メディア&情報リテラシー(II) ~選手補償の件~

2024年1月11日17時30分頃。
山川穂高選手の福岡ソフトバンクホークスへのFA移籍に伴い、選手会のFA規約第10条に定める「選手による補償」として、甲斐野央選手が埼玉西武ライオンズに移籍する旨の発表が、両球団からあった。

ライオンズとしては、
山川選手(推定2億7000万円)を手放して、
甲斐野選手(推定4000万円)を取ったという事で、
かなり良い選手を取れたと思うし、「超お買い得」だったのではないか。


ところが、この公式発表の前には、一騒動あった。


■日刊スポーツのデマ記事

1月11日朝5時、「日刊スポーツ」という朝日新聞系のスポーツ紙が、選手補償に和田毅選手の名を挙げ、一面にデカデカと掲載した。


その記事を見た時の、筆者の感想としては、
「あんなの、何の裏付けも無い完全なる飛ばし記事のデマ記事だろw」
「そんなものに振り回されずに両球団からの公式発表を待てばよい」
「両球団からの公式発表こそが全てで、それ以外の何モノでもない!」

…と、いつも通りの調子で思っていた。

そして、17時30分頃に両球団から発表されたのは、和田選手ではなく甲斐野選手だったという事で、筆者の予想通り、日刊スポーツの記事はデマだった事が確定した。



■デマ記事に踊らされた情けないプロ野球ファン

だがしかし、「メディア&情報リテラシー」が絶望的に足らない日本国民…とりわけプロ野球ファンの方々は、それはそれはもう、脊髄反射で反応して、騙されて踊らされて振り回されている人が殆どであった。

プロ野球解説者もデマ記事に振り回された者が殆どで、公式発表より何時間も前にYoutubeに速報動画を流した者もいた。(武士の情けで名前は伏せる)


それから、公式発表がされる17時30分頃までの間、ネット上では様々な憶測・推察・妄想・陰謀論が飛び交った。

・1月10日夜の段階で既に和田と決まっていた。
・和田はプロテクトから外された。
・ライオンズが和田を指名したら、ホークスがゴネ出した。
・大人の対応をしたライオンズが、プロテクト内だった甲斐野を指名した。
・和田が移籍を拒否してゴネた。
・岩瀬式プロテクトか。
etc……

だが、それらのいずれも妄想の域を出ていない。(当たり前だが)

しかし、日刊の飛ばし記事はデマだった事が確定したわけで、
結局は、野球ファンがデマ情報に踊らされてギャーギャー喚いたという「みっともない醜態」がさらけ出されただけであった。


17時30分頃の公式発表後も、野球ファンの怒りは収まらなかった。

騒動の火をつけたのは明らかに日刊スポーツなのだが、どういうわけか、野球ファンの怒りの矛先は、日刊スポーツではなくホークス球団に向いていた。
「フロントは経緯を説明しろ!」とね。

これは、まさに「マスコミ脳」そのものであり、マスコミの思うツボであり、マスコミにとって「養分」である。

いつか見た光景だ。


日刊のデマ記事は、ゴミ以外の何モノでもない。
だが、筆者から言わせてもらえば、
・野球ファンやプロ野球OBが、勝手に日刊のデマ記事を信じ、勝手に踊らされ、勝手に妄想を重ね、勝手にギャーギャー喚いだだけ。
・情報を精査する能力の無い者は、今後も際限なく踊らされ続ける。

そうとしか思えなかった。

一歩踏み留まって、公式発表を待つ事はできなかったのか???と。
両球団の公式発表があるまでおとなしく待っていればよかったんだよ。
非難するのは公式発表後でも遅くないだろう。



■公式発表後の日刊スポーツの記事

17時52分の記事で、何事も無かったかのように、選手補償として甲斐野選手が指名されたと報じた。


だが、22時15分の記事では、「異例の決着」と書き立て、いかにも、
「オレたち日刊スポーツは悪くない!」と、自分らに非は無いと言わんばかりに、
「ライオンズが和田を指名したのは間違いないが、反響の大きさを鑑みたホークスが泣きつき、ライオンズが忖度して、両球団が話し合って決めたんだよ。」
などと言わんばかりだ。

方針転換したのは、ライオンズでもホークスでもなく、デマ記事を飛ばし、騒動を焚き付けた張本人である日刊スポーツの記事だろ!

百万歩譲って、「球団の方針転換」が事実なのだとすれば、球団に圧力をかけたのは、他の誰でもない野球ファン自身という事になる。球団は規約に則っただけなのに、
「和田を取るなー!」とか、
「和田がいなくなったらファン止める!」とか、
コワすぎるにも程があるだろう。



更に、22時48分の記事では、ホークスの三笠GMのコメントが紹介(?)されたが、
ライオンズが、当初は和田選手の指名を打診したことについて問われて、「コメントはありません」と。

だが、そんなもの、三笠GMからすれば「コメントするに値しない」というのが本音でしょうよ。なぜなら、日刊の記事は最初からデマだったから。

答えようがない。


その後も謝罪記事など一切無く、シレーっと言い訳記事に終始し、後は他社の後追い妄想記事に委ねて逃げるところなんて、朝日新聞系そのものだ。


だが、もしも、あんなデマ報道が「報道の自由」を盾にまかり通って許されてしまったら、
マスコミは好き勝手にデマやウソを飛ばし放題だし、
選手やファンがネット上で議論を巻き起こし、圧力をかければ、規約に則っているだけの球団の思惑を萎縮させてしまうだろう。
選手会のFA規約に則った「選手による補償」という制度。プロテクトを外れた選手の中から誰を取ろうと文句を言われる筋合いはない。



■「岩瀬プロテクト」もデマ

過去に、中日ドラゴンズの岩瀬仁紀選手が、選手補償で指名されそうになった時に『人的補償になるなら引退する』と言ったとか何とか。

「本当か?」と思い、その出処を探ってみたら出てきたよ、東スポの記事が。

実は日本ハムから岩瀬の指名を受けた中日は、大混乱に陥っていた。中日としては岩瀬の指名はまさかの出来事で「岩瀬は超のつく大ベテラン。今季から兼任コーチの肩書もついている。球界の暗黙の常識からしても兼任コーチは選ばないと踏んでいたようだ」と球界関係者はいう。

チームを長きにわたって支えた功労者を人的補償で移籍させるなんてことになれば球団にとっては大失態。ファンから批判が噴出するのは間違いない。とはいえルールはルール。日本ハムサイドには少しの非もない。中日球団サイドはこの事実を岩瀬本人に伝え、納得してもらうよう努力した。しかし、頑として岩瀬は首を縦に振らず。「最後には『人的補償になるなら引退する』とまで言ったらしい」(球界関係者)


確かに、『人的補償になるなら引退する』とは書いてあった。

だが、この記事を読む限り、そのように言ったのは、謎の"球界関係者"であって、岩瀬選手本人や球団フロントの者ではない。

そこを読み解けるかどうかが、「メディア&情報リテラシー」を高める上で、重要となるポイントだ。

もしかしたら、岩瀬選手が本当にそのように言ったかもしれない。
その可能性がゼロとは言い切れないからね。
しかし、その記事を書いた記者が、架空の"球界関係者"をどこからともなく創作して、いかにも岩瀬選手が言った事が事実であるかのように書いた作文である可能性だってあるわけでね。

この件について、結局のところ、野球ファンが事実確認できる術はなく、
岩瀬選手本人から言質を引き出す以外には確認の取りようがない。
この記事にしても、「~らしい」という言葉で逃げ道を作っているという卑怯な手段を講じている。

そんな無責任な憶測デマ記事を判断材料に、第三者である野球ファンが勝手に「ゴネた」と決めつけるのは、選手に対して大変失礼な事だ。
選手補償を巡ってゴネた証拠なんて、どこにも無い。


■選手補償に関する規約

選手補償に関する規約は、日本プロ野球選手会の公式サイト内にある「フリーエージェント規約(2009年度版)」の第10条に詳細が明記されている。

なお、指名された選手が移籍を拒否をした場合は、その選手は資格停止選手となる。(FA規約第10条7項)


もし移籍拒否の主張がまかり通ってしまえば、選手補償制度を根底から覆す事となってしまう。

選手補償制度という概念そのものには何の落ち度もない。だが、抜け穴があってはならない。
選手会の規約に定められたFA選手補償制度ゆえに、更なる改正が必要だろう。

あと、「人的補償」という言葉が悪いと野球界隈で言われているが、FA規約には「人的補償」という言葉は使われておらず、『選手による補償』と表現されている。
金銭の場合は「金銭(による)補償」と表現される。

こういったマスコミが好んで使用する用語にも要注意だ。


■マスコミの事実に基づかない悪質な虚偽情報には要注意!

多くの方々は、「さすがに確証もなく一面なんかにしないやろ」と思うかもしれないが、何の確証もなく一面で報じるのがマスコミというゴミ集団である。

普段は政治経済金融界隈に身を置く筆者は、そんな光景を毎日のように見ている。マスコミ連中の報道など1ミリも信用してはならないという事をよく知っている。

マスコミの記事を正しいと思い込んだり信じたりした時点で、もう負けているんだよ!

日刊スポーツとしては、センセーショナルな記事を一面にドーンと載せれば、ファンがそれに踊らされる事をよく知っているわけで、それによって売上も伸びるわけでね。

ゆえに、今後もこのような事は十分にあると、肝に銘じておくべきだろう。


そんな、事実に基づかない情報・誤解を招く情報・悪質な虚偽情報をしっかりと見極めるためには、メディア&情報リテラシーを身に付けなければならないのだ。

これは何も、政治・経済・金融関連に関わらず、一般時事関連、スポーツ関連、芸能関係等々、全てに当てはまる事だ。

・「公式発表」のみをひたすら待つ。
・「公式発表」以外は信じない。

こんな当たり前のことさえできないのなら、メディアリテラシーや情報リテラシーはいつまで経っても低いままだ。


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