見出し画像

#067 スカンノへの旅 (その12) 「生きている」を捉えた写真

 後ろから見られていたとは知らなかった。そして、写真を撮られていたことも知らなかった。
 無心で描いているアマチュアの絵描き。その後ろから、どのような絵を描いているのやらと、そっと覗き込んでいる婦人。その瞬間を捉えたカメラマンは、スケッチツアー同行者の岩間敏彦さんだ。
 彼は絵を描かない。スケッチツアーに参加して、現地の写真を撮って回る。日の出前から夜まで、光の方向と強さを計算しながら歩き回る。絵画は光の方向を自分で設定できるが、写真はそういう訳にはいかない。撮影したいものが一番映える光の方向と強さが重要となる。その瞬間のために歩く。そして、カメラをセットして、その瞬間を待つ。体力と忍耐が必要だ。当然、構図や撮影の知識・技術も。芸術というものは、一つ一つの地道な積み重ねで成立していくものだと知る。
 スケッチツアーでは絵を描かない人とも交流することができる。そのこともスケッチツアーの魅力の一つだ。同じものを見ても絵を描く者とカメラマンとでは見方が異なる。会話の中でそのことに気付くことがある。多くの発見がある。それが面白い。

 人間の思考や思いまでもが伝わってくるような写真。
 一瞬を捉えた写真。
 この一瞬を私たちは生きているのだということを改めて意識させてくれた一枚の写真だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?