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【旅行】壇ノ浦

博多旅行の中日に、下関まで足を伸ばした。

目的は壇ノ浦に行くこと、そしてふぐを食べること。

壇ノ浦は特別だ。

あらゆる情景がパセティックな印象をもって浮かんでくる。

義経の八艘跳びよりも、平家の人びとの悲しみの方が胸を打つ。

歴史の切ない瞬間や、悲劇的な展開が好きだ。

だから壇ノ浦には一度行っておきたかった。

下関の駅からバスに乗って行く。

バス停を降りると、道路を挟んだ向かいに銅像が立っているのが見えた。

「この人は碇を巻いているんだよ。」

彼女は面白そうに聞いてくれる。

俺はそんな反応が嬉しい。

平知盛は碇を担いで海に身を投げて死んだという。

「見るべきものはすべて見た。」

彼が投身の前に言ったというこの言葉が、俺は大好きだ。

「なに?」

こういう言葉を大将が残して死ぬ、という劇的な瞬間のためだけに、平家の繁栄や源平の戦いがあったんじゃないか、と思えるくらい、この言葉が好きだ。

「だからって死んじゃいや。」

「もちろん。」

海を眺める。

やはり義経よりも知盛のことを、源氏よりも平氏のことを考えてしまう。

海の上には戦いを終えた紅白の旗が無数に浮かんでいる。

海の下には本当に都があって、京都や鎌倉よりもずっと栄えている。

そんなことを想像していた。

(来てよかった。)

日が暮れて、お腹が空いた。

ふぐのお店を予約して、下関の駅に戻る。

おいしいふぐ料理を食べて、博多に戻った。


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