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キリエのうた 感想(ネタバレあり)

一人行動に慣れておこうと最近は色々と一人でやってみることを心がけていた。
その中で、映画は一人で観たほうが没頭できて良いなと気づいたのでちょくちょく観に行っていた。

数日前、また何か観に行こうかと上映スケジュールを漁っていた。

「キリエのうた」というタイトルが目に入ってきた。上映時間3時間。長い。それほどの時間を要するほど深いストーリーなのかとあらすじに目を通す。

「主人公は歌でしか声を出すことが出来ない路上ミュージシャン・キリエ」

歌でしか声を出すことが出来ない、というフレーズに惹かれた。

私が魅了されてきたヒロインたち。肉親との死別が原因で吃音となるが、歌を通じて新たな出会いと別れを経験し居場所を見つけていく少女。自分の言動が家族を引き裂いたことをきっかけに失声症となるが、ミュージカルを通じて自らがかけていた呪いを解いていく少女。

どうしても、その誰もを自分自身に重ね合わせずにはいられなかった。
そしてキリエも、その部類に入るだろうなと思った。
悪く言えばありがちな設定に過ぎない。それでも観に行かずにはいられなかった。



瑠花がキリエとして、姉としてアーティストになったのは、彼女自身がそうすることで姉を身近に感じ、精神を安定させるための意図があったのかもしれない。でもそれ以上に、いざという時に姉の側に居る度胸が無かった夏彦への当てつけの意味があったんじゃないか、などと捻くれた考えが浮かんでしょうがない。だって夏彦クズなんだもん。夏彦だけの問題ではなかったにしろ、瑠花のことは責任持って…っていうなら自分が里親になれば良かった話では??とイライラしてしまった。大学進学という目標を貫くなら瑠花とは児相で別れて干渉すべきじゃなかったし、それが彼の優しさではあるんだけどそれだと誰も幸せにはならないよね、と思った。

真緒里もなあ…別に大学行かんでも家を出ることは出来ただろうに…。
これは完全なる邪推なんだけど、夏彦を家に呼ぶようになってすぐの時に単語帳を買い取ってもらったシーンがその後の彼女の罪につながるというか、彼女の中の男に対する不信感と金銭感覚が悪いマッチをしてしまう演出なんじゃないかと思った。イッコとしてではなく、真緒里として愛してくれる人が瑠花しか居なかったのが本当にしんどくて、高校時代の二人が雪の上に寝そべって、再会してからも砂浜に寝そべってる二人の本質の変わらなさを自分自身の関わりと重ねてしまった。海辺でキリエが「ひとりが好き」を歌った時に真緒里が笑ってたのがもう…もし私が親友に隣でそれを歌われたら多分同じ反応をするだろうな、と思った。

全体の感想としては、かなり回想が断片的にいったりきたりして忙しいな、とは思った。でも実際人が過去を回顧する時ってかなり飛び回ってるからそんなものなのかな。濡れ場は余計な気もしたけど、キリエが寄りかかる先を求めて夏彦の優しさを得るために身体を差し出したと考えると生々しくも冷たさを伴った現実を表しているような気もした。
途中イッコに騙されて家を使われてたジョイマン(初見でそうにしか見えなかった)がヒステリー起こしてキリエを犯そうとするシーンは正直意味不明だった。初めてイッコが家に帰るシーンを観た感じ、「知り合いの涙目さん」って言うから恋人って感じでは無さそうだったけどそれすらイッコの嘘だったのかな。そこまでイッコに思い入れがあった感じは無かった分、急に怒り狂い出したのはむしろ滑稽だった。ただ無関係なキリエを怖がらせたのは普通に胸糞悪かった。

ラストシーンでキリエがネカフェで弾き語ってたのは、メジャーデビューをした後のことなのか、それともそれを断って放浪してるのかによって見方が変わるような気がする。大切な人が生きる過去に縋りつづけ、歌を通してそれを繋ぎ止めようとしているのだとしたら本当に終始報われないままだし…でも「DEBUT」というタイトルのCDが出てるわけだから多分メジャーデビューしたんだよね…??ね!??!

とにかく私は私情バフ激盛りのおかげでこの作品が刺さってしまう人間でした。観る人によっては顔をしかめたくなる作品だと思うけど(私の後ろの座席の人はそうだったらしい)、私としては一度は観てみてほしい作品です。サントラもそろそろ発売らしく、ちょっと購入しようか迷ってしまうほど名曲揃いです。私も歌ってみようかな。




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