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食生活を見直してみた 5

断食説明会で断食のやり方について説明を受けているうちに、重ね煮ができあがる。するとそれをみんなで試食することになる。できあがった重ね煮を茶碗のようなものに入れて、各自に振る舞われた。

食べてみたところ、野菜の味がしっかり出ていて、わりとおいしい、と感じた。しかし夫は、ちょっとこれでは物足りない、というのが感想だったようだ。普段の荒れた食生活がたたっているのだろう。
試食会が終わると、次は順番に面接だった。参加者1人ひとりがスタッフと面接し、断食の可否を決めるようだ。受付のときに配られた番号札はここで効力を発揮する。1人10分弱の面談で、夫は3番目だった。当然(太っているので)面談はパスし、この晩から減食に臨むことになる。

とはいえこの日、私は夜用事があったので、夫の食事を準備することができない。
私はこの日、たまたま弁当を持っていた。朝、ある会合に参加して、そこで弁当が配られたのだ。その弁当は、たまに我が家でも宅配を頼む弁当で、手作りで、量も適切でおいしく、野菜も多く、しかも高くはないという優れものだ。
夫にそれを、持って帰って食べるかどうか尋ねたら、この日夫は、どういうわけだかその弁当を食べたくないのだという。仕方ないので夫は外食するなり好きにしてもらうとことにして、私がそれを夕食に食べることにした。

断食説明会で、食事は最低30回から、できれば50回噛むようにと言っていたので、私は断食はしないものの、よく噛むことくらいはやってみようかな、と思った。
ところがよく噛んで食べると、いつまで経っても食事が終わらないのである。むろんいつまで経っても、というのはたとえだ。食べ続ければいつかは終わる。ただ、いつまで経ってもと表現したくなる程度には、時間がかかった。それで普段、いかによく噛まずに食事をしているのかを知る。さっそく洗礼を受けた。

翌日(日曜日)は、夫は用事で朝から出かけて、夕食までに帰宅する予定となっていた。この日の夫の食事は、野菜を多めに取るようにさえすれば、あとは普段の食事を減らせばいいだけだ。話は簡単だった。
問題は私だ。夫の断食期間中、私も夫に準じた食生活をするのか、はたまた逆に酒池肉林なのか、迷いどころだった。
例えば平日夜は、断食を予定している夫は、ひもじい食事を取ることが決定している。しかし私は断食しない。ならば普段行けない店に毎日1人で出かけていって、酒池肉林を繰り広げるもありではないか。
同様にこの日のお昼も、せっかくなので食べに出る。前から狙っていたビストロがあるのだ。この日はそこに行ってみようと思った。仮にそこがいっぱいだったとしても、そのすぐ側に、別のフレンチレストランがあり、そっちなら入れるだろう。フレンチに、ワインなしはあり得ないから、酒池肉林コースで決まりかな?

ところが行きたかった店は満席で、もう一つの候補だった店は、そもそも日曜日が定休日だった。さて困った。仕方ないので、前から気にはなっていたが、まだ行ったことのない和食店にしてみようと思った。
和食店に行ってみると、かなり賑わっていて、実はそこは人気店だったのだとわかる。一番人気はどうやらカキフライで、二番人気がうな丼のようだ。
私はカキフライが大好きで、しかもその店のカキフライはおいしそうだった。しかし残念ながら、私は前々日の昼が、カキフライだったのだ。ここは天ぷら定食を選択する。天ぷらは油が面倒なため、自分では作らないし、人気の和食店の天ぷらはおいしいに違いないからだ。
出てきた天ぷら定食は、ボリュームたっぷりで、ここが人気店である理由がうかがえようものだった。
しかし腹八分目は無理な相談だ。よく噛んでは食べたものの、お腹いっぱい、おいしくいただいた。まあアルコールを飲まなかっただけよしとしよう。お酒を飲まなかったから、まだ引き返せる。
〈6に続く〉

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