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もっともっと、好きなことを

 春の暖かなそよ風や、花の色、甘い香り、芽吹く緑…。昔と比べたら私自身は、随分穏やかな性格になったような気がする。ゆっくりゆっくり、流れる時間の味わいのようなものを感じられるようになったし、物事に対しての見方や触れ方も、優しくなったような気がする。昔はこんなではなかった。いつも焦っていたし、イライラもしていた。誰かと楽しく笑っていても、心のなかは嵐だった。
 詩を書いてきて、今年で21年目。長い付き合いだと思う。「お前は飽きっぽい」とか、母親に言われたことがあるが、確かに、今まで習ってきた習い事や、パソコン教室やフィットネスクラブとかは、面倒くさくなって行かなくなってしまったこともあったけれど、詩や文芸はそうではない。今までの色々な先生方の講座や研究会、ワークショップは足繁く通ってきたし、今だって時間さえあれば書いていたいし、書いているし。昔から、書くことが好きで好きで、それしかやってこなかったんです、なんて、思ったり人に言ったりするけれど、本当にそうだし。
 趣味がないとか、とりわけ好きなことはありません、とか言う若者が多いとかたまに聞いたりするけれど、私は趣味や好きなことが無い人の気持ちはわからないし、そんな人は本当はいないんじゃないかって思う。好きなものや好きなことが、本当はどっかにあるから、仕事や勉強が頑張れるのだから。
 私はもうすぐ結婚するけれど、残念ながら子供は作らない。お互い歳だし、夫になる人には前妻との間に子供が一人いるけれど、子育てに時間を取られるより、二人で働きながら好きなことをしたり、美味しいものを食べたり、素敵な景色を見に行ったりしたいと彼も言っているから。でも、もしも私が子供を持つ立場になっていたら、私は子供にいつも、「なにか一つ、好きなことを持ちなさい」と育てるだろう。勉強やスポーツが飛び抜けて出来ることよりも、なにか一つ好きなことがあってそれに向かって真っ直ぐに進んでいく子。そんな子を育てたかった。
 好きなことがあるという喜び、好きなことに向かえる喜び、その喜びに感謝してこれからも生きていきたいし、そういう人が世の中にもっともっと増えていけるように、私は日々願っている。

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