Make Americanas Great Again

1 柔術を始めたばかりの人が覚えるサブミッションのひとつに「アメリカーナ」という技がある。
 柔道の「ウデガラミ」と違って、トップから相手の肘ではなく、肩を極める技だと私は理解している(この点については後述する)。まずは次の動画をご覧頂きたい。


 この技になぜ「アメリカーナ」という名前が付いているのか?その由来については、(ヒクソンの兄である)ホーウス・グレイシーにアメリカ人レスラーであるボブ・アンダーソンがレスリングのテクニックである「キーロック」を教え、ホーウスがボブに敬意を表して「アメリカーナ」と名付けたそうである(注1)。
 個人的には、エリオ・グレイシーが木村政彦に敬意を表して「ウデガラミ」に「キムラ」という名を付けたように(注2)、「キーロック」にも「アンダーソン(・ロック)」という名前を付ければ良かったのではないか?と思うが、本稿の主題は「アメリカーナ」という技の中身についての話なので、由来についての逸話はこの程度の記述に留める事にしよう(注3)。

注1)その経緯については「ヒクソン・グレイシー自伝『BREATH』」にも記載がある。「アメリカーナ」という技名の由来について興味のある方は次ページも参照して欲しい。

注2)

注3)蛇足だが、ジョン・ダナハーは「アメリカーナ」の事を「アメリカン・ロック」と呼んでいる。

2 さて、前述したように「アメリカーナ」は柔術を始めてすぐに習う技とされているが、これを使いこなしている人は案外少ないように思う。
 MMAをやっている若い子から「キムラ」の質問を受ける事はしばしばあるが、「アメリカーナ(V1・注4)」について聞かれた事は一度もない。

注4)日本では総合格闘技の影響もあってか「アメリカーナ」を「V1アームロック」と呼ぶ人も多い。呼称は違うが同じ技と考えて差し支えないだろう。

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