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朝鮮学校を訪れた日〜在日徒然

「コマスムニダ」。中学時代、韓国歴史ドラマで頻繁に聞いていた朝鮮語のありがとう。実際に生で聞いてみるととても温かみがあった。

 11月19日に朝鮮初級学校に訪れた。寄贈された書籍が学校の本棚を埋め尽くし、チマチョゴリを着た先生が教壇に立っていた。

 日本語の教科書を読む元気な声が教室内をこだまする。韓国語で書かれた絵日記が飾られた教室の後ろに目をやると、グループディスカッションで使ったのであろう平壌市の市街地図が数枚置かれていた。

朝鮮学校の今

 紹介して下さった金さんと校長からの詳しい説明で今まで全く知らなかった朝鮮学校の現状を学んだ。限りある寄付支援や収益でどう学校を運営していくのか。文科省の無償化の対象外となったことも響き、朝鮮学校の財政状況は火の車だという。

「今年から保健室に常任の先生が来た」。

 校長先生の一言に驚いた。保健室なのに先生がいない状況というのは大抵の日本の小学校ではありえないだろう。だが、「各種学校扱い」となっている朝鮮学校ではそれが当たり前なのだという。

 政治的な動きも普段の学校生活に影響する。かつて朝鮮学校が在特会の街宣車による襲撃事件に遭った時、「拡声器から放たれた心ない差別的暴言に多くの子ども達が心の傷を負った」と校長は語る。
 
 今はミサイル発射で、周辺を警察が厳戒態勢で巡回するという。先鋭化した国民感情が子ども達の安全を脅かす可能性も考えられるからだ。

アイデンティティと矛盾

 政治状況に基づく短絡的なヘイト。自分達より弱い立場にいる人間や集団に対して、激しい憎悪と侮蔑を表すことが一体どれだけの人々に恐怖を与えるのか、加害側にその認識が全く無い状況に危機感を持った。
 
 一方で私は何故朝鮮学校を運営する朝鮮総連側が「ミサイルを撃つな」と本国に言わないのか疑問にも思った。

 案内をして下さった総連の金さんには申し訳なかったが、北朝鮮側にも子ども達が危険に晒される一因があると内心思ってしまったのだ。本当に子どもを守るなら、何故一番に声を挙げないのだろうか。

 朝鮮学校の排除を狙った構造的な制度差別や政治的理由から法的基準なく無償化の対象外にしてきた政府姿勢には疑問がある。
 
 しかし、現実に朝鮮総連と北朝鮮からの資金は朝鮮学校を運営する柱になっている。

 私達日本人の感情的な立場からすると、ミサイル実験を繰り返し拉致問題に関わっていた両者が運営に関わる学校を、自分達で支援する謂われはない。と思うのもまた理解できてしまうのだ。

多様性のある社会へ

 私は在日コリアンの子ども達が朝鮮学校で自分のアイデンティティを知ることはとても重要な意味を持つのだと今回の研修で学ぶことができた。

 どの様なアイデンティティを持っていても肯定して生きていける社会を作っていくために、朝鮮学校の存在は今後もキーとなるだろう。 

 校長は最後に「自分を大事にできるような教育をしていきたい」と語っていた。日本の中での他国の民族教育がどうあるべきなのか、考えていきたい。

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