テラに祈りを込めて     短歌集    夏の間に短歌というものを始めて書いた。1日1作 ツィッターに書いた

#短歌 初めて作ってみる。難し!
寺山修司の10代初めごろからの習作のすばらしさを実感。
 
 たくさんの 茄子の青持て 汗ぬぐう 友なる風呼ぶ 白き手ぬぐい
 
 
#短歌 2作目
 友の声 こだまする峠 遠く見て 去り行くわれの 残る黒影
 
 彼にとって、私は本当に友だったのか? 遠い昔、お互いに同じ道を歩んでいるつもりだったのに。
 
 
#短歌 3作目
希望持ち 錆びたナイフを 砥ぐ我に 危ないから やめろという君
 
 何をしようとしたかは詳らかにできない。自分の力を試したかったのだ。そしてナイフをずっと懐にいれていた。
 
 
#短歌 4作目
太陽が 舌を引っ込め 知らん顔 革命なんて パリだけのこと
 
 1960年6月15日 樺美智子さんが安保闘争で警官隊と衝突し殺された。樺さんはデモはこれで終わりにすると言ってでかけた。高校生の僕はデモでも死ぬんだと思った。あの頃若者は正義感にあふれ純粋だった。
 
 
#短歌 5作目
どぶ川の 水面に浮かぶ われの顔 笑って言うぞ まだ生きてやる
 
100歳こえて生きてやる。とことん楽しむぞ。未練なんかあの世に持っていくものか。
 
 
#短歌 6作目 
37℃ 危険な暑さに 向日葵溶け 逃げる道なし 子らの明日
 
 夏休みとはいっても、子は学校の代わりに学童保育へ通う。37℃は外遊びを禁ずる。そこで科学工作の講師をする。子供たちの歓声が疲れを飛ばすが、この暑さに、子供たちの将来を憂う。
 
 
#短歌 本日できず  
書くべきに 言葉を探し 辞書弾くも 振り子が揺れて 柱時計消え 
 
読んだ本のメモは毎日しているが、日々感じたことや思ったことを文字にすることはしていない。長い文章は難しいので、短い短歌なら自分の想いなどを込めることはできるのではと思ったが間違いだった。
 
 
#短歌 寂しい
オコナー 君の立ち姿 君の声 消さぬために ダニーボーイを歌わん
 
シネイド・オコナーが亡くなった。一人寂しく海外にいた時に、娘がくれたカセットに彼女のダニーボーイとDon't Cry For Me Argentinaと斉藤由貴の いつか とLucky dragon が入っていた。Nothing Compares 2 Uを聴く
 
 
#短歌 9作目
地球(テラ)沸騰 夏空の青 更に映え 「あの色きらい」 汗拭う妻
 
 地球温暖化は終わって、地球沸騰となった。
 妻は夏が大好きだった。「ハマナスに囲まれた砂地で作った祖母のスイカがおししかった。」今は、負けずに夏野菜を庭で育てているが、野菜の暑さ対策で怒っている。
 
 
#短歌 10作目
ニジェール 友からの便り 3日なし 灼熱のサヘル 砲声のみ届く
 
 サヘルはサハラ砂漠南縁部で昔草原だったところで砂漠化が進んでいる。クーデターのあったニジェールでは貧困のため慢性的食料不足が続き、元宗主国だったフランスに対する反感が強い。
 
 
#短歌 11作目
母親を じっと見つめる 泥まみれ ぜったい負けない 六歳の覚悟
 
 海の向こうの娘が送ってきた、けんかを止めた母親を睨む孫娘の写真
 様々な言葉、様々な顔の中で、笑ったり泣いたりしている
 
 
#短歌 12作目
コロナかも 咳する我を 隔離する 妻が笑って 「本音は離婚よ」
 
微熱(37.2℃)だけど念のために1階と2階で別居。何か妻は楽しそうだった。コロナ最盛期ではそうはいかなかったろう。1時間後平熱に戻っていたが別居は妻の希望で続行。 そしてコロナ感染増加のニュースあり。
 
 
#短歌 13作目
下駄飛ばす 満月笑い われ占う 深夜に響く ゲタゲタゲタ
 
体調が戻り、深夜見通し良く月の照らす大通りを散歩する。 雲一つなく満月が空を独り占めしていた。沖縄に台風がもどりそうというので、下駄で天気予報してみる。2枚とも裏。裸足で帰る。
 
 
#短歌 14作目
八月の 拍子木の音 熱に沈み 用心するは 老人の汗
 
熱射病(heat stroke)を心配してか、防犯パトロールは後期高齢者二人。8時過ぎても、まだ拍子木を鳴らすのを憚られる暑さにペットボトルが空になる。
 
 
#短歌 15作目
「お母ちゃん 熱いよ!熱いよ!」 弟の声 中沢さんの 記憶を消さない
 
はだしのゲンを学習教材から広島市教育委が消したのは記憶に新しい。あの人たちは誰に忖度?原爆投下は残酷な大量虐殺であることをアメリカは理解しなければならない。
 
 
#短歌 16作目
 雲襲い 風吹き荒ぶ 思いあり 今戦うは 我のため
 
シネイド・オコナーは常に戦場にいた。虐げられ、差別されるものがいる限り戦っていた。
 ボブマーリーの「War」を歌う
ある人種が勝り ある人種が劣るという考え方が ついに そして永遠に葬りさられるまで 世界は戦場
 
 
#短歌 17作目
水鉄砲 けんかする夏 4年ぶり びしょ濡れの僕 君の笑顔抱く
 
久しぶりに心から笑った。公園で遊ぶ子供たちの瞳も輝いている。
   汗飛ばす 子らの瞳に 止まるヤンマ
 
 
#短歌 18作目
みどり弾く シャコンヌの響き 祈り呼ぶ 原爆で逝った 浦上の人々へ
 
10年以上前、サンノゼの友人が浦上を訪ねた後に「長崎に原爆を落とすべきでなかった」と発言。小倉なら良かったのかと、以来付き合いはやめた。 あの時、彼を丸木美術館に連れていくべきだった。
 
 
#短歌 19作目
セミ一声 宙を切り裂き 彼岸まで 七日の夢を 永遠に遊ぶ
 
短歌と思われるものを作り始め19日目。作ってみて、こんなに自由にしていいのだろうかと考える。ノートに書かずツィッターにしたのが良いことかはわからない。ノートならいつでもパラパラめくれる。ひと月は続けてみよう。
 
 
#短歌 20作目
インクつけ 一字に一字に 思いこめ 自分に宛てた 子供らの手紙
 
 ペン習字の教室を見学。子供たちはインクをつけたペンで手紙を丁寧に書いていた。WBCに出る。戦争をなくす。などの文があったと聞いた。子供は世の鏡。先生は書く時の姿勢だけを注意していた。
 
 
#短歌 21作目
コーラン写す アラビア文字列 ばらばらに 目に映れども 理解及ばず
 
アラビア文字は美しい
 楕円描く アラビア文字列 宙映す
しかし、イスラム原理主義は理解の外。ジハードと女性への差別は、宗教からの自由を許さない。キリスト教原理主義も同様。宗教からの自由は基本的人権
 
 
#短歌
   耐えられない暑さが続く。 これが毎年のことになっても逃げるところはない。
22作目 その1
あげは蝶 沸騰する地球(テラ)に 眩暈して いたずら雀と サルサ踊りす
 
22作目 その2
地上では 蒼き球体 赤と化す 野分に頼む 自然冷蔵庫
 
 
#短歌 23作目
独り占め 紅蓮のつぼみ 音を待つ 子規の歌える パクリパクリかな
 
子規の 朝風にぱくりぱくりと蓮開く をパクリました。蓮の開花の音については、牧野富太郎先生と大賀一郎先生が不忍池で昭和10年に実地検証を行っているそうです。結論は「音は出ない!」。でも私には聞こえます
 
 
#短歌 24作目
ガダルカナル 彷徨い続ける 叔父想い 敗戦の意味を 今日も問う
 
 叔父はバイオリン持つはずの手で銃を抱え、戦場へ向かっていまだ帰ってこない。8月15日は愚かな戦争した結果の敗戦の日。終戦記念日という言葉で、すべてを忘れて安堵してはいけない。敗戦後生まれの責任である。
 
 
#短歌 25と26作目
それから 階段坂を 昇り詰め いつもと同じ 静寂を聴く
 
犬が吠え 朝日を遠く 雲が見る 街は飢えた 狼の餌食
 
須賀敦子訳のサバ詩集を片手に坂の街をさまよい歩いた。 台風の去った早朝は心地よい風が吹き、静かだったが・・・
 
 
#短歌 27と28作目
盗まれた 星屑の森 夜覆い 飛び交う天使 静かに笑う
 
リンゴ畑 深夜の散歩 賑やかに 群れる小人は 闇に接吻  
 
夜の市民の森を散歩。 遠い昔、大人に内緒で深夜に子供たちだけで林檎林の中を歩き回った。男の子だけでなく女の子もいた。林檎の甘い香りの記憶が甦る。
 
 
#短歌 29作目
あなたから もらった花は 向日葵一つ 笑って言う 若かった君
 
 「結婚記念日にも誕生日にも花束一つもらったことがないけど、道で咲いている向日葵を見てあれは君だと言ったの覚えてる?」 数年に一度、妻が問う。 忘れたことはない。
 
 
#短歌 30作目
憎しみで 地球を分ける 平行線 万華鏡覗けば 交線だらけ
 
理科の実験教室。子供たちと合わせ鏡の実験と万華鏡作りを行う。平行においた2枚の鏡は無限に写る永遠を見せる。平行線を万華鏡で覗いたら交線だらけ。平行線では他を理解できない。地球を万華鏡で覗いたらどうだろう。
 
 
#短歌 31作目
福島の 事故の始末に 見えぬ終わり 政府の策と ヤスパースの誤り
 
ハイデガーは制御不可能性を指摘し原子力平和利用に警鐘を鳴らした。ヤスパースは制御不可能性の危険を認識した上で、原発事故は地域的破滅であり、地球文明の滅亡とはならないとして、平和利用を容認した。誤り!
 
 
#短歌 32作目
 盆が過ぎ 顔がない 伯父とかわした 言葉を集め 文にて燃やす
 
 亡き父がしていた、ガダルカナルで戦死したと言われている叔父との会話を、気が付いたら私もしていた。顔は知らないが私は叔父を知っている。
 
 
#短歌 33作目
 海にありて 
 虹のかかりし 
 空騒ぐ 
 雲の動きと
 心の彩り
 
 
#短歌 5行の戯言 34作目
 立ち止まり 
 また立ち止まり 
 目を凝らす 
 言葉の森の 
 深さを辿る
 
 林京子を読んでいる。なかなか先に進めない。ゆっくり読むことにした。知らない方の知らない本がたくさんある。
 
 
#短歌 5行の戯言 35作目
 積乱雲
 黒綿の列
 ぶら下がり
 駆ける背中に
 とおり雨通る
 
今年の夏空は容易ならざる空である。人が起こした気候変動が世界中に災いをもたらしている。この惑星には人以外の生命があふれているが、それも終わるのか?
 
 
#短歌 5行の戯言  27日は賢治127歳
 その山には
 リス 野ウサギが
 住んでいます
 僕は尋ねました
 「何をしているの?」
 
 その山で
 全体会議が
 開かれて 
「ヒトと話すなんて
 あり得ないことだ」
 
 その山から
 リス 野ウサギが
 去りました
 ドングリとムシが
 僕と残りました
 
 
#5行の戯言   ( 続き )
 その山で
 まん丸ひろば
 作ります
 カタツムリには
 葉っぱのブランコ作ります
 
 その山の
 ドングリ集め
 ドングリプール
 僕はカブトムシと
 一日泳ぎました
 
 その山に
 冷たい雪が
 降りはじめ
 僕は木の洞で
 お休みします
 
 
#5行の戯言   ( 続き )
 その山で
 冬の間に
 見た夢は
 リスや野ウサギと
 追っかけっこする僕
 
 その山を
 春夏秋が
 通り過ぎ
 待ちくたびれて
 僕は山を下りました
 
 その山は
 何度も何度も
 冬を迎えました
 僕は大人になって
 銃を構えます
 
#5行の戯言   ( 続くだろうか? )
 
 地星(地球)では
 直立歩行の
 昆虫と
 四つん這い
 ヒトが会議中
 
 問題は
 蝶の羽ばたき
 温暖化
 蝶を殺すか
 我慢をするか
 
 蝶は昆虫
 曖昧言葉で
 会議は続き
 ヒトの排除が
 密かな結論
 
太陽 水星 金星 地星 火星 木星 土星
 地球だけ球? 単なる惑星だろ! 特別ではない。 
人も特別ではない。
神に選ばれた生き物などいない。
 
 
#短歌 5行の戯言 36作目
 木霊する 賢治の詩の オノマトベ イーハトーブに 我も遊ばんとす
 
賢治は何度も何度も書き直して言葉を探した。賢治の残した豊かな言葉を読む。声に出して読む。 賢治は人が生き残る限りそこにいる。
 
 
#短歌 5行の戯言 37作目
旅をやめ 銀河の果てへ 車両捨て カンパネルラの 不条理を追う
 
銀河鉄道の旅は私の理解の範囲外にある。国柱会に傾注していた賢治が1940年代まで生きていたら、と時々思う。自然と共に生きる賢治が軍国主義を礼賛するとは思えないのだが。
 
 
#短歌 38作目
 下の畑で 賢治を継ぐ者 いるはずなく 言葉の束を 何度もめくる
 
ほらねごらん   
むかふに霧にぬれてゐる
蕈のかたちのちひさな林があるだらう
あすこのとこへ
わたしのかんがへが
ずゐぶんはやく流れて行つて
みんな 溶け込んでゐるのだよ
 (賢治の春と修羅より)
 
 
#短歌 最終歌
海うつす 青空と君と レモンの香と・・・ 肯定するもの あまりに少なくて
 
短歌が何かも理解せずに、短歌らしきものを作りながら、言葉を知らない、世の中を否定的に見る私に、嫌気がさしてきた。新学期に通う子供たちの元気な声を聞きながら気分一新。

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