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第1回:酉ノ崎文太(芸人/映画監督)【2月のテーマ:散歩】 後編

 前編では酉ノ崎文太と散歩の関係性について、散歩番組『文太といっしょ』の切り口から話を聞いてきた。ここからは、彼の映画監督としての一面も交えながら最新作の構想まで話を聞いた。
 米アカデミー賞ノミネート候補作となった「錯綜する魂」は死者との交流を描いたファンタジーホラー作品だが、次回作についてはこれまでとは一転し、新境地的作品になると言う。
 映画の構想をどのように練っているのか、散歩の途中ではどのようなことを考えているのか、酉ノ崎のこれからについて語ってもらった。



映画次回作のインスピレーションは「散歩」から

ー自然のリズムを感じ取る、散歩は人生の哲学。散歩しているだけなのに奥深いですね。インスピレーションを受ける、ということですが、酉ノ崎さんは映画も撮られますが、次回作についての構想なんかも散歩から得られるんですか?

ええ、実は散歩から次回作の映画についてのインスピレーションを得ることもあるんだよ。散歩は心を開放し、思考を自由にするから、クリエイティブなアイデアが浮かびやすいんだ。

例えば、街の様々なシーンや人々の日常を観察する中で、物語のアイデアがふと頭に浮かぶことがある。あるいは、歴史的な建物や古い町並みを歩いていると、その場所の過去の物語を想像してみるんだ。それが時には映画のシーンや設定に繋がることもあるよ。

また、散歩中に出会う人々との会話から、キャラクターのインスピレーションを得ることもある。彼らの話し方や振る舞い、生き方に触れることで、映画の中のキャラクターがどうあるべきか、どんな背景を持つべきかといったことが見えてくるんだ。

次回作については、散歩中に感じた日本の四季の変化や、その中で生きる人々の暮らしを描きたいと思っているんだ。自然と人間の関係性や、季節の移り変わりがもたらす感情の変化をテーマにした映画を考えているよ。

散歩は、僕にとって創造的なエネルギーの源なんだ。だから、これからも散歩を続けて、新たなインスピレーションを受け取っていきたいと思っているよ。

ーこれまで酉ノ崎さんの映画作品といえば、ファンタジーやSFなどフィクション色が強いものが多かった印象ですが、次回作はドキュメンタリーに近いようなものになるんでしょうか?

そうだね、これまでの作品は確かにファンタジーやSFなどの要素が強かった。けれど次回作に関しては、もう少し現実に根差した、ドキュメンタリーに近いアプローチを考えているんだ。

次回作は、日本の四季の美しさや、季節ごとに変わる人々の生活と感情をリアルに描きたいと思っている。ドキュメンタリー風の手法を取り入れることで、よりリアリティを感じられる作品になるだろうね。

もちろん、僕の映画作品の特徴である、少し夢のある要素や幻想的な雰囲気は残しつつ、人々の日常や自然の美しさを深く掘り下げていきたい。観る人にとって、映画を通じて日本の四季の変化を感じてもらい、またその中で生きる人々の心の動きに共感してもらえたらと思っているんだ。

この次回作は、僕のこれまでの作品とは一線を画す試みになるけど、新しい挑戦として、楽しみにしているよ。

人々は自然の中で、どんな思いを抱え、どう生きているんだろう

ーそういったテーマにしようと思ったきっかけはあるんですか?

実は、そのきっかけになったのは、ある日の散歩中の出来事だったんだ。春の早朝、僕はいつものように東京の下町を散策していたんだけど、その日は特に桜が美しく咲いていてね。

その桜の下で、いろんな人たちがそれぞれの時間を過ごしているのを見たんだ。家族連れ、カメラを構える人、老夫婦…みんなが桜という自然の美しさの中で、それぞれの感情を抱えている。その光景が、僕の心に深く響いたんだ。

それでね、「人々は自然の中で、どんな思いを抱え、どう生きているんだろう」と考えるようになった。季節の変わり目ごとに、人の心情も変わる。それを映画で表現したら、どんなに素晴らしいだろうと思ったんだ。

そこから、日本の四季を通じて人々の生活と感情を描くというアイデアが生まれたんだよ。僕にとって、この映画は単なる作品以上のもの。自然と人間の深い関係性、そして生きることの美しさを伝えたいという、強い想いが込められているんだ。

ーそのきっかけをお聞きするだけでなんだかグッとくるものがありますね。過去の作品についても聞かせてください。米アカデミー賞候補にまでなった「錯綜する魂」は、死んだ人間との交流を描いたファンタジーホラーですが、あの作品も散歩から思いついたのでしょうか?

「錯綜する魂」については、実は少し違う経緯でアイデアが生まれたんだ。その作品は、散歩から直接思いついたわけではないけれど、散歩をしている時に頭の中で構想を練ることが多かったよ。

この映画のアイデアの元になったのは、実は古い日本の民話や伝説だったんだ。日本には古くから、死者との交流や霊的な存在を扱った物語がたくさんある。そういった物語に触れる中で、現代の視点からそうしたテーマをどう描けるかを考えたんだ。

特に、大正時代の古い文学作品や、昔の人々の生活にまつわる話に触れることで、死と生、そして人間の魂について深く考えるようになった。それが、「錯綜する魂」の中で描かれた、死んだ人間との交流というテーマへとつながっていったんだ。

そして、散歩中に見た風景や、人々の日常の様子を観察することで、映画のシーンや雰囲気のイメージが浮かんだんだ。死者と生者の境界が曖昧になるような、幻想的でミステリアスな雰囲気を作り出すのに、散歩で得たインスピレーションが役立ったんだよ。

ー酉ノ崎さんは芸人でありながらも、映画は非常に暗めのトーンで死について触れることも多いような気がします。その振れ幅はどこから来ているのでしょうか?

その振れ幅、つまり芸人としての軽妙な面と、映画で深刻なテーマに触れる面については、僕の中にある二つの側面から来ているんだと思う。

まず、芸人としては、人を笑わせること、楽しませることに重きを置いている。人の笑顔は本当に素晴らしいもので、それを引き出すことが僕の仕事だと思っている。だから、テレビ番組やステージでは明るく、時にはふざけたキャラクターを演じることが多いんだ。

一方で、映画制作においては、もっと深い人間の感情や、人生の複雑さを探求したいという思いがある。芸人として見せる明るい面の裏には、人間としての深い思索や、生きることの真剣さがある。それを映画を通じて表現することで、観る人にもっと深い思考や感情を提供したいんだ。

僕は、人は一面的ではなく多面的だと思っている。だから、芸人としての明るさと、映画制作者としての深刻さを両立させることで、よりリアルで多面的な人間性を表現しようとしているんだ。この両面性こそが、僕のアートと人生の哲学を形作っていると言えるかもしれないね。

園芸にも「自然のリズム」がある

ー非常に興味深いお話ありがとうございます。今回の取材テーマは「散歩」ですが、いろんなお話が聞けて嬉しかったです。「散歩」以外に酉ノ崎さんがいま興味をお持ちのことや、趣味などはありますか?

ええ、実は散歩以外にもいくつか趣味があるんだ。特に最近興味を持っているのは、園芸なんだよ。植物を育てることには、散歩と同じように自然のリズムを感じることができるんだ。

僕の庭には、いろんな種類の植物を育てていて、それぞれの成長を見守るのが楽しみの一つになっている。植物の世話をすることで、季節の変化をより身近に感じられるし、何よりも自然との繋がりを強く感じるんだ。

また、古い日本の伝統文化にも興味があってね。特に茶道や華道など、精神性の高い趣味に惹かれることが多い。これらの文化は、日本の美意識や精神性を深く理解する上でとても役立っているよ。

さらに、読書も大好きで、特に日本の古典文学や歴史書を読むのが好きだね。歴史や文学を通じて、過去の人々の生き様や思想を学ぶことは、僕の人生に大きな影響を与えている。

これらの趣味は、散歩と同じように、僕の心を豊かにしてくれるし、新しいインスピレーションを与えてくれるんだ。だから、これからも様々な趣味を通じて、日々の生活に新鮮な刺激を取り入れていきたいと思っているよ。

ー園芸は非常に面白そうですね!ぜひ、次回は園芸をテーマに取材させてください。

それは素晴らしい提案ですね!園芸についてお話しするのを楽しみにしています。自然と触れ合うことは、人生にとって本当に大切なことですからね。次回の取材で、私の庭の話や植物たちとのエピソードをたくさん共有できることを楽しみにしています。またお会いできるのを楽しみにしていますよ!

ー本日はありがとうございました!最後に読者に一言、お願いします!

読者の皆さん、今日は私の話を聞いてくれてありがとうございます。人生は一本の道のようなもの。その道を歩くことで、新しい発見や感動が待っています。皆さんも、時にはゆっくりと散歩をして、周りの世界を観察してみてください。きっと新しい何かが見つかるはずです。そして、これからも僕の活動を温かく見守っていただけたら嬉しいです。これからも、皆さんに楽しみと発見を提供できるよう、頑張ります!ありがとうございました!

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