堀川 亮

世田谷区の祖師ヶ谷大蔵でイタリア料理店のフィオッキとズッペリア・オステリア・ピティリア…

堀川 亮

世田谷区の祖師ヶ谷大蔵でイタリア料理店のフィオッキとズッペリア・オステリア・ピティリアーノを営むオーナーシェフ.。料理、ワイン、人、旅が大好きです。

最近の記事

賄い料理と、地球の裏側の料理を作るということ

オリーブオイルやワインやチーズなど、食品の価格が上がる一方の最近、イタリア郷土料理に入ってる物って意外と値が張るよなーって思う。 でもそれって現地ではとても安価な物なのが殆どだったりする。 で、ウチの賄いの話。 賄いって大抵は値段の安い物しか使っちゃいけない。でもそれだと「作る」っていうせっかく勉強になる行動をしてるのに一向に本質の方には行けない。 でもなんでも使って良いわけではないわけで… せめてオーナーの自分が作る時はちょっと値が張る品も使わせてもらって、伝えたいことを

    • チョウザメを知りに浜松へ

      北イタリアのアルプスの山の中で 北イタリアの山の中にあるレストランで働いている時、蝶鮫(チョウザメ)を料理していた。その蝶鮫はレストランからさらに山深い所にある養鱒場から届いていたのだが、とても美味しかった。 日本に帰って来て店を開き、日本でも蝶鮫が手に入ることを知り意気揚々と取り寄せて調理したそれは臭い… 他のも試したがやはり臭い… 諦めというかその存在からずっと離れていた。 しかし昨年末にとあるご縁から勧められた今取り扱っている蝶鮫は臭みなど無く、とても美味しかった

      • ジビエ解体工房さんに訪問。

        その工房は鳥取県の山の中にあると聞いていた。 クリスマス、おせち、正月営業と繁忙期が終わり、やっとジビエのコースに取り掛かれ、ご提供が始まった。 フィオッキには連日、雉や鹿、猪など野生肉が届く。その個体を見ていつも思う。 この肉たちはどういう環境で生きて来たのか。 家畜類なら想像は容易い(飼育方法は様々でそれも大変勉強になることだが、詳細はここでは割愛させて頂く) 野生肉となるとその環境でテイストも変わってくる。 特に鹿や猪は毛や皮が剥がされ正肉として届くことから

        • ジビエコース開催

          まず前半は料理人などプロ向けでは全くないのでご了承を。 2月、当店にてジビエのコースたるものを始める。その上でこのジビエについて意外と知られているようで知られていないこともあり、提供するにあたって知っておいていただきたいことがある。 ジビエとは何か。 狩猟によって食材として捕獲された狩猟対象の野生の鳥獣、またはその肉をいう。野生鳥獣肉と畜産との対比として使われる狩猟肉のことだ。ジビエはフランス語で、イタリア語ではセルヴァッジーナ。 それでは最初に主なジビエについてと勘

        賄い料理と、地球の裏側の料理を作るということ

          パネットーネという魔物

          442年ぶりだという皆既月食が神秘的に見えた満月の夜、俺は疲れていた。。。 前日の夜に最初の捏ねを終わらせ仕事を終え、この日は朝6時に店に入った。 発酵具合をみて、7時半から *本捏ねをした。 *(パネットーネは1回捏ねたら8時間発酵させ、もう一度捏ねる。これを本捏ねという) 前日は市場にも行ったので、俺は寝不足気味だった。 いや、ここ数年は、毎年この時期はこんな感じだ。疲れなんて覚悟の上だ。このご時世、やりたい事がやれるだけ有り難い。 話を戻し、月食のあった日の

          パネットーネという魔物

          ヴァルド派の料理

          プルスティネンガ 幸せの内臓煮込み この茶色い料理は”プルスティネンガ”という煮込み料理。 何かというとヴァルド派に伝わる結婚式で振る舞わられる内臓料理である。 昔、ヨーロッパの多くは内臓を一番貴重なものとしていた。ヴァルド派では結婚式に合わせて山羊を潰し、その内臓とその血とスパイス、たっぷりの赤ワインで煮込み、新郎新婦に振る舞った。それがこのプルスティネンガ。 ちなみに画像のこれは山羊ではなくてスッポンである。現在リストランテ・フィオッキでは、こともあろうかリストラ

          ヴァルド派の料理

          店舗移転で見る未来

          テイクアウト店の引っ越し いきなりだが、、、当社の目標は祖師谷からイタリア食文化のいろいろ発信である。 今回、リストランテ・フィオッキの店頭に構えていた小売店を3軒隣に引っ越すこことなり、その目標に一歩近づけるご縁をいただいた。 一見、なんてことない話だ。 しかし、これは僕にとっては一大事なのだ。 これまでにオステリア・ピティリアーノとラ・ポルタ・ディ・フィオッキと拡げてきたが、これらはいずれも同ビル内。目が行き届くし、すぐに助け合えた。いわゆる少ない人数で出来て

          店舗移転で見る未来

          近未来の課題

          このnoteでは、なるべく自分の書きたいことを書いていきたい。とても当たり前のことなのだが、しかしながらどうしてもそれとなく店の宣伝的なニュアンスになる。 まあ、それも仕方ないと思いつつ、4月後半現在の当店と、これからのことを書いてみる。 最近の現状 三寒四温を繰り返し、今年ももうすぐゴールデンウィーク。年々歳を重ねて思うことがあるのだが、今回はそんなことではなくここ最近の店のことだ。 同ビル2階に自分なりの表現で開店したオステリア・ピティリアーノもしばらく昼の営業がで

          近未来の課題

          ヴァルド派の郷土料理、仔羊の藁包ロースト

          ピエモンテ州のフランス国境近く、アルプス山脈の麓にリストランテ・フリッポーというレストランがあった。そこの名物料理の仔羊の藁包ロースト。僕はこの料理に20代半ばの修行時代に出会った。 それは山の料理を勉強したいと鼻息を荒くしていた青二才には、この上ない刺激的な出会いであった。 この料理は、軽く焼いた仔羊肉を干し草で包んでローストす料理で、焼き上がった包みからは芳醇な干し草の香りを纏った仔羊肉の塊が登場する。 この香りは本当に特別である。当時ワルテルシェフは「5月に刈り取っ

          ヴァルド派の郷土料理、仔羊の藁包ロースト

          ヴァルド派の料理、スッパ・バルベッタ

          前回にヴァルド派ついて簡単に綴ったが、そのヴァルド派の料理で象徴的な一品のスッパ・バルベッタという一品をご紹介させて頂きたい。 前回の記事 スッパ・バルベッタとは この料理は豚のスープで炊いたキャベツとグリッシーニのズッペッタで、そのズッペッタとはパンにスープを染み込ませた完全食べる系スープのことだ。 料理名のスッパとはこの地方の方言で豚のスープのこと。 鍋底にキャベツを敷き、グリッシーニを並べてスパイスとトーマチーズを何層かにしてスッパを注ぎ炊く。昔は暖炉の火にかけ

          ヴァルド派の料理、スッパ・バルベッタ

          ヴァルド派とその料理

          ヴァルド派とは 当店のコース料理の根幹はヴァルド派の料理。 それはカトリック教会から異端とされ迫害を受けた、悲しい歴史が残るキリスト教の一派の郷土料理である・・・ 1200年ごろにフランスの商人から始まった「聖書に基づき質素に生きるべき」と唱えるキリスト教のヴァルド派は、当時のカトリック教会から異端とされ様々な迫害を受け続けた。ヴァルド派はプロテスタントの先駆ともされ、イギリスのピューリタンなどの支援、その後はオランダなどのプロテスタントの支援を受けながら生き残った。後

          ヴァルド派とその料理

          牡蠣、森の香り。 水の国、日本。

          「牡蠣は森が作る」 このフレーズが僕の中にある何かに突き刺さった。 以前に秋田出身の元スタッフから「秋田では牡蠣は山が作る、っていわれてるんすよ。」という話を聞いていた。 そこから意識が山と海に向き、そしてある方から畠山重篤さんという方の活動を教えられ、「森は海の恋人」という植樹活動とその理念を知った。 (畠山重篤さんのプロフィールを文末に貼り付けてあります) それまで牡蠣を調理するとき「海」しか頭になかった自分。 そんな僕に「森は海の恋人」という理念は新たな1頁を

          牡蠣、森の香り。 水の国、日本。

          営業形態変更のお知らせ

          2月よりレストランの営業形態を少し変更いたします。 それぞれ2月4日(金)よりスタートです。 下記の価格表示は全て税込み表記です。 リストランテ・フィオッキでは今まで北イタリアのアルプスの一角に隠れ住んだ歴史があるヴァルド派の郷土料理をベースに「山の料理」をテーマとして参りましたが、そのテーマを少し緩めて海のものも取り入れます。そしてそれは特別な食材にしようと思っています。例えばノドグロやクエ、鮑、などなど。日本の市場には素晴らしい海産物が並んでいます。 現在のコース

          営業形態変更のお知らせ

          2022年、新年のご挨拶と抱負

          新年あけましておめでとうございます。 早速ですが、今年の抱負は! (毎年恒例で初ミーティングではスタッフ全員、抱負を語り合い笑いが飛び交います) 僕の抱負は月並みですが、もっともっと強いチームを作る!です。 それについて僕の考えと取り組みを綴らさせていただきます。 (絶対にやり遂げたいので) まず、どんどんデジタル化が進みその産業に人が偏るこの時代、これからの飲食店の在り方に不安を感じています。 一部の予約が取れない人気店を除き、大抵は人手不足に悩み集客と利益に悩ん

          2022年、新年のご挨拶と抱負

          フィオッキ休業中

          2021年9月のフィオッキコロナウイルス感染拡大は続き、緊急事態宣言によりフィオッキは休業しております。 理由はフィオッキの料理は一斉スタートでお皿数が多いので国や都の要請通りにことが運ばない。そしてワイン無くしてコース料理が成り立たないと考えた結果です。それとは逆に姉妹店のズッペリアは換気しっかりでアラカルトのお店なのでお食事時間も制限できます。お客様数を少なくしお客様においては小声でのお食事をお願いしてワインも提供しています。 テイクアウトイベントをやろう!フィオッキ

          フィオッキ休業中

          フィオッキという店

          自己紹介 初めまして。 世田谷区祖師谷でイタリア料理店を営んでおります堀川と申します。 今回、初めての書き込みということで簡単に当店のことと私のことを綴らせて頂きます。 まず私、堀川、二十歳を過ぎた頃、都内のイタリア料理店に修行で入り料理を学び、約3年が絶った時、本物を見たくイタリアへ。2年間の現地修行後、2000年の秋、生まれ育った祖師ヶ谷大蔵にて小さなイタリア料理店をオープン。28歳の時でした。 画像は現在のフィオッキ それから14年、小僧はもがきながら何とか

          フィオッキという店