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パルプ小説:West Side Stream 6

「ガハハっ!」
焼き鳥屋に流れているテレビからの声が聞こえる。
「へい、お待ち!」
店主が焼き鳥をカウンターに置く。
「あっ、ありがとうございます。」
焼き鳥を頬張る。うまい。
ビールで流す。うまい。

店の外をみると、向かいがフィリピンパブになっている。
ビヤ樽体型のフィリピン人が、退店した日本人を見送っている。
まだ、夕方。
かれこれ、店の前で10分近く話している。
フィリピン人相手に粘りすぎ、と思う。
自分の近い未来を見ているようだ。

ピッ
店員がチャンネルを変える。
「本日未明、〇〇県▲▲市でクルド人数人が女性に乱暴を〜」
ニュースキャスターがニュースを読み上げている。
今日、クルド人とカラんだことを思い出した。
今日か?今日か。
いつが今日で昨日なのか、ときどきわからなくなる。
目を閉じれば、今日が昨日になり、明日が今日になる。

ブブッ!
携帯のバイブ音がする。
スマートフォンの横のボタンを押す。
通知センターを見る。
「今日もバクラ行くべ!」
バクラ?頭の中で反芻させる。
あー、キャバクラか。

「はい、ハツお待ち!」
店主が焼き鳥を再びカウンターに乗せる。
一味唐辛子をふりかける。
ハイボールを持ち上げると、氷とグラスが接触する音がする。
うまい。
この夕暮れの時間と、焼き鳥の煙。舌では焼き鳥。喉ではハイボール。
この時間が永遠に続けば良いのに、と考える。

ブブッ!
再び、スマートフォンの通知音がする。
スマートフォンの横のボタンを押す。
もも子「いま、何やってるのー?」
スマートフォンを持ち返信をする。

外では、ドンキの前でクルド人が酒を買って飲んでいる。
パートのクルド人は何をやっているのだろう?

ブブッ!
通知画面を見る。
もも子「じゃぁ、2次会はお店に来ればいいね!」

友人に返信をする。
ひとまず、ドンキで集合することにする。
ハツを歯で抜き、ハイボールと一緒に片付ける。

「お勘定で。」
「ありがとうございます!」
店を出る。
【続く】




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