見出し画像

エッセイ:生まれてくることも、生きることも、「純粋に気持ちが悪い」という感覚。

ここ最近、知人達の離婚が続いていた。連続で10件以上続いていて、思わず「またか」とため息をついていた。

離婚するのには深い理由があるのだろうと思っていたのだが。意外にも「嫁が家事をやらなかった」という初歩的なことで驚いていた。
それも全員が同じことを口にしていたのだ。

家事に関しては、男性の僕でも働きながらやっているので、健常者の専業主婦がそれを出来ないことが不思議だった。

結婚した理由は「金」と「楽」だったのでしょう。このご時世、みんな年収の高い人達だった。

僕は昔から結婚願望が無く、嘘偽りなく小学生の頃から、結婚生活に一切の魅力を感じなかった。

強いて言えば「逆玉の輿」にだけは興味がある。
要するに「楽して贅沢な暮らしがしたい」というのが本音なので、前述した女性達と似たようなものでしょう。

僕には自閉症を抱えた親戚がいるし、祖母の姉は首吊り自殺をしている。兄弟も先天的に心臓が悪い。
僕自身も精神疾患なので「病気になりやすい遺伝子」を抱えているようだった。子供を作った場合、何らかの障害を持って生まれてくる可能性は非常に高い。

そのせいか、セックス……というよりも「子供を作る」という行為に激しい嫌悪感があった。


昔、映画の「セブン」を見た時に、モーガンフリーマンが似たようなことを話していてとても驚いたことがある。高校生の時に午後ローでやっていたのだが、自分以外にも同じ考え方をする人間がいたことがとても嬉しかったのだ。生むか産まないか不安なブラピの奥さんに「思いっきり甘やかしてあげて」と諭す場面が大好きだった。

「幸せな家庭」というのを深夜アニメでしか見たことが無かった。以前、友人からCLANNADのアニメ版を全部見せて貰ったことがあるのだが。生まれ付き身体の弱いヒロインの家庭環境を見て「凄く良い家族だな」と思ったことがある。障害を抱えた子供でも無条件の愛を注ぐ両親。

見せ物としてデフォルメされた記号としての家族像。でも、そんなものが現実の世界にあるとは思えなかった。

あんなにも笑顔に溢れた家庭というのを作ることは無理だと思う。あれくらい幸福を感じられるような空間じゃないと、生まれてきても可哀想だな……という思ってしまう。

家事をしない母親を罵倒する父親の姿、安月給でボロボロになる父親、両親が罵り合う場面、ヒステリックに叫ぶだけの教師、動物園のような学校、ブラック企業に就職するために寝るのも惜しんで勉強漬け……。

自分の子供なら、綺麗な物だけを見ていて欲しかったし、美味しい物も食べさせてあげたい、可愛い服だって着させてあげたい、親の変な価値観で縛り付けたくないし、笑顔で過ごしてて欲しい。

でも、現実的に不可能だから生んでも無駄だという極論に行き着いてしまう。

子供を育てる経験が無い人間の戯言かもしれない。「お前に何が分かるんだよ!」と言いたくなると思う。

ただ、上司が子供を招き寄せる時に、不機嫌そうに怒鳴り気味で急かしていたのだが。
その時の息子君の酷い怯えようを見ていたら、それで良かったと心の底から安堵していた。奥さんが面倒見なかったから仕方なく引き取ったらしい、家の中では折檻でもしてるのかもしれない。

僕は個人的に上司のことは大嫌いで、それこそハンマーで殴り殺してやりたいくらいなのだが。上司本人も息子との関係に葛藤を抱えているようなのだ。
上手くいかないから怒鳴り散らす、(もしかしたら殴る蹴るの暴行)をしているようだった。

息子君が生まれる前、上司本人がこんな未来を望んでいたとはとても思えなかった。子供から恨まれることになるのだろうし、将来的に殺されたり、通り魔にでもなるのかもしれない……。

僕は能力的にも人格的にも子供を作る権利は無いと思っている。子供(自分の分身)を傷付けたくない。だから生み出したくない。ベビーカーに乗った赤ちゃんを見てて不幸に感じる。幼稚園にいる子供達を見ていると黒い影が差し込んでいるように見える。親がパチンコをやってて車の中で熱中症で死んだ子供が幸福に見える。赤ん坊が死んだニュースに言いようの無い安堵を覚える。虐待から生き延びたけどトー横キッズとして蔑まされる人間に不幸を感じる。自閉症の子供よりも心臓病の子供の方が同情されるから幸せそうに見える。子供を育てる母親達が偽善的に見える。貧乏人が子供を作ることに吐き気がする。教育番組とか熱血教師の番組が気持ち悪い。吐き気がする。電車の中で騒いでる子供を見てて恐怖を感じる。上司の子供が怯えてる姿を見て頭痛がする。怯え切った表情で僕を見ている。僕は今児童相談所に電話しようか迷ったが本当にそれが幸福に繋がるのか分からない。気持ち悪い。生きていくことが気持ち悪い。ただただ純粋に気持ち悪い。

「セブン」最後のモーガンフリーマンのセリフを思い出す。
「ヘミングウェイがかつて書いた言葉がある。”この世は素晴らしく、戦う価値がある”と。後半には同意する」
僕はそんなものはまやかしでしか無いと思っていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?