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92歳 三石巌のどうぞお先に 17

三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)


活性酸素

体内にわく電子ドロボーの正体

 ドロボーにねらわれるってことはうす気味わるいことだろう。ボクにそんな経験はないがね。
 電子ドロボーはどうだ。こいつはミクロの世界だから当人にも見えない。医者にも見えない。気味がわるいはずなんだが何も感じない。がん細胞は当人の知らないうちにできる。そして、知らないうちに消えるものがいくらもあるってことだ。
 そろそろ電子ドロボーの正体をお目にかけなけりゃひっこみがつかなくなったようだ。
 電子ドロボーは、なんでもかんでも電子がほしい。よくばりはしない。たったの一個ふんだくれば、それで満足するドロボーなんだ。ミクロの世界の仁義ってとこだろう。
 電子ドロボーはどこにいるのか?どこからでてくるのか?これは大問題だ。
 電子ドロボーが外からはいってくるのは、酸素ボンベかたばこの煙ぐらいのもんだ。こいつらには気をつけるほうがいい。
 それじゃあからだのなかにかくれているのか?
 いや、かくれていることもないではないが、からだのなかにわくことがおおいんだな。
 手足をうごかすのにも、ものを考えるのにも、おしっこをつくるのにも、エネルギーがいる。ねむっているときだって心臓は動いている。われわれは死んでしまうまでエネルギーをつくって、それを消費しなけりゃならないさだめなんだ。
 そのエネルギーをつくる工場をミトコンドリアという。このくらいはおぼえておいてくれなきゃこまる。ミトコンドリアはソーセージのかたちの小さなもので、ひとつの細胞に平均一千個あるんだ。ボクがかぞえたわけじゃないがね。
 からだではサトウやアブラをもやしているような話をきいたことがあるんじゃないかな。あれはミトコンドリアでもやしているんだ。これもおぼえておいたほうがよさそうだ。
 ミトコンドリアには肺から酸素がおくられてくるが、これの二%が電子ドロボーになる。酸素がドロボーに変身するんだ。この電子ドロボーのなまえを活性酸素っていう。これは何かで見たか聞いたかしているんじゃないかな。現代のキーワードのひとつだよ。
 ここに書いたことを応用して、スポーツがからだにわるいっていわれるのがどういうわけか考えてみたらどうだろう。

三石理論研究所


三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。


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