異国のおチビちゃん
乾季の訪れてから数ヶ月。
8月はマリアママの誕生日があることをホルヘから聞いた。
そのためか、7月下旬になるとマリアママの娘さん家族が三組、、いや四組か。
ともかくファミリーが数組、ボリビア国内だけでなくオランダからもやってきていた。
それぞれの家族に子供(マリアの孫)が3人ほどいるため、みんなと挨拶を交わしたが人数が多すぎて正直把握しきれない。
上は高校生くらいで下は4歳くらいだろうか。
中でも同じマリアママのホテルに泊まっていた、娘さん家族の一番下の娘は、気付けばよく遊び相手になっていた。
やることと言えば、ホテルの共有スペースで、数字の入った大きめのブロックをぶちまけてはまた組み立てたり、家具の隙間を使って小さな動物のフィギュアをかくれんぼさせたりといった遊びだ。
その子は名をグレタと言った。
まだ言葉もあまり話せないくらい小さな女の子である。
ほんのりベージュがかった癖のある髪にまんまるい瞳で、いかにも欧米の女の子らしいベビーフェイスだ。
よく人差し指を突き出して「アジャジャジャ、ジャジャジャー」と言いながら、かまって欲しそうな顔をしている。
子供を持ったことはないが、友人や後輩たちの親バカっぷりはSNSで拝見しているので、どんな感じかイメージすることは出来る。
グレタもママの言うことをすんなり聞かない姿をよく見せた。
例えば、二週間ほど一緒にいたのだが、まともに食事をしている姿を一度も見なかった。
大体の場合、一口ママに食べさせて貰ったと思ったら席を立ち、こちらに来ては人差し指を掴み“遊ぼう”アピールをする。
その姿は可愛いが自分が親だったら堪ったもんじゃないだろう。
素直に言うことを聞いてくれることの方が少ないのだから、毎日ともなれば世の中のママたちのため息もうなづける。
そんなことを思いつつ、グレタと遊んでいたが、半分以上は人間観察として面白かった。
ブロックを床にばら撒くのだが、ひとつふたつ拾って渡してあげると、グレタも真似してブロックを拾い集める。そして一緒に組み立て直すのだ。
そうかと思えば突然突進してきて、こちらのしゃがんでいる頭にグレタのお腹が当たり、すごい勢いで笑っていたりする。
もちろん意味などないだろうが、こうした行動ひとつひとつが将来人格形成に影響があるかも知れないと思うと、とにかく興味深かった。
マリアやママのアンドレアが何度か僕の名前を教えると、グレタは覚えてくれたようだった。
ある時『おチビちゃんが呼んでるから行ってあげて』とマリアに言われた時は、人の子だがとても愛らしく思えた。
そうしてアンドレアたちが帰国して数日後、エルマンがいつものように子供たちと電話で話している。
すると例の“おチビちゃん”も顔を見せてくれた。
「オシャキー、オシャキー(オサキ→尾崎)」と言っているらしい。
大きくなっても覚えてくれているといいな。
辺鄙な土地で出会った小さな友達に未来を感じていた。
#一歩踏みだした先に
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