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12月30日(土):書籍「疲労とはなにか」からの整理②

昨日は12月に発売したばかりの書籍「疲労とはなにか(近藤一博著)」を取り上げました。

ブルーバックスからの発刊とあって疲労に関する研究の「いま」がふんだんに盛り込まれており、生理的疲労のメカニズム、生理的疲労を軽減する方法、病的疲労のメカニズム、慢性疲労症候群やうつ病の科学的な捉え方、病的疲労と新型コロナ後遺症との共通点など新たな知見を得ることができました。

これら書籍からの学びを自社の事業領域(フィットネスクラブ運営)に沿って整理を進めているところです。

昨日は前提となる「疲労感」と「疲労」の違いに触れ、疲労の程度は「HHV-6(ヒトヘルペスウイルス6)」によって測定できること、そのうえで疲労は「生理的疲労」と「病的疲労」の2種類に区分されることまで記しました。

本日からは生理的疲労についての整理をしていきます。

まず生理的疲労における「疲れた」という感覚は脳の中で生じているとのことです。

具体的には体内の抹消の組織(臓器や筋肉)で炎症が生じた時に細胞から分泌される「炎症性サイトカイン」が、血液脳関門の隙間を通り抜けたり、神経を通ったりして脳内に入ることがそれにあたります。

この炎症性サイトカインの産生機構は真核生物翻訳開始因子「eIF2α」のリン酸化によって引き起こされます。

なおリン酸化とは細胞の機能を調節する重要な仕組みで、eIF2αのリン酸化はヒトに備わった原始的なストレス応答機構になります。

ヒトには複数のストレス応答機能があり、そのなかの「統合的ストレス応答(ISR)」の反応では、酸化ストレス、小胞体ストレス、アミノ酸不足、ウイルス感染といった様々なストレスに対応して細胞がeIF2αをリン酸化して、誤ったタンパク質の合成が生じないようにタンパク質の合成をとめます。

それと同時に通常のタンパク質合成がとまる代わりにストレスに応答するためのタンパク質が合成され、アポトーシスの誘導やHHV-6の再活性化、そして炎症性サイトカインの産生を引き起こすとのことでした。

前述したeIF2αのリン酸化から炎症性サイトカイン産生までの細かな機序を知りたい方は是非、本書を手に取ってもらえればと思います。

ここまでの説明をもとに生理的疲労を「疲労感」と「疲労」に区別をすると次のように表現ができます。

・疲労感:統合的ストレス応答(ISR)によって産生された炎症性サイトカインが脳に伝わって生じる感覚

・疲労:統合的ストレス応答(ISR)を引き起こすeIF2αのリン酸化による細胞の停止や細胞死

つまり疲労の原因はISRと呼ばれるストレス応答であり、それを引き起こすのがeIF2αのリン酸化となります。

生理的疲労の原因とそのプロセスが整理できたので、その次の問いはこれらをもとにして「生理的疲労を回復するには?」です。

こちらは明日に続けます。

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