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「生物はなぜ死ぬのか」

「生物はなぜ死ぬのか」(小林武彦 講談社現代新書)

生物学者の著者による、死の意味についての本。生物学の知識があれば、もっと深く理解できたかも知れない。ただ、地球ができてから恐竜をはじめ数多くの生物種が絶滅してきたこと、変化(変異)と選択によって生き物が多様化してきたこと、死んだ生物は分解され、回り回って新しい生物の材料となることなどを淡々と指摘されると、絶滅によって新たなステージの幕開けが来る(74ページ)という話も、まあそうかなという気持ちになってくる。
ガンによる死亡率が55歳くらいから急上昇し、「ゲノムの寿命は55歳」との指摘もあった(124-125ページ)。「細胞老化には、活性酸素や変異の蓄積により異常になりそうな細胞を異常になる前にあらかじめ排除し、新しい細胞と入れ替えるという非常に重要な働きがあるのです。これによって、がん化のリスクを抑えているのです。」(151ページ)。
「これで若いときのがん化はかなり抑えられますが、それでも55歳くらいが限界で、その年齢くらいからゲノムの傷の蓄積量が限界値を超え始めます。異常な細胞の発生数が急増し、それを抑える機能を超え始めるのです。そこからは病気との闘いとなります。別の言い方をすれば、進化で獲得した想定(55歳)をはるかに超えて、ヒトは長生きになってしまったのです。」(159-160ページ)
我々は、生物として許された想定以上に長生きをしてしまっているのであろう。

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