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Soundtrack of〝History of Japanese Hardcore Techno〟

Murder Channelから自主出版する『History of Japanese Hardcore Techno』に付属される非売品CDのトラックリストと収録曲の解説を公開。

MxCx online storeにて予約受付をしていた『History of Japanese Hardcore Techno』(通常版+限定セット)は11月中旬から随時発送を開始していきます。第二次受付は11月下旬頃からMxCx online storeにて行う予定となっております。


V.A. -  Soundtrack of 〝History of Japanese Hardcore Techno〟

  1. Hammer Bros - Calling Enolagay

  2. Sieste - Kitty Whip

  3. The Speed Freak - I Otaku(Remix)

  4. Noize Creator – In Memory Of

  5. DJ Lib & MC Shit B - It's Tight Like That (TRU-LIVE)

  6. The Raverz Project! - Kiss Me Once Again (Breakbeats Azu-Mix)

  7. DieTRAX – Rotterdam

  8. DJ TECHNORCH - Complete Boss On Parade

  9. RoughSketch - Desktop Template Musicians BPM128

  10. DJ SHARPNEL - Inherited Soul (Original Mix)

Hammer Bros - Calling Enolagay
日本のハードコア・テクノ史において重要な役割を果たしたユニットHammer Brosが残した名曲の中でも特に強烈な印象を与える衝撃的な曲。冒頭に流れる音声を聴けば分るが、非常にシリアスなトピックを扱ったハードコア・トラックである。1997年にリリースされた『1to3for Hiroshima E.P.』という7"レコードにも収録。これぞジャパニーズ・ハードコア・テクノのクラシックといえる。
この曲については『ハードコア・テクノ・ガイドブック オールドスクール編』に収録されているHammer Brosのインタビューで本人達が語ってくれているので、気になった方はそちらもチェックして欲しい。

Sieste - Kitty Whip
日本では数少ない女性のハードコア・テクノ・プロデューサー/DJとして90年代に関西を拠点に活躍されていたSiesteが1997年に発表した某有名ブラジル・メタルバンドをサンプリングしたアグレッシブなハードコア・トラック。1997年に同名の12"レコードがKill The Restから発売され、数年後にドイツのスピードコア・レーベルWar Recordsからライセンス盤が発売されている。
『History of Japanese Hardcore Techno』ではハードコア・テクノとメタルの繋がりを掘り下げているが、Siesteの「Kitty Whip」はハードコア・テクノ/メタル両方のエッセンスを融合させられた素晴らしい曲であり、今聴いても凄まじいエネルギーを放っている。Sieste本人が「Kitty Whip」で使った機材などを『History of Japanese Hardcore Techno』で話してくれている。

The Speed Freak - I Otaku(Remix)
現在もハードコア・テクノ・シーンの最前で活躍しているドイツのThe Speed Freakが1996年に発表した10"レコード『Live In Japan』に収録されている日本語サンプルを多用した1曲。原曲は1995年に発表された名盤アルバム『For You』に収録されており、こちらはセルフ・リミックスされたものになる。
卑猥なセリフが高速ハードコア・ビートとレイヴ・シンセとミックスされたJ-Coreの始祖的な曲といえる。The Speed Freakが日本のハードコア・テクノに与えた影響はとても大きく、この曲を聴けばその意味が解るはずだ。『History of Japanese Hardcore Techno』では、初来日時のことからOUT OF KEY/Hammer Brosのレコードをリリースした経緯、そして日本のアニメに対する情熱も伝わる濃い話を聞かせてくれた。

Noize Creator – In Memory Of
インダストリアル・ハードコア~スピードコア~ブレイクコアの進化に貢献したドイツのNoize CreatorがYam Yam(OUT OF KEY)に捧げた1曲。2002年に12"レコードでリリースされているがデジタル化はされておらず、このCDの為にマスターを探して貰い収録させて頂けることになった。
日本の最初期ハードコア・レーベルBass2 Recordsとの親交が深く、後の関西ブレイクコア・シーンにも影響を与えているNoize Creator。この曲を聴けば、ブレイクコアがハードコア・テクノから派生していったというのが分かるだろう。
2002年に亡くなってしまったYam Yamは、Noize Creatorとスプリット・レコードをリリースしており、Bass2 Recordsのコンピレーションにも一緒に参加していた。彼等は似たようなビジョンを持ち、実験的なアプローチでハードコア・テクノに挑んでいたと思う。『History of Japanese Hardcore Techno』にて、Noize CreatorにはYam Yamへの想いも語って頂いていた。

DJ Lib & MC Shit B - It's Tight Like That (TRU-LIVE)
Hammer BrosのDJ TokyuheadことDJ Libと、Big The BudoことMC Shit Bのタッグによる後期KAK-Aスタイルを象徴するハードコア・トラック。Hammer Brosとは違ったRave色の強いダンサブルな曲となっており、PCPからの影響を独自に解釈している。2000年にはKAK-A Recから12"レコード『It's Tight Like That Remixes』が発表されており、LibrahとDJ Tactのリミックスが収録。現行のオルタナティブ・ハードコアともシンクロするものがあり、改めて注目すべき作品だ。
多角的に日本のハードコア・テクノを捉えるにおいて、この曲は欠かせない重要な曲である。

The Raverz Project! - Kiss Me Once Again (Breakbeats Azu-Mix)
DJ ShimamuraによるThe Raverz Project!の代表曲。UKハッピーハードコアを独自解釈して作り出したジャパニーズ・ハッピーハードコアのエターナル・クラシックだ。
ブレイクビーツの組み立て方、ピアノとレイヴ・シンセのフレーズ、ボーカルのエディットなどにDJ Shimamura節が既に出ている。The Raverz Project!として発表された作品は少なく入手困難であるが、どれも非常に素晴らしく色あせない名曲ばかりである。2000年代に展開されたJ-Coreと日本産UKハードコアの下地にはThe Raverz Project!の影響が大きくあるはずだ。
DJ Shimamuraは『History of Japanese Hardcore Techhno』で日本のハッピーハードコアの歴史、ファッションとの繋がり、ブートレグ・リミックスなどについて興味深い話を聞かせてくれた。

DieTRAX – Rotterdam
オランダのガバに対する強い愛とリスペクトが感じられるストレートなガバ・トラック。ブレイクビーツ・ハードコア~ピアノ・ブレイクス的な要素も微量に織り交ぜており、とにかく底抜けにアッパーで明るいDieTRAXらしさ全開の曲だ。様々なレコードから抜き取られた「ロッテルダム」のサンプルとガバキックの連打にガバのパンキッシュな側面と、DieTRAXのサンプリング職人的な拘りが表れている。
冒頭に使われている音声は1998年に来日したEuromastersの大阪でのライブを録音したものらしい。なんとかして日本のクラウドとコミュニケーションを取ろうとしているEuromastersの熱意に感動する。

DJ TECHNORCH - Complete Boss On Parade
数百のレイヴ/ダンスミュージック・クラシックをサンプリングしたDJ TECHNORCHの代表曲「Boss On Parade」のロングヴァージョン。2013年にリリースされた『変身 最​終​形​態 ~The Metamorphosis Final Form~』に収録。オリジナル・ヴァージョンに更に素材が足され尺が長くなっており、DJ TECHNORCHのデステクノ・サイドが強調されている。
「Boss On Parade」はJason Forrest(DJ Donna Summer)に激プッシュされ、海外のブレイクコア・シーンで驚異的な認知度を得ることになり、J-Coreの存在がブレイクコア周辺に広がるキッカケともなった。「Boss On Parade」は海外でのJ-Coreの広がりに大きく関わった曲であると思う。
「Boss On Parade」はハードコア・テクノであり、デステクノであり、ナードコアであり、J-Coreにも分類出来る。日本のエレクトロニックなダンスミュージック史における革命的な曲だ。

RoughSketch - Desktop Template Musicians BPM128
インダストリアル・ハードコアに特化した実験的なEP『BASSDRUM​:​File #7 』に収録されたダークなメロディとフィーリングに包まれた激重ハードコア・トラック。
Ophidian、The Outside Agency、DJ Ruffneckといったオランダのインダストリアル・ハードコア/ダークコアをRoughSkethcの優れたプロダクションとゴシックな世界観で解釈した日本産インダストリアル・ハードコアの傑作である。
RoughSketchの作曲センスは非常に個性的でレベルが高く、とても強いインパクトを残す。この曲においても独特なメロディが印象深く、ダークでヘヴィーウェイトなハードコア・トラックながらも聴きやすさがある。

DJ SHARPNEL - Inherited Soul (Original Mix)
『History of Japanese Hardcore Techno』のメインキャストの一人であるDJ SHARPNELによるオルタナティブ・フレンチコア。ビートのバリエーションが多く、トラディショナルなメロディを巧みに使ったフレンチコア・トラックでDJ SHARPNELの高度な技術が存分に発揮されている。ハードテックの活動で得られたエッセンスも上手く反映され、DJ SHARPNELにしか作れない曲となっている。
Soundtrack of〝History of Japanese Hardcore Techno〟の最後を締めるに相応しい過去と未来を繋いだ1曲だ。


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