見出し画像

「穴あきバケツの成長モデル」の話

新入社員のこばかなさんが、「こばかなスケッチ」という自分企画を頑張っている。THE GUILDでの日々の仕事と、読書で学んだことを、一枚のスケッチにまとめるチャレンジだ。

第三回はこの絵。「穴あきバケツの成長モデル」のお話。


サービスの成長を「バケツと水」に例える

様々なビジネス指標の中で、「継続率」こそが最重要だと考えている。売上よりも、PVよりも、DAUよりも、「継続率」がもっとも尊い。

そんな継続率を大事にしつつ、サービスを着実にグロースさせるモデルが、「穴あきバケツの成長モデル」だ。

このモデルは非常にシンプルだ。一言で表すと以下のようになる。

「サービスとは穴の空いたバケツであり、マーケティングという蛇口から新規ユーザーを流し込んでいる」



バケツ: サービス。
蛇口: マーケティグ等の流入経路
蛇口からの水: 新規流入ユーザー
溜まった水: アクティブユーザー
バケツの穴: サービスの欠陥
漏れた水: 離脱したユーザー

それぞれを俯瞰しながらコントロールすることが、サービスの成長に重要だ。クライアントにわかりやすく説明するために、この「穴あきバケツのモデル」を使うことが多い。

このメタファーは、特に日経電子版チームとの定例で多用された。今でも現役で使ってもらえている。


バケツモデルに見るグロースの因果関係

このバケツモデルが発している最も強烈なメッセージは、「マーケティングに予算をかけすぎる前に、バケツの穴を埋めろ」ということだ。

バケツ(サービス)に致命的な穴が空いている状態でも、勢いよく水(ユーザー)を流し込めばそれなりに水は溜まる。ただし水漏れ(離脱)をし続けているため、水かさは徐々に減っていく。

結果、穴を補修する前に水道(流入)が止まると、最終的にバケツは空っぽになってしまう。

スタートアップが10億ほど調達して、突然にTVでCMをバンバン流し、その後は緩やかに衰退するパターンがこれだ。スタートアップの創業者が「自分で開発をしない」タイプの場合、往々にやりがちなミスだと思う。

まず、バケツを点検し、大きな水漏れの穴を塞ぐ。そのあとで勢いよく水を流し込み、漏れ出す穴を大きいものから順に埋めていく。これがバケツモデルをベースにしたグロースの基本戦略になる。

・本格的なマーケティングの前に、ユーザーが流出する穴を埋める。
・穴が空いたま水を流すと、蛇口を止めた時点で水が抜けてしまう。
・バケツに穴が空いたまま大規模なプロモをやるのは、調達後にありがちなミス。


健全にグロースするための手順

このバケツモデルは、ARRRA(アーラ)モデルと呼ばれるグロースモデルとも関係が近い。。

ARRRAモデルでは、「商品の価値を伝える(Activation)」→「継続率を高める(Retension)」→「満足度を高める(Referal)」→「収益化(Revenue)」→「ユーザー獲得(Acquisition)」という順にサービスに手をつけていく。

ARRRAも継続を優先し、ユーザー獲得を最後にまわしている。

「ほとんどの人が勘違いしているグロースハックにおける最適なフレームワーク」より引用
http://growiz.us/real-framework-of-growthhack/


この施策プロセスは、バケツモデルと併用できる。バケツモデルで上層部の理解を得て、実務としてはARRRAにそってカイゼンをしていくのが良いだろう。


穴あきバケツの例外

「穴あきバケツモデル」のグロースは、王道であり基本的に推奨される。

ただし、バケツモデルが苦手とする例外もある。それは「ネットワーク外部性」が強く発生しライバルの多い市場環境だ。

ネットワーク外部性とは、ざっくり言うと「人が増えるほど急速に有利になる性質」のことである。LINEのような通話システムや、SNS、金融システムなどである。

このような市場ではプロダクトの品質は優先順位2番である。むしろ、力任せに広告マーケティングで湯水のようなコストを注ぎ込むのが強い。このようなゲーム環境では、プロダクトの品質は往々にして置き去りになりやすい。丁寧なぶん遅すぎるのだ。

ネットワーク外部性の高い市場では最終的に1社が大勝ちするか、あるいは市場が定着する前に、全員が予算を使いきり共倒れをして終わる。

このような場合も、正解は「バケツに激流を注ぎ込みつつ、必死で穴を補修する」だと考える。結局のところ、どのような環境であれ「継続率は神」なのである。ネットワーク外部性の高い市場でさえ、継続率はユーザーの増加に対して、複利的な加速を与える。

・ネットワーク外部性の高い環境では、バケツモデルの改善は行いにくい
・ネットワーク外部性が高い場合、ユーザーを急速に流入させつつも、継続率を高める必要がある。
・どのような場合も、「継続率は依然として神」である。


…というような話を、打ち合わせ途中のタクシーの中で、こばかなさんに吹き込んでる。

この「穴あきバケツ理論」、自力で発明した渾身の理論だったはずなのだが…どうやら海外に「Leaking Bucket Marketing」というマーケティング理論があるらしい。

自力で発明したつもりだったけど、どっかで読んだ記憶がすっ飛んだだけなのかもしれない…うーむ。



いただいたサポートは、コロナでオフィスいけてないので、コロナあけにnoteチームにピザおごったり、サービス設計の参考書籍代にします。