見出し画像

Apocalypse 2020-2022 / Marc Acardipaneの記録

去年から徐々にヨーロッパやアメリカで大規模な音楽フェスティバルは再開していき、今年の春から夏にかけてはパンデミック前の勢いを取り戻すように各国で音楽フェスティバルが開催されるようになった。日本でも、もうすぐFuji RockとSummer Sonicが開催され、海外から多数のバンドが来日予定となっている。

オランダのハードコア・フェスティバルも今年に入ってから続々と開催され、ハードコア・ヘッズ達が巨大なスピーカーの前で爆上がりしている様子をSNSで頻繁に見かける。2020年と2021年はストリーミングのみでのフェスティバル開催であったので、二年分の鬱憤を晴らす勢いで沢山の人々が踊っているのを見るとこちらもテンションが上がってくる。

今年開催されるDefqon.1、Ground Zero、Harmony Of Hardcoreといった主要なハードコア・フェスティバルのラインナップには、いつものようにMarc Acardipaneのクレジットが見つけられる。Planet Core Productionを設立し、世界で最初のハードコア・テクノである「We Have Arrived」をリリースして30年以上の時が経過したが、Marc Acardipaneはその歩みを止めることなく進み続けている。今年7月から9月に掛けてドイツ、ベルギー、オランダ、イタリアのフェスティバルやクラブを回るツアーをアナウンスし、50歳を超えても現役バリバリに活動している。

今年5月には、ハードコア・テクノ史に燦然と輝く大名曲であり、ハードコア・テクノ並びにRaveミュージック/カルチャーのダークサイドを具現化したとも言える「Pitch-Hiker」のリミックス集がPerc Traxから発表されたのも記憶に新しい。Marc AcardipaneがPilldriver名義で1995年にリリースした「Pitch-Hiker」をGhost In The Machine、Perc、Sissel & Peder、そしてMarc Acardipaneがセルフ・リミックスしており、どのリミックスも原曲へのリスペクトが込められた緊張感のある素晴らしいリミックスであった。

コロナ過による世界的な自粛の中で、Marc Acardipaneは過去作の再発を進めながら新曲も発表していった。
テクノ・シーンで人気を得ているThe Mover名義では、DistantとCurrent 909のリミックスを手掛け、ドゥームコアのパイオニアと称される所以を解らせた。Dusty Angel名義では1993年にリリースしていた『Fuck All Ya!』のリマスターにアメリカの鬼才MC Sensationalをフィーチャーした新曲「Nervous Flight (You Can't Escape It)」を加えたEPを発表。フランスのレーベルRave Or DieのコンピレーションにはMarc Acardipaneとして参加。どの作品でも他の誰にも作れないMarc Acardipane節が効いた曲で我々を安心させてくれた。

パンデミック直前から始まったMarc Acardipaneの過去のクラシックを再発させるシリーズ『The Most Famous Unknown』はVTSS、Gabber Eleganza、Kilbourne、Perc、Nina Kravizによるリミックスを含め現在までに9枚の12"レコードが発表。
マニアの間で語られていた入手困難のレアな曲が『The Most Famous Unknown』シリーズによってどんどんリマスターされ、ストリーミングなどで簡単に聴けるようになった。他にも、1994年にNasty Django & DJ Cirilloとしてリリースした「Cocorico」が27年後に再びレコード化されるということもあった。パンデミック中ではあったが、その期間に多くの作品を発表したことによってMarc Acardipaneの独創性に多くの人々が引き込まれ、再び彼への注目が高まっている。さらに、Marc Acardipaneと並んで数多くのハードコア・クラシックを作り上げてきたMiroも再発シリーズ『Unforgotten Seasons S1』をスタートさせ、PCPとその周辺レーベルに対する評価も再考されてきている。

Marc Acardipaneの音楽は本当にジャンルレスであり、どんなタイプのリスナーでもエンジョイ出来る要素が多分にある。近い将来、日本でMarc Acardipaneのプレイが聴ける日を願って彼の素晴らしい作品をこれからも紹介していこうと思う。











この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?