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「世界基準の子どもの教養」

「世界基準の子どもの教養」(ボーク重子 ポプラ社)

ライフコーチ、アートコンサルタントの著者による、子どもが海外で人脈を作っていくための必要な知識とスキルの本。同じ著者の他の本は、娘さんの「全米最優秀女子高生」受賞のことばかりを書いている感じだったが、この本は素直にいい本だと思った。子ども向けというよりも、海外で働いていく大人も知っておくべきことがいろいろ載っている。例えば社交イベントでのMingle(いろいろな人と会い、話をすること)(228ページ)のコツや、Cause(社会との関わり方)(72ページ)についてなどは、大人がまず勉強すべき内容だと思った。

 私は生まれて初めて「知識を応用して、自分で考え自分の意見を構築する」ことを実感したのでした。そして自分の意見に自信を持つということも。
 この思考の方法が「リベラルアーツ」と言われるものです。
 自分の意見を持つことが必須のグローバル社会では、多くのリーダーを輩出する大学のほとんどがリベラルアーツ教育をしています。(32ページ)

 2018年の夏に東京で行った子育てに関する講演会で娘と対談したときのことです。集まってくださった観客の方から「日本とアメリカの教育の一番の違いはなんだと思いますか?」という質問が娘に向けられました。
 それに対し、娘は次のように答えたのです。
 「日本の大学は入学した学部で、専門的なことを系統立てて学ぶと思いますが、アメリカの大学では、自分を知り、広い世界をより深く知り、「自分はどう生きたいのか」を自由な心で考え、自分らしく行動することを学んでいきます。自分で考えるには知識という基礎が必要なので、その基礎を作るために、あらゆるサイエンスとアートの分野の知識を身につけいろんな考え方を学ぶのです。そうして自分らしい意見を構築する方法を学んでいきます。ですから授業は講義ではなく知識をもとにして自分の意見を出し合うディスカッションがベースです」
 娘の答をきいたとき、リベラルアーツの本質がはっきりと見えた気がしました。
 リベラルアーツは自分を知り、自分の意見を構築することを育む教育です。(33ページ)

 Association of American Colleges and Universities (全米ユニバーシティ・カレッジ協会)が、グローバル化が進むアメリカの企業を対象に「どのような人材が欲しいか」を聞いたところによると、99%の企業が「論理的思考ができ、議論力と問題解決能力に優れていることが、専門知識を身につけているよりもずっと重要である」と答えたとのことです。
 また大学には、「もっと論理的思考法、複雑な問題解決能力、文書でまた口頭でのコミュニケーション能力、持てる知識の実社会での応用に力を入れてほしい」としています。(36ページ)

 国際化・多様化が進む変化の激しい社会で生きていくためには、「自分はどう生きたいか」と自問し、「そのためにはどうすればいいか」を意識していることがとても重要です。
 子どもに「自分はどう生きたいのか」を意識させるには、まず育てる親が「自分の人生をどう生きるのか?」の質問に答えられるようにすることです。(45ページ)

 家族の会話の仕方を変える
・意見を言わせないような一方通行の会話をやめる
・会話のキャッチボールを心がける
・どんな意見でも言える安全な環境を作り出す
・議論を習慣づけるために、毎日議論の時間を作る
 食事の時間を最高に楽しい議論の時間にする
・新しいことに触れ議論する
・比較で議論する(54-56ページ)

 お子さんと一緒の本を読んだ後のディスカッションでは、学校で不足している部分を家庭で補うようにするといいでしょう。
 我が家で実践した質問は以下のようになります。
・この本を読んで気づいたことはどんなこと?
・印象に残った場面はどんなところ? それはどうして?
・自分にも似たような経験がある?
・主人公はこうしたけど、自分だったらどうした? (58-59ページ)

 我が家では、同じ記事を読んで夕食のときの議論のトピックにしていました。そのときに注意したのは以下の点です。
・「本当にそうだろうか?」「この情報はどこから出てきたのだろうか?」と自問し情報を鵜呑みにしない。
・コンサバとリベラル双方の観点から同じニュースを読む。伝統を重んじ守ろうとするコンサバと自由主義的なリベラルと立場が違えば、物事に対する受け止め方や視点が変わってきます。
・いろいろな国の新聞を読む。立場が違えば意見が異なるように、それぞれのお国事情によっても見解が異なってきます。(62-64ページ)

 新聞について、仮にグローバル化が進むアメリカの新聞を一紙取り入れるとしたら、どれが良いでしょうか。
 Worldatlasのデータによるとアメリカで読まれている新聞の順位は1位がUSA Today、2位がニューヨーク・タイムズ、3位がウォール・ストリート・ジャーナル、4位がLAタイムズ、5位がニューヨーク・ポスト、6位がシカゴトリビューン、7位がワシントン・ポストです。
 各種の調査によっては順位が入れ替わりますが、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポストはトップの常連です。発行部数で1位のUSA Today紙は知識レベルが高い層ではそれほど読まれていません。(64ページ)

 アメリカの人気YouTubeチャンネル
・Mothe Goose Club (幼稚園生向け)

・The Brain Scoop (小学校高学年向け)

・Amy Poehler's Smart Girls (小学校高学年~中学生向け)

・Simple Kids Crafts (小学生~中学生向け)

・minutephysics (小学校高学年向け)

・SoulPancake (小学校高学年から中学生向け)

・REACT (小学校高学年~中学生向け)

(69ページ)

 人は一人では生きていけません。家族、学校、職場、地域、国、世界といろんなところで繋がって生きています。
 自分の意見を持ち、「自分はこうしたい」「こんなふうにしたらどうだろうか」と、自分に対する気持ちをしっかりと持つことができる人が次にするべきことは、小さいうちから自分の人生を自分一人の満足やエゴで完結させないことです。自分を取り巻く大きな社会に目を向け、自分はどんなふうに社会と関わっていきたいか、社会の役に立っていきたいかを考え、行動することです。(72ページ)

 「Cause(コーズ)」は一般的に「原因」と訳されていますが、実は「人を動かす理念や信念、大義」といった深い意味を持つ言葉です。
 こんなふうに言うと「なんだか仰々しいなあ」と思われるかもしれませんが、「自分一人のためではない。もっと大きなビジョンを持つ」と言うと親近感がわくかもしれません。(74-75ページ)

 また、以下はアメリカ型大学受験がどのようなものかを書いた本で、私が読んだ本でも特に役立ったものです。
 大学の選び方においておススメの本
・「The Gate Keepers」(Jacques Steinberg)

・「Excellent Sheep」(William Deresiewicz)

・「Colleges That Change Lives」(Loren Pope)

(89ページ)

 私は子どもの頃「将来何になりたい?」という夢(いわゆる将来の夢)を持ちましたが、娘やその友人たちは、先生から「自分はみんなのために何をしたい? そのためにはどうすればいい?」と質問されます。自分というエゴを通り越した、コミュニティーという大きな枠の中で夢を見ることを教えられるのです。
 したがって、「ケーキが好きだからケーキ屋さんになりたい」ではなく、「小麦アレルギーのお友達もケーキが食べられるように小麦を使わないケーキ屋さんになりたい」という夢を見るのです。(90ページ)

 Causeは「こうしなさい」「この問題を解決しなさい」と誰かに言われて芽生えるものではありません。Causeの原動力となっているのは、パッション。世の中をもっと住みやすくしたい、世の中をもっと便利にしたい、世の中をもっと楽しく美しくしたい、自分だったらどうするか、そのために自分には何ができるかといった人それぞれの意見が根底にあり、それを実現するために活動することです。
 それはビジネスという形かもしれないし、仕事が終わった後のボランティアかもしれない。または寄付かもしれません。(95ページ)

 グローバル社会はインクルーシブ(排他的でない、包括的な)な社会。だからこそ違いにとても敏感です。
 このようなグローバル社会では「ポリティカルコレクト(Politically correct/政治的妥当性)」というメンタリティーが欠かせません。
 ポリティカリーコレクトとは、人や社会に対して公正・公平で、差別や偏見が含まれていないことです。それはなんでも同調したり、賛同したりすることではありません。自分がそれについて賛同するか反対するかは全くの別問題です。
 ポリティカリーコレクトとは相手の存在を認め立場を思いやる、そんな共感力のことで、これは多様化が進むグローバル社会で欠かせないものです。(104ページ)

 「ポリティカリーコレクト」はそのメンタリティーを理解しただけでは足りず、態度で示すことが大切です。そのためには人種、肉体、能力、性的な差別的用語は、決して使ってはいけません。
 ポリティカリーコレクトという教養を持たずにいると、とんでもない差別主義者や男尊女卑、そして基本的礼節に欠ける人と思われかねません。(110ページ)

 個人的な質問や答えたくない質問をされたときには「答えたくない」と言ってよい(122ページ)

 誰かがポリティカリーコレクトではない単語を使ったり、発言をしたりした場合
 相手を批判する必要はありませんが、はっきりと自分は同調しないということを伝えて大丈夫です。(124ページ)

 グローバル社会で活躍するグローバルリーダーたちが見につけている、一瞬にして安心感と堂々感を与える「見える教養」のキーワードは以下のようになります。
1 外から見た印象
2 食事の仕方
3 社交
(143ページ)

 自分らしい健康体を愛する自己肯定感は十分な睡眠から始まる(145ページ)

 社交行事の基本的な流れ
 どんな社交行事にも基本的な流れがあります。まずはここを押さえておくのが重要です。本章ではこの流れに沿ってご説明します。
1 (Greetings/挨拶)挨拶・紹介・握手
2 (Introduction/自己紹介)自己紹介
3 (Mingle/ネットワーキング)歓談して回る
(210ページ)

 自分を魅せる自己紹介のコツは次の3つです。
コツ1 長すぎず短すぎず
コツ2 謙遜しすぎず宣伝にならない程度に自分の業績をさらっと含む
コツ3 グローバル社会の自己紹介で最も大切なことはパッションとCause
(225-226ページ)

 人脈を作るというと頭に浮かぶのは、「この人は自分のために何をしてくれるか?」「この人はどう利用できるか?」というように、矢印の方向を「相手→自分」と相手の側から自分に向けることではないでしょうか?
 自分は受け手であり、自分のためにできることがより多い人と繋がりたい。そんな構図を思い描くことが多いかと思います。私もそうでした。
 ですが多くのイベントに参加し、アートの世界で15年以上ビジネスをしてきて思うのは、使える人脈を構築したかったら矢印の方向を変えなければいけない、ということです。
 ですからMingleの会話では相手を知るための質問に徹し、そこから自分はこの人のためにどんなことができるか、を考えるのです。そして相手に対して自分ができることを、エピソードを使ってやんわりと伝えます。
 自分に興味を持ってくれたあなたのことを、相手はきっと覚えていることでしょう。そして何か必要があったときに、きっとあなたに連絡してきます。そこから人脈が生まれるのです。
(229-230ページ)

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