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寝台列車旅、メコン川を越えてラオスへ。

寝台列車には旅人らしい味わいがあるような気がして、ずっと乗ってみたかった。しかもインドに行ってからというもの、飛行機でサクッと移動したり、観光客向けに整備された旅では満足できない体になってしまったようなのだ。

ただ、タイ人の友達から「タイの寝台列車に女ひとりでは乗るな」と念を押されていた。彼女の友達がレイプされたという、本当に心臓が縮み上がる話も聞いた。(しかもその子は窓から投げ出されたと聞いたが、タイの寝台列車の多くはエアコン付きの車両で窓は開かない様式だと思うから、真偽のほどは定かではない。だけどそんな話を聞いてしまったからには、怖くて怖くてひとりでは乗れない!)だから今回は、同じ大学に交換留学で来ている日本人留学生と女4人で行くことになった。

旅の始まりは寝台列車で。

今回乗ったのはバンコクの今の中央駅である「クルンテープアピワット駅」からラオス国境近くの街である「ノンカーイ駅」までの列車である。

インドでラジダニエクスプレスの列車に乗ったとき、予想を裏切る清潔さと丁寧なサービス、おまけの美味しいチャイに完全に拍子抜けしたことがあったが、今回も同じくらい快適な車両だった。女性子供専用車両を選んだことで他車両よりも段違いに静かで無臭(本当に!)で安心できる環境だったことがありがたい。あまりにも快適すぎて人との交流もなく、話のタネにもならないのは少し残念だ。

憧れの陸路で国境を越える。

お気に入りの写真。メコン川にかかるタイラオス友好橋を渡るバス。

これまた気づいたら「もうラオスなのか」というようにあっという間の出国、入国だった。ノンカイの駅では5歳くらいの小さな女の子を連れた台湾人の家族と写真を撮りあい同じくラオスに向かうことを話し、旅の始まりにわくわくしてきた。そういえばこの間見たハイパーハードボイルドグルメリポートの上出さんが仲野太賀とアラスカを歩く動画で、「どこから来たの?」と聞かれるたびに「Japan」ではなく「Tokyo」と答えていて、それが出身地への誇りを見せるようで格好良かったから次は私もそう答えたい。

出発の少し前に、私の大学で教えている先生が博士論文でタイ・ラオス国境貿易について書いていたという情報を仕入れ、こっそりオンラインで見つけて読んでいた。実のところその先生は体も声も大きくて人を軽くいじりながら笑いをとるスタイルがあまり私とそりが合わないから、あくまでもこっそり。

するとノンカイ駅から国境移民局に向かう途中で、大量のお菓子や食べ物を積んで同じ方向に向かうトゥクトゥクを見た。あれが先生が書いていたborder trader(国境貿易商人)だ!彼らはこの荷物を主にビエンチャン、たまにバンビエンやルアンパバーンのミニマート(地元のコンビニ代わりのお店)に運ぶのだろう。こういう紙の上の知識と現実が合致する瞬間が、人生で一番楽しい。本当に心が躍るのだ。

コンビニといえばつい最近、2023年9月7日にラオス初のセブンイレブンがビエンチャンの空港近くに開店したらしい。その国の中での一号店、絶対見に行きたいと思っていたけど、時間がなくて前を車で通り過ぎるだけになってしまったのはとても残念。開店から1ヶ月経った10月中旬でも、セブンの前には車が何台も停まっていてその人気ぶりは健在のようだった。

タイラオス友好橋を渡るときに初めてメコン川を見た。

その論文のほかに、「メコン川の命脈」(2020年製作)というドキュメンタリーを観てきた。メコン川沿いの街、タイ北部のチェンカーンに暮らす漁師の話だ。上流域のラオスと中国でダム建設が相次いで、その影響から日々水かさの増減を繰り返し漁獲量が近年劇的に減ったという。

ラオス国内の発電設備の72%が水力発電である。(JICA, 2018) 他に主要な産業がないラオスはメコン川を使って水力発電を行い、それを周辺国に売ることで外貨を獲得し7%前後の経済成長を実現しているそうだ。(日経新聞,2019

このドキュメンタリー内で水かさの増減に関係するダムとして名前が一番に挙がっていた「サイヤブリダム」からは、タイも電力を輸入している。タイとしては、環境負荷の少ない持続可能な発電方法で作られた電力使用量を増やすために近年ラオスからの電力輸入量を増やしている。(Bangkok Post, 2023

そんなことに思いを馳せながら、メコン川を渡った。

ノンカイ駅のトイレにはタイ語、英語、ラオス語での表記があった。
ノンカーイのタイ出国移民局にて。リエントリーパーミットと書かれた窓口はあったが、開いていなかった。
やはり事前に取得してから行った方が良い。

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