見出し画像

ただただ親友との想い出を振り返る回



完全にただの日記。


わたしは今「 SANCHACO 」という

三軒茶屋にあるコワーキングスペースにいる。


フリーランスと名乗ってから

スタバを中心にカフェで作業をしていたのだが

カフェ代だけで8月は2,3万かかった。


ひとつのカフェに長くいると集中力が落ちてくるし

お店にも申し訳ない。


なので1日に4件くらい回ることもあって

スタバの One More Coffee を駆使しても

1日あたり1,000円前後かかる計算だ。


だったらレンタルスペースとかコワーキングを使った方がいいな

ということで見つけたのが、ここだ。


SANCHACOは

「 ねこと暮らす。ねこと働く。」

のコンセプトのもと賃貸住宅とレンタルスペースを兼ねている建物で

わたしの向かいで今、1匹の猫がこちらの様子を窺っている。



安心してくれ。変なやつだけど危害は加えんよ。



もともと動物全般が好きではあるのだけれど

どちらかと言えば猫より犬派だ。

いや、だいぶ犬派だ。


猫ももちろん可愛いけれど

猫は一人で生きていけそうだし

人を小馬鹿にしているような気がする。


ほらね、今もわたしの方を見て

おまえ、何がんばってんの?

みたいな目でスカしてくる。


その悠々自適さも含めて猫の可愛さなんだとは思うけど

それ以上に犬の「忠実さ」がわたしは好きだ。


犬の献身性、家族愛たるや

昨今の日本人に足りないものを

彼らは兼ね備えているのではないか。


今の日本人に献身性や家族愛が足りないかは知らないし

とりあえずわたしが猫より犬が好きなことを伝えたところで

本題に入りたい。




こんなわたしにもありがたいことに友人がいて

特に仲がいい友人のことを親友と呼ぶのであれば

何人か、その顔が浮かんでくる。


猫の顔を見たときに

「そう言えば、あいつも動物好きだよな」

と思い出した「ある親友」のことについて


よくわかんないテンションになってきたけど

書いてみたいなと思う。


✏️__________


彼とは、社会人3年目のときに出会った。


わたしは新卒で入社した会社を2年で辞めて

建設資材を扱う専門商社に転職したのだけど

わたしより半年先に、そこに転職していたのが彼だった。


彼は新卒で大手キッチンメーカーに就職するも

軍隊を思わせる異常な営業スタイルに嫌気がさし

精神を整えるため北海道の美瑛町で数ヶ月農作業を行ったのち

専門商社に転職する、という異色の経歴を持っていた。


同い年ということもあって早々に仲良くなり

家も歩いて数分と近所だったため

週2ペースで飲みに行き

月1は合コンをした。


ベンツが止まっているパーキングの棒で逆上がりをしたり

路上で「札幌さいこぉ〜〜〜!!!」と叫び出したり

酔うと制御が利かない彼と飲む酒は

大変だったけど楽しかった。


そして、とある合コンが開かれた際に

彼に負けないレベルでファンキーな女がやってきた。


二次会のカラオケで

「ぜんぜん飲めるっしょ〜!!」と言いながら

全員のグラスにワインを注いでいく女。


わたしも彼も、当時はそこそこ飲める方だったと思うが

開始30分で致死量を超え、ゲロを吐いた。


戻ってきたわたしたちに

「吐いたの?ギャハハ!ウケる!まだいけるっしょー!」

と理解できない言葉を放ちつづける女。


結局、その日は4次会まで飲み続け

今もなお、わたしの1日の嘔吐量のギネス記録となっている。


そして翌日、病院送りレベルの二日酔いを抱えながら

前日の合コンのことを振り返り

「あいつが結婚する相手は、あの子かもな」

と思った。


いや、もっと正確に言うなら

笑いながら致死量のワインを注ぐ彼女の無邪気さと豪快さに

「んっ?」と何かを感じていた。


他の参加女性もみんな素敵な女性ばかりだったし

もっと言えば、それまでに合コンは何度もやっている。


だけど、そんな感覚になったのは

その「ファンキー女」が初めてだった。


わたしの大事な親友ちゃんとファンキー女


その後、紆余曲折いろいろあったのち

わたしの予感は見事に的中。


二人は付き合い、数年後に結婚した。


💒___________


人生で一番楽しみな結婚式だった。


誤解してほしくないのは、どの友人の結婚式も楽しみだし、友人に序列なんてない。


だだ、単純に共に過ごす時間が長かったし

なにより、彼らの「出会い」から見てきたのだ。


そんなことは初めてだったから

結婚式の前日はワクワクしてなかなか寝れなかった。


寝れなかった原因がもう一つあって

わたしは彼から「余興」をお願いされていた。


結婚式があったのは今から5,6年前なんだけど

当時、すでに余興をする結婚式は珍しかった。


彼から「余興してもらいたんだけどさ」と聞いたとき

「え、今どき余興やんの?」

と思ったし

「やべぇ。大役じゃん!」

と、嬉しくもあった。


そこから色々考えた結果

・彼らのパーソナルな部分が伝わること
・わたしにしか出来ないネタをやること
・絶対に盛り上げること

という指針を立て、会社の後輩を一人巻き込んで

「なかやまきんにくん」と「サバンナの八木さん」がやっていた

「健康ボーイズ」のパロディをやることにした。


当時、別に流行ってもいなかったし

「あー、見たことあるわ」

くらいの認知度だったと思う。

(きんにくんと八木さん、ごめんw)


ネタを簡単に説明すると

「問題。筋トレの種目のうち、大胸筋を中心に上腕三頭筋や…」

「ベンチプレス!」

「正解」

みたいに「筋肉に関するクイズを筋肉自慢の男が食い気味に答えていく」ところが笑えるネタだ。



札幌の白石にあるバーガーキングで

YouTubeに違法アップロードされたネタを見ながら台本を作り

本番の1週間前に後輩と稽古をした。


土曜の朝10時、誰もいない会社の会議室で

当時、会社の後輩だった現在の弊嫁に、オーディエンス兼監督になってもらい

指摘を受けながらネタの精度を高めていった。


そして、結婚式当日。

余興はトリの前、つまり両親への手紙の前に予定されていた。


「緊張してても仕方ねえ!」

ということで、普通に楽しみながら酒を飲みまくった。


わたしは緊張しやすいタイプなのに、この時は不思議と緊張していなくて

純粋に楽しんでいたし、心から「おめでとう」と思いながら過ごしていた。


式では、酒好きな彼ららしく鏡開きをしたり

… あれ?あとはほとんど忘れたけど(ごめん笑)

あっという間に余興の時間になった。


後輩と二人、監督に一礼をしてからマイクスタンドのもとに向かい

「俺はEくんと入社以来の付き合いだからね」

「いや、僕だって直属の後輩ですよ」

「いやいや、さすがに俺の方がEくんについては詳しいよ」

「何言ってるんですか。僕の方が詳しいですよ」

「え、じゃあこれからEくんに関するクイズを・・・」


予定どおり、自然とネタに入った。


hiko:「問題。Eくんが勤務する会社で、大事な会議を欠席してまでプライベートのゴルフに行ってしまったのは誰?」

後輩:「支店長」

hiko:「正解」


この辺でまわりが気づき出す。

あれ?これ、もう始まってんじゃね?

ざわざわ。


後輩:「問題。その支店長は今日、乾杯の挨拶において…」

hiko:「緊張していた」

後輩:「正解」


まずは、支店長を徹底的にいじる。


hiko:「では、支店長が最近気になっている社内の問題といえば?」

後輩:「Tさんの机が汚ない」

hiko:「正解」


先輩も、適度にいじる。


後輩:「では、そのTさんに次いで机が汚ないと言われている人物は?」

hiko:「Eくん」

後輩:「正解」


矛先を、新郎に向ける。


hiko:「では、そのEくんと私が合コンに行った際、初対面にも関わらず、2時間以上に渡ってワインの一気飲みを強要してきた女性は」

後輩:「Uさん」(新婦の名前)

hiko:「正解」


新婦に、飛び火させる。


後輩:「では、そのUさんを見たときのEさんの第一印象は?」

hiko:「この子と結婚するかも」

後輩:「正解」


裏話も入れておく。


hiko:「では、新婦のUちゃんがこの式に向けて取り組んだ、最大限の努力とは?」

後輩:「脂肪吸引」

hiko:「正解」

後輩:「しかし、効果は?」

hiko:「なかった」

後輩:「正解!」


新婦の顔を見る。笑っているから、問題はなさそうだ。


hiko:「では、Uちゃんの晴れ姿を誰よりも楽しみにしていた、Uちゃん一家の大黒柱といえば」

後輩:「〇〇!」
※お父様のお名前(呼び捨て)

hiko:「正解」

後輩:「では、そんなお父様は今日、お酒を…」

hiko:「若干、飲み過ぎている!」

後輩:「正解!」


結婚式の主役は新郎新婦と、ご両親だ。


hiko:「では、そんなお父様に次いで、この式を楽しみにしていたEくんの親友と言えば?」

後輩:「hikoさん!」

hiko:「正解!」


この辺から、締めに入る。


hiko:「では、その僕が二人から結婚の報告を受けたときの感想は?」

後輩:「とっても嬉しい!」

hiko:「正解。でも本当は?」

後輩:「飲みに行けなくなって寂しい」

hiko:「正解!」


何回も、健康ボーイズの動画を見て、練習したのだ。

クライマックスに向けて、テンポも間合いも完璧だ。


hiko:「頑固で不器用なEくんですが、持ち前の優しさとユーモアでUちゃんを必ず幸せに…」

後輩:「してくれます!」

hiko:「大正解っ!!」


会場から拍手が沸き起こった。

想定外だった。

少し落ち着くまで、後輩と目を合わせながら待つ。


hiko:「Eくんがいつも僕たちを笑わせてくれるように、これから二人が笑顔の絶えない、最高の家庭を築いていくことを」

後輩:「僕たちが保証します」


そのとき、新郎の姿が視界に入った。

彼はこちらを見ながら、泣いていた。


hiko:「二人に出会えて、こうして、二人の最高の瞬間に、この場に立つことが出来て、本当に、、、」


まずい。

声が出てこない。

次のセリフは「幸せに思います」だ。


言えない。

涙が止まらない。



「幸せに、思います」


なんとか絞り出した。

でも、次のセリフも俺だ。

俺が言わな。


「二人の、これからの人生に、、、」


また、詰まる。


会場の、見知らぬ新郎新婦の友人たちが

「がんばれー!」

と叫んでいる。




呼吸を落ち着かせて、声を絞る。


「二人の人生に、たくさんの幸せが訪れることを」


この一文を言い切るのに、30秒かかった。



「僕たちは願っています」

後輩が笑顔で締めて、わたしたちの余興が終わった。



改めて、新郎を見た。

彼もまだ、泣いていた。

彼は、その後の締めの挨拶でも泣いていたし

ずっと泣いていた。



この日はわたしにとって、一生忘れない

かけがえのない1日になった。



ファンキーな新婦は「恐怖のワイン事件」で見せた無邪気な笑顔を浮かべながら

「なんで、あんたたちが泣くんだよ!ありえなくないー!?」

と最後まで笑っていた。


✏️__________


2年後、彼は会社を退職し

生まれ故郷の愛知県に夫婦で帰って行った。


最後の日

フェリーに乗る彼らを見送りに

弊嫁と共に苫小牧まで向かった。


そこそこ寂しくはあったが、初めて見る大型船の衝撃が強く

気づけば、「またね」くらいの感じで彼らは旅立った。


そして、その1年後にわたしたちも結婚し

その2年後、東京に進出した。


東京は北海道よりも遥かに愛知へ行きやすく

最低でも半年に一回は、彼らの娘に会いに

新居に突撃している。


それが、今週の土曜日に控えている。

楽しみが過ぎる。



ちなみに、この余興の話を彼としたことはない。

ありがとね、よかったわ、くらいの会話はあったと思うけど。


正直、大の男が二人

余興を依頼した側とされた側で泣くって

恥ずかしい。


こうやって書く分にはいいが

対面で掘り返されるのは

そこそこしんどい。


なので、きっと、話したり、書いたりして思い出すのは

これが最後になると思う。


こんな長い文を最後まで読んでくれたあなたの

心の中にそっとしまっていただけるとありがたいです(笑)


ということで、行き当たりばったりな日記でした!

Bye!!

台本より
監督より

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?