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【ドイツ事情】 映画『PERFECT DAYS』に見る ZEN(禅)#479

※ 音声はコチラ↓ 

Hallo zusammen!
Mein Name ist Hiromi Shirai.
『白井博士のドイツ語講座』へようこそ。
白井宏美です。


毎週水曜日はドイツ事情について、私の体験も踏まえてお話しています。


第470回では「一度は行きたい街 リューデスハイム(Rüdesheim)」というテーマでお話しました。


今日は「映画『PERFECT DAYS』に見る ZEN(禅)」というテーマでお話します。

この映画の監督はドイツヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)です。

『ベルリン・天使の詩』(’87)など数々の名作で知られる、現代映画を代表する映画監督ですね。


この映画を観て、私個人としていろいろ感想はあるのですが、ドイツで生まれ育った監督がよくここまで日本人の機微を表現できるなぁと、まずは感心しました。

もちろん、キャストには日本人の名優が揃っていますし、共同脚本も日本人であるというのもありますが、ヴィム・ヴェンダース監督の日本文化・芸術などに関する造詣の深さがあるからこそと思います。

ヴィム・ヴェンダース監督は小津安二郎監督を敬愛していることでも有名です。


さて、日本でも話題になった、この『PERFECT DAYS』という映画ですが、ドイツでも話題になっています。

ヴィム・ヴェンダース監督の長編映画としては、ここ30年で最高の作品だという高評価もされています。
Kritik zu Perfect Days: Wim Wenders bester Spielfilm seit 30 Jahren! - FILMSTARTS.de


この映画に関する感想・批評日独比較しながら読んでいて、とても興味深く思ったことは、ドイツでの感想・批評に「ZEN(禅)」という語がよく出てくることです。


たとえば DER SPIGEL の記事では次のようなタイトルが付けられています。
Zen oder die Kunst, Toiletten zu schrubben
(禅あるいはトイレを磨く芸術)

こちらの映画批評記事の結論(要約)部分でも「禅的だ」という表現があります。


「ZEN」は欧米でも定着してから長くたち、今でも一定の人気があります。
このような映画を見ると、これは「ZEN」だと意識するのですね。
それに対して、日本人からの感想・批評から「禅」という語が出てこないのは、「禅」が潜在意識のレベルにまで達しているからではないかと考えています。
つまり、もう習慣になっていて、日常的な行動や考え方、自動的な反応として身についているのです。
もはや意識もしない状態なのだと思います。


は、日本の普段の暮らしの中で無意識的に実践されています。家庭、学校、社会のなかで、両親、祖父母、教師、上司、近所の人々などから、「みずからを律し、万物に感謝し、ムダを省き、生き方を見つめ直すこと」が自然と伝えられていきます。
水墨画や書、作庭、茶道など禅にもとづいた文化芸術が盛んで、「禅は日本文化の骨格をも形成」しているわけです。
引用・参考: 禅とは何か? 日本人が愛する「禅の心」を解剖する10の質問 | 和樂web 美の国ニッポンをもっと知る! (intojapanwaraku.com)


さらに根本的なことは、日本の八百万の神でしょう。

私も子供の頃、祖母や両親から米粒の中にも神様がいらっしゃるから大事に扱わなくてはならない。こぼしてしまって踏んだりしたら目がつぶれてしまうと教えられました。

木、山、川など自然のなかや、台所の神様やトイレの神様もいらっしゃるのです。

日本の小学校で児童が自分たちの使うトイレを掃除することに、海外から驚きの声があがりますが、「トイレを掃除する」ということの意味も他国とは大きく異なるのでしょう。


皆さんはどう思われますか?

それでは、このあとも素敵な1日を!
Einen schönen Tag noch!
Tschüs!




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