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「ライジング・サン」企画書

キャッチコピー:
1,400年の時を超え、解き明かされる謎の国書「日出処……」。激動の時代を駆けた女帝、皇極・斉明天皇の若き日の物語!

あらすじ:
 七世紀初頭、東アジアの諸国は存亡の危機に追い込まれていた。
 およそ三百年ぶりに中華を統一した隋が、野心を隠そうともせず、今度は周辺諸国に獰猛な牙を研ぐ。
 これを阻止すべく、ヤマトの天才政治家、聖徳太子こと厩戸皇子が計略を巡らせる。
 厩戸は、古きを推しはかり、新しきに改める、いわゆる推古改新を断行し、国を統べる、「皇(すめらぎ)」を求めていた。
 すべては隋と並び立つため、所謂、「東西天朝並立の計」を成すためであった。
 そこで白羽の矢が立ったのが、タカラ(後の皇極・斉明帝)であった。
 タカラは、流鬼の姫や流求の商人などと「皇」を求め、大陸へ旅立つのであった。

第一話ストーリー:
 推古二十一年(西暦六一二年)初春、遼河を臨む、遼東。
 東のはるか地平から、太陽が昇る。
 肌を刺す冷気が、大地を伝って足元から這い上がってくる。
 陽光が眼下の隋軍を照らす。その大軍は、喊声、怒号、ドラを打ち鳴らし、一種、異様な熱気であたりを圧していた。
「じゃ、じゃ、じゃ」
 タカラは小高い丘からその大軍を見つめながら、嬉しそうにカラカラと喉を鳴らす。
「姫さま、こ、これは……」
 側近の常安はあまりの迫力に息を呑んだ。
「なに、寒いから叫んどるだけじゃ。大したことありゃあせん」
「ただ……」
「なんじゃ、まだ軍議の決に不満か?」
 相手は三倍をゆうに超える大軍である。平場での力勝負は不利。当然、定石では……。常安は唇を噛んだ。
「これで良いのじゃ。わらの勘じゃがな。ほれほれ、とっとと旗を上げんかい」
 頷いた常安は声を張り上げた。
「旗を掲げよ!」
 次々と旗が上がる。
 まず、三本の「錦の幡旗」である。錦地にそれぞれ梅、竹、蘭が金糸で刺繍され輝いている。
 続いて、「征隋大将軍(ずいをうついくさのきみ)」、最後はひときわ大きな「東天皇旗」である。
「皇」の文字に隋軍の怒声は一段と地をのたうち回り、天に向かってけたたましく爆ぜた。
 数年前、厩戸皇子は、敏達帝の唱えた「初瀬の盟約」を形にするべく奔走し、ついには周辺諸国と共に対隋包囲網を完成させた。
 そして、満を持して、あの国書を叩きつけたのである。名高い「日出処天子」の国書、事実上の宣戦布告であった。
 怒り心頭の煬帝は、元日朝見の儀にて、海東の政、すなわち東夷の討伐を命じた。
 兵力は、号して二〇〇万、さらに同じ数の輜重兵も動員する空前の大軍であった。
 隋、挙兵……。
 諸国は、初瀬の盟約にしたがい、遼東と高句麗の王都平壌周辺に集結した。
 タカラは腹に手を当てると瞳を閉じ、祈りを捧げた。
 初瀬盟約軍の総大将は、高齢の推古女帝の名代として、若干、十七歳のタカラが抜擢された。
 侵攻する大隋帝国軍二百万、迎え撃つは初瀬盟約軍三十八万。
 帝国か、盟約か。
 東の天子か、西の天子か。
 勝利か、隷属か。
「全軍! 突撃じゃあ!」
「者ども! 姫さまに続け!」
 盟約軍の人馬が喚声とともに一斉に丘を駆け降りる……。
 世にいう隋の第二回高句麗遠征、古代最大の世界大戦の幕が切って落とされた。
 これは、日本書紀によって隠された歴史……、タカラこと宝皇女、皇極・斉明女帝の若き日の物語である。

第二話以降のストーリー:
 立志編
 推古三年、皇極星(北極星)と斉明星(北斗七星)が輝きを増した深夜、運命の皇女がヤマトに生まれ落ちた。名をタカラ、直ぐに両親から引き離され、推古帝自ら育てることに。
 タカラ五歳、大和国に大地震が襲いかかる。大勢の民が被災し、タカラたちは孤児たちの世話を始める。この時、自分の親が推古帝ではないことを知る。
 飛鳥寺の敬田院で、どうやらタカラの父は、大罪を犯したらしいことを知る。推古帝を問い詰めるタカラ。
 孤独の中で抜け殻のようになったタカラに、大陸から厩戸の兄、豊浦が帰国してきた。豊浦の子、高向も一緒であった。タカラは運命的な出会いをする。
 タカラは、高句麗の乙支英徳、流鬼の姫ヨシア、流求の漁師カンシ、耽羅の海女ミア、百済の鬼室福信などから、世界の広さを知る。
 タカラ十二歳、唐土から客人がやって来る。皇帝の重臣の次男坊という。生まれつき体が弱く、妙薬を求めて蓬莱の地、ここヤマトに来たというわけだ。タカラは弟のようにその少年を可愛がる。交錯する運命。
 東突厥の王族イシュバルに出会う。隋に隷属してしまった国を嘆き、初瀬の盟約のため人質としてやってきたという。タカラは国を失う惨めさを知る。
 ある日、タカラ十四歳、西域の吐谷渾から使者がやってくる。初瀬の盟約に加わりたい。隋の侵略によって奪われた土地を取り戻したいという。厩戸は決断する。
 大陸編
 タカラは身をやつし、妹子に付き従って帝都大興城にやって来ていた。巨大な城壁、賑わう人人人。嬉しすぎて大はしゃぎするタカラ。初瀬の盟約の諸部族と合流する。
 いよいよ、皇帝謁見。国書を奉呈する妹子。その後ろで顔を伏せ、息を潜めるタカラ。国書に眼を走らせる皇帝……。
 皇帝謁見後、吐谷渾へは、隋の支配下にある河西通廊は通らず、一旦、北の東突厥に抜けて、テンシャン北路から向かうことになった。タカラ一行は、突厥族の聖地ウトケン山の麓、東突厥の大可汗の行在所、可汗庭を目指して大興城を後にした。
 隋の朝廷は、戸惑っていた。倭国からの国書の意味を図りかねていたのだ。確かに無礼ではある。だがしかし……。鴻臚卿の長孫晟は具申する。皇帝はある場所への行幸を決断した。
 皇帝はすっかり機嫌を良くしていた。ヤマトの「国書事件」から一ヶ月。激怒したことなどすっかり忘れ、モンゴル高原の可汗庭を見下ろす小高い丘の牙帳でくつろいでいた。まもなく、東突厥の使いの者がやってきて、皇帝の御列を先導する。この後、大可汗の牙帳で驚愕の事実に接することを知る由もない……。
 タカラたち一行は、モンゴル高原に辿り着いた。遠くにおびただしい牙帳が整然と並び、大興城とは異なる威容を誇っていた。大可汗の行在所、可汗庭にたどり着いたのだ。
 皇帝は大可汗の牙帳に入った。大可汗をはじめその家臣たちも皆、平伏している。突厥は隋の朝貢国、すなわち隷属しているのである。皇帝の龍顔を拝することなどもってのほかであった。だから皆、深くこうべを垂れ押し黙っている。皇帝は、やはり機嫌が良かった。あの出来事が起こるまでは……。
 皇帝は、突厥の牙帳からの帰り、御召し馬車で物思いに耽っていた。なにが起こっている? 不可解であった。側近の長孫晟を呼ぶ。耳打ちをすると同じ意見であった。皇帝は、この長年の忠臣にあることを命じた。
 タカラは、可汗庭からテンシャン山脈の北側を通り、吐谷渾に到着した。そこには、光化公主(皇后に相当)と呼ばれる、ヤマトに使者を寄越した事実上の国王がいた。吐谷渾は、遊牧と産馬、葡萄酒を産し、東ローマ帝国などとの中継貿易で財を成していた。ところが、隋が国土の半分を侵してしまった。民は一縷の望みを公主に託し、敦煌のさらなる西に逃れていた。
 概ね、初瀬の盟約に吐谷渾が加入することは合意をした。だが、これに不満を抱く者がいた。本来の国王である。光化公主の宮殿に乱入するとタカラを脅迫する。夷狄は、国に帰れ!
 吐谷渾の説得は、難しい。そんな雰囲気が漂う中、大興城にとどまっている常安から連絡が入った。姫さま、至急、帰国のこと。時代は風雲急を告げていた……。

 戦乱編(完結)
 第三回高句麗遠征、雁門の戦いが中心の舞台。
 ヤマト、隋、高句麗、突厥、百済、各陣営の交錯する思惑、人間関係。
 果たして、タカラは、ヤマトを救うことができるのか?
 
 
 
 


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