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#012 『鞄談義2』 トラのある小林鞄

 この写真は『鞄談義2』のカラーページのもので、鞄は私所有の小林鞄。背景は松本市にある古い旅館「まるも」の入り口。小林さんの所に取材に行き、松本で一泊したときに撮影したものだ。

 この鞄のことは『鞄談義2』にも書いたが、かぶせと本体の前面にトラがふんだんに入っている。トラというのは、縞模様のことで、牛の首の後ろ辺りの革ではないかと思う。シワというかスジというかムラというか濃淡というか、とにかくイレギュラーな感じが嫌がられるので、鞄を作る際、普通は使われることのない部位だ。
 私はこの鞄を見て、「何、これ?!」と遠目に見ていた。しばらく眺めていたら、気になってきた。「何だか、面白いなあ」と。取材の際「小林さん、この鞄、トラが凄いですね」と言ったら、小林さんは「普通、鞄作りには使わないですよね。キズのない、きれいな革で作りますよね。でも、このトラ、とても美しくてね。これを前面に使ったショルダーバッグを作りたくなっちゃって」と悪戯っぽい笑顔。素敵な笑顔だった。

 オリジナリティ豊かな小林鞄のなかでも、群を抜いてユニークなバッグ。その後の私の人生において、主要なパートナーとなっている。

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