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おやすみプンプン 感想

無料期間中に読み切れなかったおやすみプンプンを読んだ。読まなきゃいけなかった。
8巻目までは読んだ記憶があったので9巻目からごっそり借りて快活クラブの冷えた個室に座る。

この作品を「外野」から読める人間ではないことを自覚していたため、読むのに相当心を削るだろうと思っていた。しかし読み進めていくごとに表紙の色と同じく現実としての色を失っていったように感じる。

プンプンが愛子と再会してから、爽やか大学生の化けの皮を互いが取っ払うまでは順調に思えた。というかそのままで良かった。
それぞれ事情を抱えながらも働いていたし、わざわざ頭の狂った愛子の母親に挨拶しに行かなくとも蒸発してプンプンの元へ転がり込めば良かった。もちろんプンプンの倫理観がゴミカスであることに変わりは無いが、少なくとも互いの心が粉々になるような逃避行をする必要は無かったはずだと後半は胸糞悪さが酷かった。

しかしそれほど遠回りしなかった世界線のプンプンはおそらく藤川タツミとしての人生を淡々と終えるだけだっただろうし、南条という救いの手を自ら断ち切っていた可能性もあった。そう考えるとプンプンにはあの逃避行が必要だったのかもしれないと思う。にしても代償がデカすぎるが。

後半で一番心に来たコマは、グループホームに生活している老いたプン父の口癖だと言われた「今が一番幸せ」という言葉とともに、プン父が幼い子どもと眠る姿だった。
前半の巻でプンプンが最後に父と会った後別れ際に「プンプン!愛してるぞ!!」と手を振る姿ですでにプン父の父親としてのピークが終わってしまったと勝手に愚慮していたために、その後プン父が再び見つけた居場所で父親としての愛情を注ぐ子どもたちが居るのだと知って何故か嬉しくなった。プンプンが知ったらきっと苛立つだろうけど。
関と清水の関係性も色々と自分に還元してしまわずにはいられなかった。相手の未熟さを知っていながらも、それを庇護する自分で自我を保とうとしてしまうのは業が深いながらも分かってしまう自分が恐ろしくなった。

この作品を読んで、「結局はプンプンが過去を断ち切って前向きに生きようとしなかったのが悪い」と突き放すことは出来なかった。後半にいくにつれ物語に現実味が無くなるからという訳ではない。何故なら私も過去に生き、過去に振り回されて今まで生きてきたから。
それでも結局は、前を向くしかない。前を向いて下を向いてそれを繰り返すしかないのがきっと私の人生になるだろう。この文章のように支離滅裂な人生である。

最後のプンプンのように、どれだけささやかであろうと自分として生きられる人生を得られるようになりたい。

おやすみ、プンプン。

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