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はなればなれの君へ から読み解くすずの成長

竜とそばかすの姫はミュージカル映画ではない。
今月発売のSWICHにて細田守監督自身が語った言葉だ。
ミュージカル映画ではないということはどういうことか、
近年のディズニー作品を代表として、キャラクターが自身の感情を歌で即興で表現するような、そういうジャンルではないということだ。

本編中に、即興性がでてこないというところに注目してみると、すずが制作した歌の意味が違って見える。

一番注目したのは最後の劇中歌、すずがアンベイルされた自身の姿で竜へ向けて歌った(はなればなれの君へ)だ。

私はこの歌は純粋に、すずが竜を想って作った、と思っていたが、忍くんが伴奏を流し始めたところを思い出して気がついた。ああこの歌は、すずが竜と出会う前に恐らく作った曲なのではないかと。
だとすれば誰に向けて作った曲なのか。

臆病と不安 縛られるけど
強く優しく なれたなら
あの空は もどらない
ひとりでは 生きられない
あいたい もう一度
胸の奥 ふるえてる
ここにいるよ とどいて
はなればなれの 君へ

あの空は、母が亡くなるまで大好きだった夏の空、
もう一度会いたい母へ向けて作った曲なのではないかと思った。

目を閉じた時にだけ
会えるなんて 信じない

恐らく亡くなってから夢に出てくる母、現実ではもういないことを信じられなかったすずの気持ちだ。

母を想って作った曲は、竜との関係性とも深く通じるものがあった。

目を閉じた時にだけ会えるのは、仮想世界Uでも同じこと、現実世界で竜に会うことを願うすずの想いとシンクロする。

母とすずの関係から生まれた歌が、竜とすずを繋ぎ止める歌に変わった瞬間だった。
すずにとっての歌を歌うことの意味が、母に聞いてもらうことから、誰かに届けるためと、決定的に変わった瞬間でもあった。


#竜とそばかすの姫
#細田守監督
#歌

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