことである。これは日本人にあまりない感覚かもしれないが、欧州のチームがまず優先するのは自国リーグのトロフィーだ。Jリーグのチームも同様であるはずだ。それがクラブの伝統を担保するものであり、何よりサポーターの願いなのである。
近頃のバイエルンはその精神を失いつつあるように見える。特にCLの前後の試合では全力プレーにかけるような光景が多々見られる。これはサポーターに対する大きな裏切りである。監督が解任されても選手たちが考えを改めない限りはチームとサポーターとの距離は気付いたころには離れているかもしれない。悪いのは監督だけではないということを最後にこの記事を締めようと思う。


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