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新しい詩「100歳近いおばあさんが、いなくなった⁈」



『100歳近いおばあさんが、いなくなった⁈』



最近、近所のスーパーの前に
大きな衣料品店ができた
靴下や下着や布団を売っている

今日、お義姉さんが
96歳のお義母さんを連れに
私の家に来た
2ヶ月に一回の年金の日だからだ
いつもは 主人が
お義母さんを眼科に連れていったり
パーマ屋に連れていったりしているが
2ヶ月に一回の年金支給日だけは
お義母さんは
お義姉さんと出かけて
帰りに近所のスーパーで一緒に買い物をする
と 決めている

でも、
お義姉さんは仕事の都合上
どうしても
途中で、銀行によらなくてはならないのが
常だ

そんなとき
この大型衣料品店ができたのである
お義姉さんは
銀行の手続きが長時間になるため
その間 お義母さんに
衣料品店で暇つぶしをさせてあげよう
と 思った
「ぜったいに ここを動いたら
 あかんよ」と
靴下売り場でお義母さんに言った

お義姉さんの銀行の手続きが
どのくらいかかったか知らない
お義姉さんが衣料品店に行ってみると
お義母さんがいない⁈
お義姉さんがどんなにあわてたか
想像にかたくない
お義姉さんはすぐさま
近くにいた店員さんに
「100歳近いおばあさんが
 この店でいなくなったのですが?」
と 言った
店員さんはそれを聞いて
おそらく
白髪頭の 腰の曲がった
弱々しい 老婆を
想像し 顔色を失った

ところが
私のお義母さんは
96歳ながら
髪は黒く染めているし
店のカートがあるから
杖もついてない
その気になれば
猛スピードで歩きまわれるのだ

でも、
お義母さんは
約束を守っていた
ずっと 靴下売り場にいたのである
店員さんは なかなか
100歳近い「おばあさん」を
みつけられなかった

お義姉さんが
冷静になって
靴下売り場に行ったとき
あわてふためく店員さんと
悠然と靴下を物色する
お義母さんが
背中あわせにいたのである・・・・・










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