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運命の糸1


海沿いのバイパス
雲の覆う暗い夜空
バックミラーには猛スピードで
接近してくる乗用車が映った
追い越していくのだろう
そんな日ごろの予測が裏切られた

雑多な金属音が飛び散ると同時に
背後からの衝撃に羽交い締めにされた
助手席の妻がおののき叫ぶ
瞬間
宙に浮かんだように感じた
照らすライトの前方に
暗い海
斜面にはびこる一面の雑草
このまま車もろとも
海へ転がり込んでいくのだろうか
刹那
妙に安らかな気持ちにつつまれた
妻と一緒ならば
どうなろうと
まあいいか
私たちはまるごと
なるがままにゆだねるほかなかった

走行車線脇のガードレールに衝突
鋭く鳴り響く金属音
跳ね返されて
ゆっくりと右に転回しつつ
追い越し車線を超えて
中央のガードレールに
運転席の前部がくい込んだ
鈍くこもった金属音
停止

12年あまりつきあった愛車
前も後ろも
ぼこぼこにへこみ
ぼろぼろに砕かれた
頼りなげないのち2つの
身代わりとなって
明日へと繋げてくれたらしい




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