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さよなら銀河鉄道999アンドロメダ終着駅

あらすじ
機械帝国の女王プロメシュームを倒し、地球に戻りメーテルと別れた後に、地球で抵抗運動を続けていた鉄郎の元にメーテルからメッセージが届く…
メッセージに導かれるように再び銀河鉄道999に乗車した鉄郎は、途中下車した惑星ラーメタルでプロメシューム亡き後メーテルが女王の座についた、と聞きショックを受ける
ラーメタルでメーテルと再会した鉄郎だったが、メーテルは多くを語ろうとしはしない
メーテルの身体を狙う機械人間メタルメナ、志を共にするパルチザンのミャウダー、そして鉄郎の前に現れる黒騎士と名乗る謎の男…
キャプテンハーロックやクィーンエメラルダスの助けを得ながら鉄郎とメーテルは最終目的地、惑星アンドロメダへと向かうのだったが…

(物語の重要な箇所と結末に触れています)

この物語の主要人物達は自らの抱える孤独にちゃんと向き合って生きていて、安易な馴れ合いを良しとせず、厳しさの中にある本物の優しさを持ち合わせている所にこの物語の凄さが要約されていると思いました

この物語のヒロイン、メーテルは前作より一層儚げになっており、この世のものとは思えない美しさです

そもそもこの物語は少年だった鉄郎が精神的に自立していく過程を描いていますが、全てにおいて鉄郎という少年(青年にほぼ成りかけていますが)の心象が色濃く反映された幻想的とも言える作品となっています
999という目的地のはっきりしない列車に乗り込み、あらゆる出会いと別れを繰り返す鉄郎の旅は人の人生そのものです

廃墟と化した駅に突如現れた銀河鉄道999、鉄郎とメーテルの危機に現れるキャプテンハーロックやクィーンエメラルダスも決してご都合主義展開などではなく、自身の人生を歩き出した鉄郎が過去と決別するように999は地球を離れ、鉄郎にとって大人の男性として理想像のようなハーロック、そして生きとし生けるものの番人のような役割をするエメラルダスが、大切な場面で現れてくるのも、まさにこの物語が鉄郎という少年のパーソナルな旅だという事を現しているのだと思います

そしてこの映画は呪縛からの解放、そして親を乗り越える事を最大のテーマとして扱っているのではないのでしょうか
プロメシュームは娘であるメーテルに、お前の為だ、お前の為に私は全てをした、と呪詛の言葉をかけながら、メーテルが自身の意に反した時は容赦なく殺そうとする メーテルが苦悩するのがプロメシュームの喜びであり、それを愛、と呪いをかけられたメーテルは本当に親から愛された事のない不幸な女性です

そして鉄郎は母から自立した後は、ついに父と対決する事になります 父である黒騎士は自身が鉄郎の父である事は名乗らず、赦しを乞えば助けてやる、と鉄郎に語ります
父である黒騎士と鉄郎の価値観は決して相容れないものであり、他に犠牲と沈黙を強いる事で成り立つ幸せを父と違い認める事の出来ない鉄郎は、まさにその鉄郎と志を同じくして亡くなったミャウダーの力により父である黒騎士を倒し、勝利する この場面の演出には圧倒される想いがしました

そして幻影としての最終的な役割を終えて再び去っていくメーテル 成長し青年になった鉄郎を今度はメーテルが見送る形になる
鉄郎の顔からは幼さは消え失せ精悍さを兼ね備えた大人としてメーテルに別れを告げ、再び人生に1人で立ち向かっていく

象徴的な映像や難解な表現も多く、万人受けしにくい作品だと思いますが(実際前作よりは評価は低い傾向にあるようです)、ある一定の人達にとっては前作を超えた銀河鉄道999の最後を締めくくるに相応しい名作になるのだと思います 僕もそのうちの1人です

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