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保護犬タカナの事 1⃣


 タカナは熊本県の阿蘇で野良犬として保護され、だから阿蘇名物の高菜にちなんでタカナという名前で呼ばれていた。 保護犬施設でタカナと初めて会った時、他の犬たちと違い静かで、こちらが手を出すとそっと舐めてくる、優しい気質がわかる雌犬だった。


 


 10歳前後のおばあちゃん犬だと聞いていたが、トライアルを決めて一緒に暮らし始めるとなかなかに元気がいい。近くにビニール袋があると振り回して中身を台無しにしたり、散歩でもぐいぐい、ぐいぐいこちらを引っ張っていく。一度は散歩で見かけた猫をものすごい勢いで追いかけ、私は曳きずられそうになる始末。だが、引き摺られそうになった事よりタカナが猫に大きく反応したことがショックだった。

 


 実は私は猫も飼っていたが、タカナにも猫にも互いの存在を知らせずにいた。つまりは部屋を別にして会わせるタイミングを見計らっていたのだ。
タカナは、施設では猫と仲良く暮らして居たのに本当は猫が嫌いなのだろうか。今までの飼育歴の中では犬と猫は仲良く共生していたが、それがレアな事なのか。私の心配はどんどん膨れる。




 施設の話によれば、今までに二人、タカナをトライアルした人達がいたそうが、残念ながらタカナは戻されたという。施設では優しく大人しく思えたのに元気が良すぎるという事なのだろうか。人間って勝手だなと、その時は思ったが他人の事どころではない。
私だって、散歩の後、迷いが出始めている。 




そして、思いもよらないタイミングで猫とタカナはハチ合わせてしまい、お互いの存在を知ることとなる。残念ながらタカナは猫を見て鳴き狂った。
狼狽える私は今更ながら、自分の覚悟のなさと甘さを思い知る。トライアル期間の1週間も終わらぬままに、情けない私は彼女を諦める事が一番の選択肢だと思い、施設に連絡を入れた。





 




 



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