「出番」はまだまだ遠く

私にとって6月とは、めでたい月だ。
私と沢口靖子様の誕生日、SHE'Sのデビュー日、さらに今年は3年ぶりにliveにも行くことになった。

その「楽しみ」の1つが、とある映画の公開。
劇場版 「緊急取調室 THE FINAL」
「キントリ」の愛称で親しまれたテレビ朝日のドラマ「緊急取調室」の映画版。
公開が決まった時には、その日のうちに趣味が合う父親を誘って観に行くことを約束していた。

テレビ朝日のサスペンスドラマの看板作品である「科捜研の女」、「相棒」が映画化するなら(実際に映画化されたが)分かるが、「緊急取調室」が映画化するなんて未来を誰が想像しただろうか。
勿論、人気がない訳じゃない。
私もシーズン1が放送された2014年からずっと見続けてきた1人だから、本当に本当に嬉しい気持ちと感慨深さでいっぱいになった。

「FINAL」と冠されている通り、今作で「緊急取調室」は完結を迎える。
個性豊かなおじさま達と息を呑む緊迫感が人気の1つだったが、もう会えない・味わえないとなるとさみしく感じた。
それでも最後を見届けようと私は「出番」の日を待っていた。

ドラマ版のレギュラーに加えゲストキャストに歓喜したり、主題歌である緑黄色社会の「さもなくば誰がやる」を聴いたり、予告映像を見ているうちに期待が高まった。
5月17日には完成披露舞台挨拶も終え、いよいよ1ヶ月切ったか…とそわそわしはじめていた。

5月18日、正午。世間を揺るがすニュースがTwitterに流れてきた。
今回の映画で総理大臣役を務めた市川猿之助さんが緊急搬送。
ネットで検索すれば、詳細は出てくるので省略。
世間では「心中」という報道もあったが、真実は未だ闇の中。
怖いなぁ。当時の私としては、それくらいの感想だった。

6月1日、18時。いよいよ公開も目前に迫った、その時。
公開延期――。
晩飯のオムレツをひと切れ食べていた私の手が止まった。
さらに、映画公開に併せて制作された(と思われる)(情報解禁前だったらしく、ネットで検索してもあまり出てこなかった)SPドラマの放送も延期。
しかし、18日以降、延期を懸念する声も聞かれたからショックはない。
完全に、ではないが。
それでも時間が経つにつれ、悲しみ:8と怒り:2が心を占め、「キャスト・公開予定日含め、当初の予定通りに」公開出来ることの素晴らしさを身に染みて感じた。

その数日後には撮り直しの報道。
週刊誌が勝手に言っているだけだと思うが、侮るなかれと長年の経験が言っている。
良いか悪いかじゃなく、私としては正直、代役決まった時も撮り直したやつが公開されても納得出来る?本心で楽しめる?心から喜べる?て所。
「その人にしか出来ない演技、出せない雰囲気」があるから、スタッフ様はオファーしたのであって、他の俳優さんじゃ駄目なんだと思う。
いつか晴れて公開になったとしても、複雑な想いが残るだろう。

予告映像は削除、最寄りの映画館に行けばフライヤーは撤去され、その映画館のサイトを見れば公開予定作品リストから消されていた。
ますます現実を帯びていく。
順調に動いていたはずの歯車が、あの日を境に狂いはじめた。

さらに、公開当日だった今日、あるトップニュースが追い打ちを掛けた。
上記のSPドラマに出演予定だった永山絢斗さんが大麻取締法違反で逮捕。
名前しか知らなかったが、マジか…と衝撃的だった。

永山さんの件に関する意見は、言わずもがな故に書くことはない。
私は、(意図的な物か事故かが分からないのもあって)そんなのないと思うが、今後、猿之助さんを見た時に恨む人はいっぱいいるだろう。
前者(殺意があったとか)ならめちゃめちゃ怒るが(それならお縄か)、後者なら許すじゃないけどその余地はあるかと。
真相は不明だとしても、結果として公開まであと少しの所で延期になってしまったのだから。
明らかになったとして、その「真実」によって「公開中止・取り止め」という可能性も否めないから、封切り後も油断出来ないだろう。
それだけに悔しいし、「何万の熱烈なファンの方が公開を糧に世知辛い現実を生き抜いてきたと思ってるんだ」、「2人揃って何してくれてんだ、お前らのせいでめちゃくちゃだ」という怒りと恨みでいっぱいだ。
第2シーズンまでキントリメンバーとして出演していた故・大杉漣さんもそんな気持ちじゃないだろうか。

延期さえなければ、今頃、公式Twitterからは「公開まであと○日!!」的なカウントダウンとかもあって、グッズとかも発表されたり、宣伝のために出演者様が番組に出演したり、SPドラマも放送されたりで連日TLがそれなりのお祭り騒ぎで高揚感たっぷりだったんだろう。延期さえなければ

それでも、映画化が決まったというだけで嬉しかった。
「中止」ではなく「延期」を選択してくれたスタッフ様に感謝したくなった。
スタッフ様も出演者様もこの素敵な作品にピリオドを打とうと魂込めて作り上げてきたんだろうから、お蔵入りはないと信じている。

面白くなってきたじゃない?
本作の主人公・真壁有希子なら、越えてみろとばかりに立ちはだかる壁を前にそう言ってにやりと笑うだろう。
座長を務める天海祐希さんもキャスト、スタッフ、そして私達ファンに「下向いて立ち止まってる暇ないよ!!」なんて言って発破を掛けるのだろう。
私達はきっと試されているのだ。

ならば、私達も越えてみせようじゃないか、封切りまでの日々を。
その暁には、公開日には休みを取って、時間と金が許す限り、何度でも観に行こうじゃないか。
壁の先には、誰もが待ち望んだ晴れ舞台が待っている。
どんな形になろうと、今度こそ皆で「公開おめでとう!!」と笑えるように。
祈りを捧げて、最後の「出番」を待ち続ける。