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[後編]厳しい意見が相次いだ神宮外苑まちづくり「環境影響評価審議会第1回総会」レポ

4月27日(木)に開催された「神宮外苑まちづくり」に関する環境影響評価審議会第1回総会の模様をリアルタイムで視聴したレポートです。<前編>は、日本ICOMOS国内委員会が指摘した「環境影響評価書」の問題点を事業者が説明する部分について、レポートしました。

後編では、事業者(出席者:三井不動産、日建設計、コンサルタント)の説明のあと、質疑応答で、委員からどのような意見が出たのかをレポートしていきます。後編も長いです。

また、質疑応答のあと、次のような、まとめの発言がありました。

第2回の審議会は5月18日(木)を予定

しています。今のところ、第1回のように公開になるかは不明です。

  • 評価書について、誤解を生じさせる不十分な記述があったことは、事業者が自ら認めている。この点を事後調査等で補正する対策でよいかどうかは、次回の検討に持ち越し。

  • とくにイチョウ並木の保全に関連する議論は、次回の審議会で検討。

◆質疑応答の内容が絞り込まれている東京都の公表資料



東京都の審議会報告に、質疑応答をまとめた資料が公開されています。

https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/basic/conference/assessment/environment_council/minute_R5/index.files/23.4.27_s1_siryo2-2.pdf

公表資料では、約1時間の内容を、イコモスからの指摘に絞ってまとめてあります。樹木保全に関する専門的、具体的な質疑応答は、コンパクトにまとめてあるので、上記をご覧下さい。事業者側が「評価書に虚偽、誤りはない」「検討する」の繰り返しが目立つ資料ではありますが。

また、事業者側は、この審議会総会で指摘され、解決されていない問題に関しては、事後評価書で対処すると答えています。事後評価書とは、工事が始まり、完了した後も環境の状況を把握するために行う事後調査をまとめたものです。

環境省のホームページでは、「事後調査の必要性については、環境保全対策の実績が少ない場合や不確実性が大きい場合など、環境への影響の重大性に応じて検討します。事業者は、この検討結果を踏まえ、事後調査を行う必要性について判断し、評価書に記載」とあるので、工事が始まってしまった今、どれくらいの精度で行われるのかは不明です。

http://assess.env.go.jp/1_seido/1-1_guide/2-9.html

◆質疑応答では事業者が激怒られる場面も


質疑応答で、もっとも厳しい意見を述べたのは、池邊委員です。2度、発言し、三井不動産、日建設計の姿勢について厳しい意見を述べていました。計画に疑問を感じる都民の意見を反映していると感じたので、ほぼそのまま紹介します。

話し言葉を書き言葉にしているので、私の方で言葉を補ったりしていますが、発言の流れと委員が伝えたかった内容は変えていないつもりです。ただ、取材ではなく視聴から起こしていること、ご本人のチェックを受けていないので、もしかすると、一部、意味の取り違えはあるかもしれません。

*お名前が間違っていたら、すみません。下のお名前がわからないので、どのような専門の方なのか、確認しきれておりません。委員のなかにいるお一人の発言として読んでください。

●1回目の発言

「今までの一貫したご説明の仕方と、今日の皆さんの態度は、ほとんど変わらない。虚偽や誤りがなければいい、という点だけにこだわりがあると感じております。

しかし、このように何回も私たちが呼ばれ、多くの国民に誤解を与えたことは、皆様の評価書に虚偽や誤りがないとしても、日本語としての文章も含め、非常にレベルが低かったということは、認めていただきたいと思います。そういうことがなかったら、このような誤解は生じないはずです。

評価書については、イコモスの意見のほかに、委員の方々からもたくさんの意見をいただいてます。あらぬ誤解や間違いを生まないように、説明をお願いできないのか、ということや、植栽・植生樹が本当にこれでいいのかどうか、最終判断を審議会ですべきではないか、という意見まで出ています。

私は日頃、三井不動産さんと日建設計さんを信頼しておりましたが、今回のことについては、非常にがっかりしております。天下の三井不動産さんと日建設計さんが、しかも、文化的価値と国民的なアイデンティティ、愛着、そして生態的価値を持つ地域の開発について、将来をまったく無視した形で、街路樹のようにイチョウ並木が回復されればいい、と考えているように感じました。

本日の説明でも、150本の樹木のうち、50本が保存、50本が移植、50本が伐採とのことでした。50本の移植をしたものの、結局、ダメでした、となれば、150本のうち、50本しか残らなかったという結果が生じるわけです。そうした不確実性を抱えた場所の特異性をしっかりと認識しているのかどうか、また、場所への畏怖の気持ちはあるのでしょうか。

本日、出席された方たちの職位はお聞きしませんが、知事からの要請も生じる事態となった現状では、三井不動産としてどう答えるのか。本来であれば、記者会見、あるいは、なんらかの声明を出してもいい事態だと思います。

ところが、本日の皆さんの説明は、同じ言葉を何回も繰り返しているだけです。イコモスからの指摘に対し、どう対処する、このように善処する、という意見がまったくありませんでした。また、説明の態度にも積極性が見られませんでした。それは、本日、この審議会を視聴している多くの方々にも、三井不動産という大企業に対してのイメージを損なうものであり、信頼を損なうものだと考えております。

私は今回のことは、事後評価書でやればいいということではないと感じております。今日、伺っている限りは、事後評価書についても、日本語の文章も含め、きちんとした評価書が提出されるという感触は得られませんでした。

最後に、多くの方々が住民説明会を要望していらっしゃいますが、三井不動産さんが拒否されているのか、これからおやりになるのかはわかりませんが、子どもたちを含め、多くの住民の方が求めていることでございます。ぜひ、きちっとした形で対応し、誤解があれば、そこで誤解を解く、あるいは歩み寄りができるところをみつける、という努力をするべきであると考えます」

●2回目の発言

2回目の発言は、各委員から、事業者の説明でわからなかった点を確認する専門的な指摘が続くなかでありました。委員の質問に対する回答も、「検討いたします」「誤解を解くようにいたします」「事後評価書で記載していきます」に終始していたことから、2回目の発言になったという流れです。

「厳しいことを言うようで申し訳ないのですが、1月10日に柳委員(審議会の会長)から『このままではゴーサインは出せない』との発言があり、多くの都民は、その言葉に非常に期待というか、そこにすがっております。

私たちは今日と、もう1回の事業者説明を経て、このアセスの委員会として、柳委員がきちっとゴーサインを出せるのかどうか。正直に申しまして、この先の50年、100年に関わる審議において、このアセスに関わった委員がゴーサインを出したということは、この分野の専門家として、非常に大きな責任があり、重い判断を下すことになります。これは、出席されている他の委員の方々も同様の思いだと思います。

それに対し、今回の説明は、まるで国会答弁のように、「検討いたします」「善処いたします」を繰り返し、誤りと虚偽がないことを述べるのに終始しています。また、今、横田委員がたくさん質問したように、どれも非常に専門的に正確に行うべきことです。私は先ほどから申し上げていますが、三井不動産さんにしては、レベルの低い評価書ではないか、と感じています。

要するに、急いで開発をしようとした結果、日建設計さんも「急げ、急げ」と言われた結果、きちっと精査することができなかったのではないでしょうか。その結果、図面にしても、縦方向は見たけれど、横方向は断面図がない、といったことになり、多くの専門家、多くの都民から見れば、「ここが足りない」「ここはわからない」「まるであたかも虚偽のように見える」ということが生じたのだと思います。

次回の審議会では、本日あるいは過去も含めて委員から出た意見、イコモスからの意見を踏まえ、具体的にどういう対応をされるのか。イコモスからの指摘を元にするのではなく、三井不動産さんと日建設計さんが、ご自身の判断で具体的に説明されることが重要と考えます。

また、先ほど事後評価書ではなく、今後の変更届という話が出ていましたが、今回の評価書については、事後評価で対処するものではなく、変更届を出すべきものだと考えております。誤解を生じている部分があるからです。

イチョウ並木の保全についても、どういう景観で残るのか。小さいイチョウになって残るのでは、意味がありません。都民としては、移植をし、戻したとしても、あるいは移植がうまくいかず、新しい植栽を足したとしても、美しい、今と同じようなイチョウ並木の姿、そして、絵画館が見るような景観を残して欲しいと考えています。それができるのかどうか、が大事なのだと思います。

それから、横田委員がおっしゃったように、植生のあり方として、昔から想定された森のあり方がきちっと残ること(筆者補足:創建時の植林計画と思われます)、こういう調査をして、こういう対処をするので残ります、という事業者の説明を持って、初めて私たちは「審議会としてゴーサインを出してもいいんじゃないか」という審議ができるのです。

今のままでは、本日の説明でも、横田委員からあれだけの質問が出ていますし、他の委員からも、なかには「わかりました」と答えた方もいますが、専門的には足りないという意見が多く出されました。

イコモスは専門的に攻めてきているわけですから、事業者も専門的にきちっと返す必要があります。三井不動産さん自身がSDGsへの取り組みを社の方針に掲げている時代に、なぜ環境や文化、社会貢献に対して、そういう態度が取れないのか。これはちょっと言い過ぎかもしれませんが、でも、私はそこをよく考えていただきたいと思います。

明治神宮さんであるからこそ、そういう態度を取って欲しいと私は思うんです。三井不動産さんなら、本当は取れるはずだと思っておりますし、それが非常に些細なことで揚げ足を取られて、損なった案件になっているとも感じます。

その結果、みんなの信頼を得られない、これから50年、100年とずっと不信を持たれたままでいくのかと。50年経って、「やっぱりそうだったね、超高層ビルだけ建てて、商業施設をいっぱい建てただけの会社だったんだね」と言われないように、「文化に対して威厳を持って残してくれたんだね」と、きちんと言われるように、会社の名前が残るような形の仕事をしていただきたい。

日建設計さんも、新しい植栽の設定を行うと思いますが、それも含めて、新しい植栽は前よりよくなったね」「非常に美しい、新しい絵画館広場になったね」「これは50年、ちゃんと保全していける、これからも保全すべき空間だね」と言われるような空間を目指していただきたいと思います。

●三井不動産の返答

せっかくなので、三井不動産の返答も紹介しておきます。2回目の発言に対しての返答です。

「ありがとうございます。非常に厳しいご指摘と、激励というか、我々はしっかりやって欲しいと重く受け止めております。これから我々は、次回もありますが、一生懸命、いただいたものを検討して、きちっとお答えできるように準備していきたいと思っております」

また、1回目の発言に対して、「住民説明会については検討していく」と事業者側は答えています。

ちなみに、池邊委員のような指摘をした他の委員の方への返答でも、ほぼ同じ内容を話していました。



◆部会長のまとめ

質疑応答の最後に、部会長からのまとめ発言がありました。都民の声が届いていることをまじえての発言でしたので、各委員の質疑応答の前に、先に紹介します。

●齋藤第一部会長の発言

「評価書をとりまとめた部会長として、大変、責任を感じながら、ご意見を拝聴しておりました。今回、取り上げた指摘について、その対策を事後調査のなかで、と説明されていました。アセス制度としては間違いがないわけですが、アセスの背後には住民がいます。その代役的な存在として、専門家の立場から、私たちが出席している審議会がある。その立場からすれば、記述の誤り等があったのであれば、ホームページ上ででも、すみやかに公表してただきたいです。

イコモスさんからの指摘があり、今回、公開での審議会になったのは、よかったと思っています。そもそも、この場である必要はなく、ちゃんとしっかり事業者は対応してください、ということなんだと思います。それをまず初めにお願いしたい。

また今回は、調査の手法、評価の考え方、植生区分の考え方、均質性の判断といったところの恣意性を可能な限り、排除して欲しい、ということが中心だったと思います。できる限り、努力していただく必要があると思います。

とくに、横田委員からも指摘があった絵画館前広場の話です。アセス制度のなかでは、確かに事業区域として分かれてはいますが、最終的には一体化された風景となり、生物の生態系、ネットワークが構築されます。その意味からすると、当然ながら一体化したものとして考える必要があります。

アセス制度のなかでできること、企業の社会的責任としてやらなければならないことがありますので、事後調査のなかで結果を評価する際に、より大きな視点で見ていただくことをお願いしたい。

現段階であらためて調査、評価をしていただく必要性があるような状況にはないと思っております。ただ、今、指摘したようなことは、今後とも努力をしていただきたい。

また、視聴している住民の皆さんにお話ししたいことがあります。これまでも、つねに住民の意見を参考にしたいという思いを主体としておりました。審議会のなかで対応してきたつもりです。事業者も、それに応え、改善する努力をしてきたと思っています。

今回の結果から、再度、調査をする必要はないと判断していますが、そのことも含め、異論、意見がある場合は、どんどん、その情報を発信していただきたい。私たちは無視するつもりはありません。それを踏まえて、アセスの制度上、専門家として何ができるのか、といことを考えながら、対応していくつもりです」

●宮越第二部会長

「齋藤第一部長の話に、私もまったく賛同します。事業者におかれては、わかりやすい情報発信をお願いします。重要な情報があるのであれば、公開するだけでなく、周知浸透を図る取り組みが必要だと思います。

また、周辺にお住まいの方や都民の皆様、イコモスのような団体の皆様からのご意見にも丁寧で真摯にご対応いただくことをお願いいたします。これは審議会において、これまで何度も事業者にお願いしていることです」

このあと、事務局に対して、審議会は都民や外部団体からの指摘を直接、一つひとつ検討する場ではないこと、今回のような審議は適切ではない。外部からの指摘に対しては、事業者の段階で、対処することが本来のあり方である、という話がありました。

「外部からの指摘について、事業者が丁寧に説明するとともに、評価書の内容が大きく変更されるようであれば、すみやかに変更届の申請を行うこと、その変更届について、審議会で関与することが、本来の会の目的、主旨からも妥当と考えます」


◆他の委員からの指摘

今回の審議会で、環境保護の技術的な話以外で、委員が指摘した問題点は、池邊委員の発言に集約されると思います。

東京都の公表資料では、ポイントがかなり絞られています。そこで、その他の委員の方々から出た、評価書の全体評価に関する指摘もピックアップしてみます。全部となると、かなりのボリュームになるので、一部抜粋になります。

●横田委員

コメント1
「群落名が入った植生図の形について、今回、「現存植生図」として即していないとのこと。群落名の入った植生図が必要ないということであれば、必要がない理由もきちんと示す必要があると思います。「現存植生図」も「相関植生図」も、「緑地の分布状況」というもので代表している、という説明が、非常にわかりにくかった」

コメント2
「この図が何の図なのか、ということを調査の手法と合わせて定義していただきたい。それをビフォー、アフターで見る必要がある」

コメント3
「植物社会学によるデータが、どのような経緯を持って形成されたのか、それをきちんと踏まえたコンセプトとモニタリングをしていただくことが必要。仮移植先のためのモニタリングということ、事前調査であったことから、該当地を土壌環境を中心に調査されたということですが、仮移植先の環境を今後、どのようにモニタリングしていくのか。

事後調査計画書でもあまり具体的に示されていないように思います。ビフォーアフターを見るための蓄積をデータ化していくためには、体系的な調査で仮植栽を調査するべきではないかと思います。仮移植がうまくいっているという観点だけでなく、移植先の環境がきちんと保全されているのか、という観点でも調査をお願いしたい」

コメント4
客観的手法でご説明していただいたなかにも、まだ恣意性が残るという点は、ゼロにしていかなければならない部分だと思います。もともとが恣意的だったから、また恣意的なデータが積み上げられていくのではないか、という疑念をふくらませてしまう。今回、次回の審議会を併せてですが、恣意性をできるだけゼロにしていただくことは必須だと思います」

コメント5
「気になっているのは、やはり絵画館前広場のありようです。我々は、日本アセスの制度の仕組みのなかでやっているので、事業範囲があって、周辺影響をどこまで考えるか、という線引きをしながらアセスをしています。しかし、絵画館前については、事業範囲の外に対しても、地域の類似的影響をもたらすと思います。

事業範囲の外だからやらない、という考えを持つことは、非常に危険ではないか。地区計画のあり方についても、事業者が違うから、ここで線を引いています、というのは、生態系にとっても、歴史的にとっても、何ら意味のない線です。長期的な視点が大事だと思います」

●廣江委員

「私は植物の専門ではありませんが、イコモスの指摘に対する事業者の説明と評価書案を読むと、私がいくつか指摘してきたように、評価書案には、まったく説明がなく、図もありません。今回、委員からの指摘に対して説明したところにだけ載っているということが、かなり散見されました

(筆者補足:図や説明がないことを以前から指摘していたということかもしれません。過去の経緯がわからないので、そのまま起こしています)

「モニタリングにおいて、イチョウ並木の箇所数が少ないという指摘をさせていただきましたが、横田委員からの説明を聞いても、やはりそうだと感じました。今回の改編に伴う植物の今後の生育について、どのようにモニタリングしていくのか、どういう計画で、どう実行していくのか、ということを、いち早く示していただきたいと思います」

事業者からの説明

A氏:「イチョウ並木については、毎年、樹勢調査を継続してやっていきます」
B氏:「ご指摘の通り、具体的な計画と実施方法をお示しできていないというのは、事実かと思います。そういった部分も今後、こちらの場で報告させていただきたいと思います」

廣江委員
「私は専門外ですが、人の健康を考えても、その人がどういう病気になるのか、病気の診断、進行をどう捉えるかについては、さまざまな方法があります。植物もそうだと思います。今、おっしゃられた、モニタリングの箇所をどうするのか、何を調査するのか、どう実施するのか、という点は、皆さんが注目しているところです。具体的、かつ丁寧、慎重に報告していただければと思います」

●水本委員

コメント1
「この分野の専門家であるイコモスが見ても、評価書の内容が、よくわからなかったことが、今回の指摘につながっています。今日の説明で、『この資料に載っています』とか『明快に違います』という返答は得られましたが、一般の方々に、『これに書いてあります』というのでは厳しいのではないでしょうか。資料編のどこにあるか、といったことを明示していただいたほうがよかったかと思います」

「私も調査をしているのでわかりますが、調査結果がなかったのであれば、なかったと回答してもいいと思うんです。そう答えるほうが、真摯な態度かなと。調査ではありますので、もう少し風通しのよい議論を次回で見せていただくと、信頼につながると思います」

コメント2
イチョウ並木に皆さんの意見がすごい活発なのは、東京が同じ景色を見続けられる場所がなかなかないからだと思います。何世代にもわたって、同じ景色を見られる場所、ということ、これから作っていく場所である、ということを伝えるために、せっかくのサイトを生かしていただければと思います」

●森川委員

「個人的に心配しているのは、私が指摘した部分では、『8割くらいが破壊されてしまうのではないですか』という疑問に対し、『移植計画の説明とか、大丈夫ですよ』とお答えいただいています。ですが、樹木が新しいところで生きていける、という前提でお答えになっている。やはりダメになるところもあるかもしれない。情報はウェブで公開しているというお話がありましたし、そういった可能性も真摯に公開し、伝えていくといいのではないかと思います」

●保高委員

活性度調査の質問がけっこうありまして、これは、かなり前に行われています。今後も継続されるとのことですが、この情報は、極めて重要です。迅速にご報告いただくとともに、委員のなかで、専門的に詳しい方々が立ち合って、一緒に見ていく、ということが、お互いの信頼関係、事実の確認も含めて重要かと思っております。可能であれば、ご検討ください」

事業者の返答
「その通りだと思います。イチョウに限らず、調査していくわけですけれども、審議会の先生方にも事後、立ち合っていただくとうことも、ぜひにと考えております。時期は我々も計画していますので、事務局を通じて、ご相談させていただければと考えております」

●池本委員

まちづくりですから、作ったから、あとはなんとかなるでしょう、ということではない。やはり20年、30年かかります。都内の事業は、これまでは、『きらびやかな集客性のある施設を作り、事業性があるから成功だね』という価値観があったかもしれない。

神宮外苑は、創建からの考え方があり、50年、100年というロングスパンで考えなければならない場所です。その文化的背景、歴史的背景を大切にしていただきたい。こういう川の流れがあるから、街ができてきたんだ、とか、広い土地があるから、こういう使われ方をしてきたんだ、ということですね。

これまでの経緯や関係する方々が大切にしてきたものへの思いも含め、地域として展開していくことを期待したいです。

土地が持つ文化的背景、歴史的背景を再開発にどう盛り込んでいくか、という問題は、地方のほうがわかりやすく、死活問題になっています。都内の案件では、その点がぼやけてしまうのかなと感じているところです。

目先を考えるのではなく、50年、100年を考えた関係性、地域をよくしていく関係性のなかで、「いい事業だ」と言ってもらえるところに力を入れていただければと思います」

●……委員(名前が聞き取れず)

この委員は、防風林について質問されていました。防風対策として木を受けるところがあり、それが移植の樹木になるのか、新しく植える樹木になるのか、モニタリングはどう行われるのか、具体的に書かれていないことを質問していました。

事業者の回答
防風植栽は、基本的に新しく植えるとのこと。評価書の図が、その説明についてわかりにくいことを、自身で認めています。防風植栽が行われるのは、

・事務所棟の南東側の角
・事務所棟の西側

とのこと。また、ラグビー場と国立競技場の間にもいくつかあるようです。
新しく植える樹木については、必要な樹高を確保するとのこと。風洞実験により示した高さ、6mなり、8mの高さを植える計画とのこと。


質疑応答は、こんな感じで行われました。質疑応答を視聴して感じたのは、イコモスの指摘がある前から、評価書について問題は多々、あったのだなということでした。どれくらいの問題点があったかは、わかりませんが、いくつもの指摘があり、それが解決されないまま、公示されているように感じました。

また、審議会のあと、三井不動産は「神宮外苑まちづくり」のホームページで、審議会で使用した回答書とそれに対する見解を発表しています。

情報発信は評価できますが、「すみやかに公表」という審議会からの指摘だけに対応し、同時に要望されていた「住民に丁寧な説明を」という点はすっぽ抜けてるのでは?と感じます。審議会に提出した資料をそのまま公表されても、専門知識のない一般住民は、なんのことやら?ですよね。一方通行の説明。だから、対話する姿勢がない、と、不信感が増すことにつながっているわけです。

大量の宣伝は、あくまでもプロモーションであり、マンションのセールス広告のようなものです。疑問への回答には、ならないんですけどねぇ。

正直、審議会を視聴していて、事業者側の出席者は、プロジェクトのほんの一部分を担当している現場の人にしかすぎません。審議会であれこれ指摘されたことを、実際の工事担当の部署に伝え、住民・都民の意見を反映し、計画を動かすほどの力はないのだろうな、と感じました。だから、国会答弁のような、お決まりの言葉を繰り返すしかないのです。

審議会の場では、「検討します」と言っていても、社に持ち帰り、上司から「無理。ダメ」と言われたら、なかったことになり、放置するしかないのでしょう。「始まってしまえば、止まらない」と、私の友人の設計士もよく言っていました。コロナ禍でも、さまざまな建築計画はまったく止まらなかったそうです。

私も分野は違いますが、行政がからむようなプロジェクトの末端に関わったことは何度もあります。一般に向けてミスリードになったり、誤解を生むのでは?と思って、修正の必要を提案しても、却下されます。

たいていは、すでに計画が進んでいること、スケジュールや予算に支障が出ることは、受け入れられないからです。

直接の担当者は理解していても、修正を上まで通す権限がなく、結局、どこに権限と責任があるのか、よくわからないのが日本の会社組織です。三井不動産の一大プロジェクトともなれば、なおさらでしょう。

とはいえ、池邊委員や齋藤第一部会長の言葉もあります。諦めずに、コツコツと矛盾点を指摘し、意見を伝えていくしかないのだろうと思っています。

*今後の更新は、GWが終わるので、それほど早くできないと思います。なるはやでは、情報発信していきたいとは思っていますが……。気づいた問題は、Twitterでも発信します。(スワローズやスポーツの試合観戦しながらのTweetや、この問題以外の話も多いので、フォローはおすすめしませんが(笑))


仕事に関するもの、仕事に関係ないものあれこれ思いついたことを書いています。フリーランスとして働く厳しさが増すなかでの悩みも。毎日の積み重ねと言うけれど、積み重ねより継続することの大切さとすぐに忘れる自分のポンコツっぷりを痛感する日々です。