紗倉芳乃

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「うつぬけ」?知らんがな

私がうつになったのは大学2年生の春。19歳になる前のことである。 急に朝起きられなくなった。 起きられなくなったとはどういうことかというと、スマホのアラームを止めてすぐ意識を失うのである。午前6時半に連続でかけたはずのアラームすべてを手で消すのにそこで記憶が途絶える。意識を保てるようになり時刻を見ると午後12時45分を過ぎている。そんな毎日が突然始まった。 加えて情緒の不安定さや過呼吸・過食に悩まされ、私は休学し、通学できなくなった私は実家に戻ることにした。というか実家に連行

    • おむつがとれる日

      「しめ!こっちこい!」 祖父が私を呼ぶ声をもう忘れてしまった。 母方の祖父が亡くなってから3年ほど。祖父は庭師として一生を終えた。 祖父は腕前の良い職人だったらしい。その証拠に、祖父母の家には祖父が受賞した賞状が幼い私を見上げるように壁に飾られていた。庭にはたくさんの木や岩、灯篭。よじ登って遊んでいたが、今思うと売り物だったのであろう。 祖父は外孫であった私や兄弟をたいそうかわいがってくれた。特に酒好きの祖父は、酒が入ると上機嫌に私たちからのお酌を要求してきたものである。祖父

      • 甘いスクランブルエッグ

        私が大学一年生のこと。 地元の田舎から東京の大学に通うために、併設された学生寮に入寮することになった。新鮮なことが好きな私は、学生寮の古さやうす暗さなど気にもせず入学からの一か月を楽しんだ。 私の家庭は貧乏でこそなかったが、3人兄弟に子供部屋が一部屋ずつ割り当てられない家に住んでいた。父が子供のころに建てた家だそうだ。当時軽く築年数40年余り。何度もリフォームの話が出ていたが決行されず、幼い私は何度も期待し何度落胆したか。私は父と母の部屋をカーテンで区切ったところに、間借りし

      「うつぬけ」?知らんがな