性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律

2023年10月25日。
戸籍上の性別(法的性別)の変更における『手術要件』について、最高裁判所大法廷は「違憲」と初めて判断したというニュース。

「生まれた時の性別(男)」とは異なる性別(女)で社会生活を送っている当事者が、手術無しで戸籍上の性別(男→女)の変更を認めるように求めた裁判であるが、1審(家庭裁判所)・2審(高等裁判所)は共に認めなかった。

当事者は、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の規定は、憲法13条(個人の尊厳)や憲法14条(法の下の平等)に違反する」として、最高裁判所に特別抗告していた。



■マスコミ報道と、読者の誤解

マスコミはいろんな表現を駆使して報道しているようだ。
一応、ココに載せておく。筆者はマトモに見ていないw


この判決を報道で受け、TwitterなどのSNS上では、案の定、
「手術不要の"性自認が女"の"お気持ち女性"が女風呂に入れる!」
「性自認だけで性別変更できる!」
「LGBT法のせいだ!」
「一般女性の権利を無視している!」
「終わりの始まり!」
など、誤解が多く見られた。



■特例法と手術要件

「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の第三条1項には、次のように書かれてある。

(性別の取扱いの変更の審判)
第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
一 十八歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと。
四 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

e-Gov法令検索|性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律


つまり、二人以上の医師の診断が一致した上で(第二条)、第三条1項にある5項目を全て満たしていなければ、性同一性障害者の戸籍上の性別(法的性別)の訂正は認められない…という内容になっている。

また、『手術要件』には二種類あり、特例法第三条1項にある四号「生殖腺要件」と五号「外観要件」が該当する。



■実際の裁判結果の内容

実際の裁判の内容については、裁判所の公式サイトにしっかり掲載されている。
何事も、マスコミ報道などではなく、公式サイトや一次ソースを直接探したほうがいい。


◎判示事項
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号は、憲法13条に違反する。
◎主文
現決定を破棄する。
本件を広島高等裁判所に差し戻す。

 ※裁判結果の全文PDF中にある、
 「本件規定」とは、『特例法第三条1項四号』を指す。
 「5号規定」とは、『特例法第三条1項五号』を指す。

今回の最高裁判所の判決は、全文PDFの10頁目あたりにある。

(四)生殖腺要件
 ⇒「本件規定」は、憲法13条に違反する。
(五)外観要件
 ⇒「5号規定」について、更に審理を尽くさせるため、原審(広島高等裁判所)に差し戻し。

五号については最高裁では判断されておらず、現段階では違憲ではないが、差し戻された高等裁判所の今後の動向次第によって、新たな変化が生じる可能性はあるのかもしれない。

…という事で、現状では引き続き「性別適合手術」を受ける必要がある事になる。



■大法廷による重い判決

今回の判決は、最高裁判所の裁判官15名の「大法廷」での判決である。
その15名が「本件規定」を全員一致で憲法違反としたため、非常に重い判決となる。
更に3名が「5号規定」についても憲法違反であるとし、差し戻さずに申立て人の性別変更を認めるべきだと述べた。

この件の全てが確定し、憲法違反の箇所があれば、それについては国会は対応を迫られることになりそうだ。











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