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ポケットモンスター スカーレットの面白さについて考察してみた

『ポケットモンスター スカーレット』をプレイしました。


ポケモン初のオープンワールドということで、「ポケモンの世界をコライドンに乗って飛び回り、各地のポケモンを捕まえてポケモンとの絆を深めていく」という体験はやっぱりポケモンならではの楽しさがあるなぁと感じました。

総評的に面白いと思ったところをまとめつつ、気になったところは深掘りして考察してみようと思います。
(若干のネタバレを含みます)

フィールド探索

なんと言っても、今回はポケモン初のオープンワールドなので、まずはフィールド探索について感想をまとめたいと思います。

「これは自分の冒険だ」を強く感じる仕組み

ゲームの序盤、「3つの目的を与えられ、それを選ぶ」という体験が「これは自分の冒険だ」という感覚を強く感じられて、とても良いなと思いました。

まず前提として、今回のゲームの大きな目的は、以下の3つがあります。

  • 各地のジムリーダーを倒す

  • 各地のヌシを倒す

  • 各地のスター団のアジトに行ってチームボスを倒す

ゲームの導入が終わり、テーブルシティを出ていざ冒険を始めよう、という時に、プレイヤーはこれら3つの目的を課されます。
最初にジムリーダーを倒しに行ってもいいし、ヌシを倒すことから始めても、自由にルートを決めていい。

複数の目的を与えられている中で、パルデア地方をどう探検するかを自分で決めた上で動くというプレイのさせ方が、「これは自分の冒険だ」という感覚を強く感じられてとてもいいなと思いました。

オープンワールドといえど、「マップが広くて行く先々で色んなサブクエを与えられるが、大筋としては1本道を歩かされている」という感覚を持つゲームもあります。
こういったゲームは、色々やらされるけど結局は誘導されている感が強いので、自分で行く道を選んで冒険をしている、という感覚は薄いですね。

対してポケモンSVは、ゲーム開始の1番最初から大目的を3つも与えられて、「よし、俺はこのルートを通るぞ!」と覚悟を決めてからゲームを進めるので、「自分の冒険を進めている」感覚がとても強かったです。(新鮮な体験でした)

ただし、最初から選択肢を多く与えすぎると「どれから始めれば良いかわからない」となり、逆に行動を阻害してしまうことが考えられます。
しかし、ポケモンではこれまで過去作で「各地のジムリーダーを倒す」がプレイヤーに浸透し切っていると思うので、プレイヤーからは「ジムリーダー的なものが3つあるんだな」という認識のされ方をしたんじゃないかなと想像しています。
なので、選択肢が多すぎて行動が阻害されることにはならなかったはず。

そのうえ、テーブルシティを出る時は

ネモから「ジムリーダーを倒すんだよね!?」
ペパーから「いや、俺と一緒にヌシの調査に行くよね!?」
カシオペアからスター団についての情報を提供される

と直々に具体的な勧誘をされるため、興味が湧いたものをとりあえず行ってみようかなという気持ちになります。



コライドンの成長=世界の広がり

今作はコライドンに乗ってパルデア地方をあちこち冒険するゲームなわけですが、「コライドンの成長」と「世界の広がり」がリンクしていました。

最初はコライドンができることは移動とジャンプのみで、このアクションだけでは行ける場所が限られていました。

そのため、崖の中腹に出っ張った足場にモンスターボールを見つけるものの、ジャンプでは届かないから上から落ちるしかなくて、でもちょっと角度を間違えるとその足場には着地できなくて、最初は「なんでこんなところにモンスターボールなんか置いたんだ・・・」と不満を感じながら冒険を進めていました。

絶妙に届かない

ところが、レジェンドルートを攻略することで、コライドンのアクションは徐々に解放されて大ジャンプできたり滑空できるようになります。

その結果、今まで届かなかった足場に届くようになり、モンスターボールを拾えるようになったことで、「今まで行けなかった場所に行ける!」と、世界の広がりを感じることができました。

さらに、最終的には「がけのぼり」ができるようになったことで、パルデア地方すべての場所に行くことができるようになりました。
その結果、山の頂上に到達することを可能にするので、この世界がどういう地形なのかを見ることができ、「今まで見ることのできなかった壮大な景色を眺められる!」と、世界の広がりを感じることができました。

世界の広がりとは言っても、行けるエリアが広がるといった地図上の広がりは無いですが、「高いところや届かなかったところに行くことができるようになった」や、「今まで見れなかった景色を見ることができるようになった」ことで世界の広がりを感じることができて、こういう世界の広がりの感じさせ方もあるのかと感心しました。


バトル

テラスタルで駆け引きが奥深くなった

バトルに関しては、何と言っても新要素のテラスタルが駆け引きを奥深くしており、面白さを増していると感じました。

テラスタルの仕様

  • 「テラスタル」すると、ポケモンのタイプを変えることができる。

    • すべてのポケモンが18種類タイプに変化可能

  • 「テラスタル」後、元のタイプと同じテラスタイプだとタイプ一致が1.5倍→2倍になる

テラスタルは、ポケモンバトルというゲーム性がずっと抱えている以下のような状況・課題を解決するために生まれた仕様だと想像しています。

  • ポケモンのパラメータ、手持ちアイテム、とくせいなど、バトル開始前に色々準備するものはあれど、こうかばつぐんを与える/与えられるかで勝敗が大きく左右する。

  • そのため、バトル中にタイプ相性が良い技を繰り出してこうかばつぐんを与えられるかどうかを考えるのがゲームのメインである。(=タイプ相性が肝)

  • 対人戦においては、相手の手持ちポケモンが事前に分かってしまうと、タイプ相性・すばやさ・技の威力を想像してバトル開始前に勝敗予測がある程度ついてしまう。

    • 負けると分かっててバトルをするのは面白くない。

    • バトル中に起死回生の1発、何か勝敗をどんでん返しできる要素によって、バトルが終わるまで勝敗の行方が分からない、面白いバトルを実現したい。

テラスタルによってバトル中に1回、お互いのタイプを変化させるチャンスを設けることで、バトルの展開がチャンスにもピンチにも転がるという面白い体験をすることができるようになりました。

その上で、テラスタルによってちゃんと体験の波が大きくなるように、「タイプ一致技なら威力が上がる」仕様を入れることで、「ここでテラスタルをすればタイプ相性が良くなって一発逆転できるかも!?」「ここでテラスタルすれば威力が増して大幅リードできるかも!?」と、バトルがより盛り上がるようになりました。

テラスタルの「タイプ一致技なら威力が上がる」仕様は、バトル中の駆け引きとしては、以下のように整理できます。

  • ローリスク・ローリターン:テラスタルによってタイプを変化させると、元々の弱点タイプを無効化できるが技の威力は変わらない

  • ハイリスク・ハイリターン:テラスタル後に元々のタイプと同じタイプだと技の威力が2倍に上がることで相手を倒せる可能性が上がるが、タイプが変わらないので相性の良い技を出されて倒されてしまうリスクがある。

テラスタルによって「タイプを変えて勝ちに行くか、タイプはそのままで威力倍増で勝ちに行くか」を考える遊びが生まれて、バトルの駆け引きが一段奥深くなりました。


ジムリーダーとのバトルがシビれる!

ジムリーダーのバトルはBGMとの連なりがすごく印象的で、心に残る演出でした。

ジムリーダーとのバトルBGMは、4つのシーンで構成されています。

  • バトル前

  • バトル開始

  • 最後の一匹

  • バトル終了

掛け声で音頭を取るバトル前BGMから、一気にリズムが速まりビートが刻まれるバトル開始への切り替わりは、「これからバトル開始だ!!」と気持ちが高まらずにはいられません。

そして相手のポケモンを一匹ずつ倒していき、最後の一匹になったその瞬間、BGMが切り替わってクライマックスに。

剣盾の時は、クライマックスではシンプルな観客の掛け声でしたが、SVでは観客みんなが歌い出すという、バトルのクライマックスを盛り上げる演出がさらに進化しています。

自分が大勢から注目を浴びながらジムリーダーとポケモンバトルをする高揚感が更に高まる演出です。

そして無事にジムリーダーを倒してバトルが終わると、いつもの聞き慣れたあのバトル後のBGMで迎えてくれるため、とても安心感が漂います。

バトル中のBGMで最高潮まで高めてくれて、バトル後のBGMで無事着地させてくれるような、安心感です。

この一連のジムリーダー戦の体験は個人的には極上のポケモンバトル体験でした。


気になったところ

プレイしていて、「ここはもうちょっとこういう感じだったら良かったんじゃないかなぁ」と思ったところをいくつか挙げます。

コサジの灯台から見たパルデア地方は世界の広さを感じられなかった

コサジの灯台でペパーを倒したあと、灯台の上に登ってネモと一緒にパルデア地方を見渡すシーンが流れます。

この時、正直僕は「広い世界だなー!どんなポケモンがいるのかな」とワクワクするまではいきませんでした。

オープンワールドゲームである以上、序盤で世界の広がりを見せて、「この世界を自由に歩き回ってみたい!どんな世界なんだろうなー」とワクワクしてもらうことは超重要だと考えています。

他のゲームで、僕が1番世界の広がりを感じられたのはこれです。

もちろんブレスオブザワイルドの世界とパルデア地方ではそもそも広さが違います。

とはいえ、ここまでカメラを引いてくれれば、もう少し世界の広がりを感じられたのかなと思いました。

そして、やはりポケモンなので、世界の広がりを見せると同時に、「この世界にはどんなポケモンがいるんだろう!ワクワク」という、ポケモンを捕まえに行きたくなるような見せ方も大事だと思いました。

空を飛んでいるポケモンをちら見せしたり、群れで移動している姿をちら見せたり・・・
少しでもポケモンの姿を見せてくれると、「あのポケモンをいつか捕まえたいなぁ!早く色々歩き回ってみたい!」という気持ちにより一層なったのかなと思います。


初見だと取り方が分からないアイテムの置き方

オレンジアカデミーを出てフィールド探索をし始めの頃、アイテム探しに奔走していたのですが、その時に「ジャンプでは届かないし、ぐるりと遠回りして高台から降りれば行けなくはない」場所に置かれたアイテムを見つけました。

その時僕は「これわざわざ遠回りして取らないといけないのか~しかもジャンプして着地ミスると面倒だなぁ」と思いつつアイテムを取ったのですが、その労力の割には嬉しくないアイテムだったのを覚えています。

これが、コライドンのアクションが解放されて「大ジャンプ」や「がけのぼり」ができるようになると、余裕でアイテムを入手することができます。

おそらく「このアイテムを取りたいなら、コライドンのアクションを解放してね」というメッセージが込められたアイテム配置だったのかなと想像したのですが、

ただ、「コライドンのアクションが解放されないと届かない」ということに気づくのが初見だとヒントが無くて、アイテムを取れなくて悲しい上に「アクションを解放しにいくぞ」という目標にもならないので、もう少しヒントがあると良かったのかなと個人的には感じました。
(しかも、コライドンの初期アクションだけでもギリギリなんとか届きそうなところに置いてあったので・・・)

改善案を考えてみましたが、例えば

・ジャンプしても絶妙に届かない高台にケガをしたポケモンを置いて、低い所にその飼主を置く。
・飼い主はケガをしているポケモンを下まで降ろしたいが、高い所にいるので行けないと困っている。
・プレイヤーは飼い主を助けようとジャンプをするが、ジャンプしても絶妙に届かない
・飼い主と話すと、飼い主は「その乗り物ポケモンでも届かないのか、うーんそのポケモンが壁伝いに登ってくれれば届くのかなぁ・・・」と話す。

こういう体験を序盤でさせることによって、「今は届かない高い場所には、壁伝いに登れるようになれば行けるのか・・・!?」と思ってくれます。


草むらにいるポケモンが小さくて意図的じゃないエンカウントが多発する

今作はオープンワールドで広いマップなので、コライドンで颯爽と走り回るだけでも気持ちよくて楽しい体験です。

ただ、「ここはささーっと走って行けるな」と思った草むらをダッシュで走っていたところ・・・急にポケモンとエンカウントしてバトルが始まる、という体験が結構な頻度で置きました。

一見何もポケモンがいない草むら
急にポケモンとエンカウント!

これは野生ポケモンのうちいくつかのポケモンのサイズが小さすぎて草むらに隠れてしまい、プレイヤーのカメラからはあまり見えなくなってしまうのが原因かなと思います。

颯爽とダッシュで草むらを突っ切りたいのに、意図しないタイミングで急にエンカウントすると、ちょっとイラっとしてしまいますね・・・。

特にフラエッテとかミニーブとかタマゲタケとか・・・。

これは流石に小さすぎて普通の花かと思った・・・

個人的には、野生ポケモンの大きさは『Pokémon LEGENDS アルセウス』くらいの大きさがちょうど良かったなと思いました。


ジムリーダー戦でワクワクしなかったところ

ポケモンバトル中のBGMはすごくワクワクしたのですが、ワクワクしなかったところも2点ありました。


①ジムリーダーバトルに至るまでの体験

ポケモン剣盾と比較した時に、ポケモンSVの「ジムリーダーバトルに至るまでの体験」はあまりワクワクしませんでした

なぜワクワクしなかったかというと、「物理的な構造による、感情を最高潮へ高めるまでの体験の流れがなかった」からです。

ポケモン剣盾では、「建物の最奥にジムリーダーがいて、そこに至るまでにトレーナーバトルやミニゲームを攻略する」という構造となっていました。

剣盾の場合、受付があり・・・
受付を抜けると・・・
奥にはジムチャレンジエリアが広がる

徐々に奥に進んで、物理的に最奥に近づいていくこと自体が、ジムリーダーとのバトルが徐々に近づいていくこととイコールになるので、徐々にテンションを高めることができました。

そして最奥に到達してジムリーダーとのバトルが始まった時にテンションが最高潮になります。

暗い道を抜けると・・・
大勢の観客の間を通り・・・
待ち構えるジムリーダーと対峙する!

この「なかなかリーダーのところにたどり着けない中でやっとリーダーと戦える」といういよいよ感がワクワク感に繋がっていたのだなぁと感じました。

また、1つの建物でミニゲームやジムリーダー戦を完結させることで、「ジムリーダーがすぐそこにいるのは分かっているのに辿り着けないもどかしさ」といった感情も沸き起こり、それがいよいよ感・ワクワク感に繋がっていると思います。

対して今作では、「ジムリーダーバトルに至るまでの体験」の流れは以下のようなものでした。

街に着く→受付で手続き→ミニゲーム→受付に戻る→ジムリーダーバトル

ジムリーダー戦を行う専用の建物に入るわけでもなく、ジムリーダー戦に至るまでに物理的な距離があるわけででもありません。

そのため、「徐々にワクワクが高まってジムリーダーとのバトルで一気に最高潮に!」という体験は得られませんでした。

また、ジムリーダーとバトルをするステージも、(街に着いて探索をしていれば)ジムリーダー戦をする前に見れてしまうので、バトルを始める前に「どんなステージでバトルをするのかなぁーワクワク」という感情が湧きづらかったです。


②ステージの舞台演出

2つ目は、ステージの舞台演出です。
今作のジムリーダー戦は、ほぼ屋外ステージでした。

そのためもあってか、ジムリーダー戦のステージに対してはワクワクを感じづらかったです。

ステージについてもポケモン剣盾と比較してみます。

▼ポケモン剣盾(屋内ステージ)

  • 屋内ステージ

    • 光の装飾

      • スポットライトがトレーナーに向かって当たることで、大勢の注目を浴びながらポケモンバトルをする高揚感がより高まる

    • 壁の装飾

      • ジムリーダーのテーマに沿った色の模様やアイコンを配置することで雰囲気の違いを多く感じて、ジムリーダーごとの個性を感じる

      • 観客がステージを1~3階席までぐるりと取り囲んでいることで、会場の熱気を感じる

    • 床の装飾

      • ジムリーダーのテーマに沿った色の床を配置することで雰囲気の違いを多く感じて、ジムリーダーごとの個性を感じる

ジムリーダーによってぱっと見のステージの雰囲気が異なる

▼ポケモンSV(屋外ステージ)

  • 光の装飾

    • 屋外のため、ステージ内もステージ外も明るさが均一

    • スポットライトに当たっているわけでもないので、高揚感は高まりづらい。

  • 壁の装飾

    • 壁が無い。見えるのはステージ外の建物や空のため、雰囲気の違いを感じられず、ジムリーダーごとの個性を感じづらい。

    • 広い空が見えることで、殺風景に感じてしまう。

  • 床の装飾

    • ジムリーダーのテーマに沿った色の床を配置することで、ジムリーダーごとの個性を感じる

野外ステージが多いため空がバックにあり、パッと見の印象が同じに見える

上記のように、ポケモンSV(屋外ステージ)では光の装飾、壁の装飾、床の装飾という観点で、どうしても「ジムリーダーとバトルしてるんだあぁ、ワクワク!」という高揚感を高めるような演出がポケモン剣盾(屋内ステージ)に比べて薄い印象でした。

BGMがとてもテンションが上がるものだっただけに、BGMの切り替えに合わせて光の装飾が変わって空気感が変わる、という演出があれば最高の体験だったなと思いました。


以上、『ポケットモンスター スカーレット』をプレイしての色々な考察でした。

オープンワールドの世界を駆け巡りながら各地の様々なポケモンに出会い、ポケモンと成長するという物語はとても楽しむことができました。
(洋楽が好きなのでエド・シーランの曲が流れた時は感動しました)


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