ヴァルド派の料理


プルスティネンガ 幸せの内臓煮込み

この茶色い料理は”プルスティネンガ”という煮込み料理。

何かというとヴァルド派に伝わる結婚式で振る舞わられる内臓料理である。

昔、ヨーロッパの多くは内臓を一番貴重なものとしていた。ヴァルド派では結婚式に合わせて山羊を潰し、その内臓とその血とスパイス、たっぷりの赤ワインで煮込み、新郎新婦に振る舞った。それがこのプルスティネンガ。

ちなみに画像のこれは山羊ではなくてスッポンである。現在リストランテ・フィオッキでは、こともあろうかリストランテなのにもかかわずこの茶色い田舎料理をそのまま提供している。
すっぽんの内臓は優しくて食べやすい。
作ってみたところ原形を崩さず完成に至った。

ヴァルド派の料理コースイベントなどでは鹿などで作ってみようかとも思う。

(画像の中にある黄色い球状のものはスッポンの未熟卵。)




鴨と大麦、ポルチーニ茸のミネストリーナ

イタリアにもお吸い物のような料理がある。
大抵はブロードといわれる出汁に具材を入れたのがミネストリーナ。
あのミネストローネはたくさん具材の入ったという意味。
ちなみにこれらスープ類もパスタも全て引っくるめて”ミネストラ”というカテゴリーとなり、一般的なパスタ料理は”ミネストラ・アッシュッタ”乾いたミネストラというカテゴリーになる。なので、このスープ料理はミネストラという料理カテゴリーの中の汁物としてミネストリーナというジャンルになる。

という眠くなるようなウンチクはさておき、イタリアにも美味しい出汁スープがあり、ヴァルド派の料理にもそれがあった。

鴨を丸ごと野菜と炊いてスープをとり、最後にブルーベリーを煮出す。肉はほぐし身にする。濾したスープに大麦や野菜、ポルチーニ茸にそのほぐし身を加えて出来上がり。
ポルチーニ茸からもしっかり味が出て旨みたっぷりのスープが出来上がる。

コース料理の中盤で一旦ほっこりしてもらうのに最適な料理で、現在のフィオッキのコースでもこのスープが根幹となった料理がしばし登場している。

こんな料理はなぜかピエモンテの土着品種ワインが良く合う。

ぜひ試していただきたい一品だ。



スッパ・バルベッタ 由来は髭?

前回にヴァルド派ついて簡単に綴ったが、そのヴァルド派の料理で象徴的な一品のスッパ・バルベッタ。

豚のスープで炊いたキャベツとグリッシーニのズッペッタ。

ズッペッタはパンにスープを染み込ませた完全食べる系スープのこと。

鍋底にキャベツを敷き、グリッシーニを並べてスパイスとトーマチーズを。
それを何層かにして豚のスープを注ぎ炊く。昔は暖炉の火にかけていた料理。


そしてバルベッタは、、、
このバルベッタ。意味は「ひげ」。
ヴァルド派がカトリック教会から迫害され山中にまで弾圧が行き渡ったその時代、ヴァルド派の人達は地下に隠れ住んでいた。その際も絶えずキリスト教が布教されていて、その時の宣教師が髭が長かったことから「バルバ」と呼ばれていた。(女性の宣教師もそう呼ばれていたそうなので完全に呼び名であったよう)

“スッパ・バルベッタ”
グリッシーニが髭に見え宣教師のようだからといってついた料理名である。

グリッシーニが出来上がったのは諸説あるが、1600年代にお腹の弱い王様ヴィットリオ・アメデオ2世の為に作られたとも言われていてトリノの街で生まれ、ナポレオンも好んだそう。

ヴァルド派はナポレオン時代には街に働きに出ていた時もあり、そのあと山中に窮乏を強いられることになるが、その時代には存在していた料理であろう。


硬いパンのグリッシーニに豚とキャベツの旨味が染み込み、グリッシーニはさながら、うどんのような食感に。
トロッとしてして食べ応えがあり、スパイスの効果で体も温まる。
北イタリアの山中の地下ではこのような料理が振る舞われていたのだろう。


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