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Somewhere near you. / 海外遠征を終えて

もうすぐ2022年が終わりますね。
口癖のように「気づいたら1年が終わってた」と言うようになってからどれくらい経つだろうか。

先日「サマーゴースト」のUS版が発売されました。

US「Summer Ghost」

僕はむかしから漠然と日本以外の国でも活動したいと考えていました。

日本で「サマーゴースト」が公開されてから、アジア、ヨーロッパ、アメリカ……様々な国で上映機会をいただき、実際にこの作品を通してイギリス、フランス、アメリカを訪れることも叶いました。今回ではないですが、縁あって中国のアニメスタジオにお邪魔したこともあります。

「サマーゴースト」の海外展開は基本的にすべて配給元であるavex picturesさんが担当。僕らが”向こう”の方々と交流するためには、各国の方々が機会を作り招いてくださらない限り実現しないことがほとんどです。なので、呼んでくださった時点で、僕らに多くのエネルギーを注いでくれたことが想像できます。

第25回ファンタジア国際映画祭「アニメコンペティション部門 今敏賞 審査員特別賞」受賞
第25回ファンタジア国際映画祭「短編アニメーション部門 観客賞 金賞」受賞〜

これまで、何かを実現するためにはまず「目標」を立て、そこに到達することに集中する。そういう自分(たち)で在ることが自らの意志であり、意志の強さとはそのまま自分自身の強さの現れなんだ。目標を達成しようという意志こそ、自分(たち)を未来へ推し進めるエネルギーになるはずだ、と考えていました。

一度ゴールを設定すれば、そのプロセスのなかで不測の事態が起きたとしても、その都度軌道修正や検討ができますし、目標から逆算して今の行動を考えることは、意思決定のうえでは効果的かつ効率的。チームメンバーに目標設定の大切さを説く自分もいます。
また、そのようなアプローチは界隈でもよく耳にしますし、無論、その方法は間違いではないのでしょう。

ただ、そのやり方を追求すればするほど、現在の、その瞬間の「感情」はおざなりになりますし、感情(本心)を表現することが創作における誠意だとするならば、目標のために自身の感情をシステマティックに制御することは、本当に自分(たち)が未来へ向かうエネルギーを生みだしていると言えるのか。冷静に考えれば分かることですが、巷で語られる「正解」が自分に合ってるかどうか、実際のところ分かりません。

この文章を書くにあたりnoteを開くと、前回の投稿から約1年も経っていたことに驚きました。
さらに驚くべきことに、その時の僕も「計画」について語っていました(1年も経つとだいたいの内容は忘れる)。

「計画したものではなく、日々の浮き沈みや生活の機微、そうしたものを感じながら小さな偶然をデザインする。そこから見えてくるものもあるはず。/ 僕自身はそうした偶然の積み重ねの価値こそを信じています。」

「成長における偶然性の問題 / 2022年FLAT STUDIOからのお知らせ」

と。

こんなことを言っていると、経済活動をするのが嫌だと言っているように聞こえてしまうかもしれませんが、活動をするうえで経済性は最も重要な要素のひとつですし、モノづくりのプロセスでは、お金を生み出す(そして使う)ことでしか解決できないことがあることも分かってる。当然ですが、それらを無視して活動をすることは出来ません。
それに、一部例外を除き何かを表現することと経済活動が対立構造にあるとも思っていないですし、プロフェッショナルの多くはそのふたつを完全に両立しています。
じゃあ、なんでいつまで経ってもこんなに引っかかってるんだろうかーーー

話しを戻します。
海外生活の経験があったり、日本に居ても海外の文化や生活が身近な存在だった人はいると思います。これまでそういったものが全く身近になかった(今もだけど)自分からすると、今回の経験は、小さい頃から漠然と考えていたことが少しだけリアリティを帯びた経験。海の向こうを身近に感じるひとつのきっかけでした。とはいえ、憧れていた国々に行って改めて思ったのは「日本、めっちゃ良いな!」で(笑)。でも、生まれ育った日本と同じくらい身近に感じた人や場所、価値観があったのも事実です。

みんな大好きピッツァ(イギリス)
loundrawの宿泊部屋。この部屋以外に寝室もあった(イギリス)

イギリス
これまで自分たちのことを何枚もの企画書を書いては説明し、いろいろな言い回しをすることで「やっと少しだけ伝わったかな?」と思うことがほとんどでしたが、始めてお会いしたイギリスチーム(AnimeLimited.Ltd)のみなさんには、それがすぐに伝わったこと。「絶対に間違っていないよ」と言ってもらえたこと。

取材部屋からの景色(フランス)
SHINJUKU(フランス)

フランス
新参者にはなかなか難しい由緒ある劇場を開けてオープニングイベントをしてくださったことはもちろん。なぜフランスが”芸術の国”と言われるのか、その所以を感じさせるような人々の生活(本当にめっちゃ喋る)、僕らは非日常だから目にするもの全て新鮮に感じるだろうけど、我々に良いものを体験させようと、毎日色々なところに連れていってくれたこと。

ハリウッドのマジックアワー(アメリカ)
「Summer Ghost」上映後Q&A(アメリカ)
「ANIMATION IS FILM FESTIVAL 2022」の模様(アメリカ)
ありがとう! https://twitter.com/GKIDSfilms

アメリカ
アメリカチーム(GKIDS)のみんなが僕らと同じ世代くらいでした。それもあってか、めちゃくちゃ楽しかった! 他にも取り上げられる素晴らしい(伝説的な)作品もあるなかで、こうやってHeaderに取り上げて下さること、本当に感謝しかない。GKIDSチームのSNS運用方法など、勉強になったこともたくさん。これからもまた遊びたい。
(なんとタイミングが合って昨日僕らのスタジオに遊びにきてくれた!)

体力的にはしんどかったけど、それを遥かに超える実り在る機会をいただき、改めて関係者各位に感謝の気持ちでいっぱいです。

今回、特に何か発表があるわけではないのですが、2022年の海外遠征もひと通り終わったので、区切りに備忘録として文をしたためました。

たぶん来月アナウンスできるのですが、「サマーゴースト」を経たloundraw監督、FLAT STUDIO制作の新作アニメーションが発表されると思います。まずはそのときまでお待ちいただけますと幸いです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!


石井龍 
https://twitter.com/ishii_ryu

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