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ミュージカル『ミス・サイゴン』北海道公演(1)

2020年の公演中止から、ようやくこの日を迎えました。2022年10月7日〜10日の全6公演が、無事に終演。この後続くツアー公演の開幕を祈りながら、キャスト別の感想や公演日ごとの違い、気づきなど、綴っていきます。

私が観劇したのは、全マチネ公演の3公演。当初、帝劇での観劇も予定していて、そこで屋比久さんを観劇しようと思っていたので、屋比久キムを観劇できなかったのが心残りではあります。

1.ざっくりの感想

『ミス・サイゴン』は、ずっと観ることを躊躇っていた作品でした。ちょっと観てみようという作品ではなく、覚悟がいると感じていて。それでも、今期は、海宝さんがクリス役となり、観劇を決めました。

最悪な物語で最高のパフォーマンス。端的に言えば、こんな印象で、最高の音楽を最高のパフォーマンスで体感できました。

そして、私の観たキャストは、どのキャストもそれぞれがキャラクターを掘り下げ、役を生きていることが伝わり、演劇の多面性や奥行きが存分に感じられました。キャストの組み合わせで、様々見比べてみたくなります。3公演で、キムは全て昆さんでしたが、クリスやトゥイが変わると、昆キムにも変化があって、本当に演劇は面白いし、観劇の醍醐味を感じました。

また、カンパニーの結束力が強く伝わりました。歌声の厚みや群舞には、身体が熱くなって涙が込み上げ、久々のグランドミュージカルに心が震えました。

2-1.キャスト別感想

❇︎昆キム❇︎  少女から母への変化が見事。観る側の心を掻きむしるような歌声、涙を拭いながら、懸命に自分の生きる道を進むキムでした。昆キムから感じたのは、キムにとってのキーワードとしての『夢』と『嘘』。『夢』は、何度も歌詞に出てきて、クリスと出会って以降、その夢が完全に叶うまで(クリスとタムと共に暮らすこと)何も疑わずに夢を信じ続けた。一方で、『嘘』は、クリスと初めて夜を共にした後に、クリスから、初めてなんて嘘だろう、女は皆ここから逃げたくて嘘を言う、と言われ、キムが強く反発する場面でのワード。キムが、故郷を焼かれ、両親を殺され、必死で逃げて来たことをクリスに打ち明ける。また、キムを探しに来たトゥイに対し、キムが嘘はつけない(もうクリスと結婚していて、あなたの許嫁ではない)、と毅然とした態度でトゥイにNOと言う場面もありました。いくらエンジニアに上手く立ち回れ!と言われても、キムは自分にも他人にも嘘はつけない、と一貫しています。このキムの一途さが、物語のエンドレスな悲劇性を色濃くしている、と思います。

❇︎駒田エンジニア❇︎  どうしようもなく憎めないキャラクター。レミゼのテナルディエを思わせる、駒田さんの間合いや緩急がエンジニアにフィットしていました。バンコクでの場面では、それぞれのエンジニアが客席やオーナーと自由にやり取りしていましたが、駒田さんは小気味いい感じ。安定のエンジニア像に思えました。

❇︎伊礼エンジニア❇︎  個人的に一番好み。猥雑さや色気、残酷さが混ざり合って、周りの人を巻き込むタイプのエンジニア。♪アメリカン・ドリームでの物悲しさが、強く印象に残りました。

❇︎東山エンジニア❇︎  身のこなしが美しく、自分流のやり方にこだわりが強そうなエンジニアに感じました。また、気のいいチンピラ感というか、人間味もあって。オープニングの「ウェルカムトゥー、ドリームランド!!」がゾクっとするカッコ良さでした。

(2)へつづく

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