【書評】USJを劇的に変えた、たった1つの考え方
『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』という本を読みました。
『ドリルを売るには穴を売れ』は読んだので、それに続くマーケティング入門書として、この本を手に取りました。
読んだ理由
「マーケティングの入門書」というところで調べていくと、圧倒的におすすめに挙がるのがこの本でした。
USJということで僕の好きなエンタメビジネスにも関係していたので、「あのUSJの中身を知れるなんて凄い」とワクワクしながら読むことにしました。
書いてある内容
マーケティングの知識から、USJでの実例から、キャリア論まで、すごく盛りだくさんな内容でした。
▼目次
プロローグ USJがTDLを超えた日
第1章 USJの成功の秘密はマーケティングにあり
第2章 日本のほとんどの企業はマーケティングができていない
第3章 マーケティングの本質とは何か?
第4章 「戦略」を学ぼう
第5章 マーケティング・フレームワークを学ぼう
第6章 マーケティングが日本を救う!
第7章 私はどうやってマーケターになったのか?
第8章 マーケターに向いている人、いない人
第9章 キャリアはどうやって作るのか?
エピローグ 未来のマーケターの皆さんへ
知識や実例の説明一つひとつ、読者に熱量を持って語りかけてくれるようなイメージが浮かび上がり、「なるほどなるほど」と話を聴いているような感覚で読み進めることができました。
今回は個人的に、特に重要で、学びが大きかった所を抜粋して詳しく書こうと思います。
マーケティングの重要性
USJを例に、「マーケティングって重要だよ、マーケティングがあるだけで、こんなにも変わるんだよ」ということが語られていました。
ざっくりとUSJの例を書くとこんな感じ。
・USJオープン年の2001年は、年間集客1100万人
・そこから集客はどんどん落ちて、著者の森岡さんがUSJに入社した当時、年間集客は730万人
・そこから森岡さんはUSJのマーケティングをすることで、数々の施策を当てる(成功率97%)
・2014年にはハリーポッターエリアをオープンさせ、年間集客1270万人にV字回復
・資金力が潤沢にあったわけではなく、お金の無い中で施策を当ててチケット値上げもして資金を稼いでいた。
ものすごいストーリーですね。
これを、筆者の森岡さんは「マーケティングを重視したから実現できた」と書いています。
冒頭しょっぱなからこう書かれてしまうと、「具体的にどう考えてどうやってやったの!?知りたい!」と思わざるを得ません。
マーケティングの本質、考え方
ここからは、マーケティングそのものについて理解できるよう説明がされていきます。
森岡さんはマーケティングの仕事を、「商品を売れるようにする」という言葉で説明しています。
「その商品が顧客に選ばれる必然的な理由を作る」とも言い換えています。
そしてマーケティングの本質を、「売れる仕組みを作ること」と説いています。
それじゃあどうやればその仕組を作れるのかというと、以下の3点をやれば良い、と続けます。
1.消費者の頭の中を制する
2.店頭(買う場所)を制する
3.商品の使用体験を制する
1.消費者の頭の中を制する
物を売ろうと思っても、そもそも知ってもらえなければ買ってくれません。しかも人間は忘れやすい生き物です。
だから、認知と同時に商品やブランドに対する一定のイメージ(=ブランド・エクイティー)を消費者の頭の中に植え付ける必要があるということですね。
例えばスタバなら、
緑、落ち着いた雰囲気、BGMがおしゃれ、店員さんが優しい、Wifi、読書や仕事ができる空間
といった一定のイメージが頭に浮かぶと思います。
このイメージが植え付けられていれば、「はぁ、なんか落ち着いた所で休憩して読書でもしたいなぁ」と思った時に、「よしスタバに行こう」と必然的に選ばれるわけですね。
こういったイメージを消費者の頭の中に植え付けることで、自分の商品を買ってもらう必然性を上げていきます。
2.店頭(買う場所)を制する
これは言わずもがなと言えるかもしれませんが、考えることは多岐に渡ります。
まずは「配荷率」です。自社の商品がどれくらいのお店で売られているかという指標です。
配荷率が高いと、商品が買われる機会を多く作れますが、配荷率が低いと「わざわざあの店に行かないと買えない」と買われる機会が少なくなってしまいます。
さらには店頭への並び方にも、「山積」という商品の並べ方もあります。(ドンキとかでよく見ますね)
山積されていると表面積も大きくなるのでお客さんの目につく確率が高まり、買われる機会を増やすことができます。
そして最後に「価格」について触れていました。
価格については、
狙った店頭価格の幅よりも高すぎてもダメ、低すぎてもダメ
だということです。
高すぎると売上個数が伸びません。
逆に安すぎると、ブランドの戦略的に安いイメージを持たれたくない場合に「安っぽいブランド」というイメージがついてしまって価格が不利に働きます。
そして、価格が安いということは小売が流通マージンを自腹を切って安くしていることになるので、中長期的にはその商品が「利幅が薄いブランド」として見られてしまいます。
3.商品の使用体験を制する
顧客に認知してもらい、買う場所を用意できたらある程度買ってもらえますが、「売れる仕組み」にするには、中長期的にリピートしてもらう必要があります。
このリピートに大きな影響を与えるのが、商品の使用体験ということになります。
商品を買ってみて「想像以上に良い!求めていたものだ!」となれば「また買いたい」という気持ちになりますし、「なんか思ってたのと違う」となれば、リピートはされません。
ではちゃんとリピートしてもらうためにどうすれば良いのかというと、シンプルに「お客さんの想像以上の使用体験を提供できるプロダクトを作る」ことです。
マーケターとしては、そのようにプロダクトの作る方向性を導く必要がある、と筆者は説いています。
開発者視点しか入っていないプロダクトになってしまうと、商品は売れませんしブランドイメージも落ちてしまいます。
そうならないようにマーケターは「消費者に取ってリピートしたくなるような体験を作れているか」を常に考えなければなりません。
戦略思考
マーケターには必要不可欠なスキルとして「戦略的思考」があります。
戦略的思考とはどのように考えることなのか?
戦略と戦術はどう違うのか?どっちが大事なのか?
ということについて、本書で詳細に説明していました。
まず、「戦略」を以下のように定義しています。
目的を達成するために資源(リソース)を配分する「選択」のこと。
より砕けた言い方で、「戦略とは、何か達成したい目的を叶えるために、自分の持っている様々な資源を、何に集中するのかを選ぶこと」と説いていました。
例えば、「10万人に影響力を持つインフルエンサーになりたい!」という目的なら、「You Tubeか、インスタか、Twitterか、noteか、どこを主戦場として、どのようなジャンルの情報を発信するのかを選ぶこと」が戦略になりますね。
そして戦略の核となる考え方が、「選択と集中」だ、と筆者は続けます。
「自分の持っている資源を、何に集中するかを決めること」というわけなので、やらないこともはっきりと決めてしまう必要があります。
例えばプロモーション方法なら、「TV CMとWebではやるけど、折込チラシとサンプリングはやらない」のように選択することです。
そうすることで、TV CMとWebに人員と時間と資金を集中できるようになるので、そこで勝てる確率をより上げることができます。
(もちろん、なぜそれを選択すべきなのかは十分に検討する必要があります)
具体的に目的や戦略を考えていくにあたって、よく「どうだったけ?」と混乱してしまいそうになる、「目的と目標の違い」と「戦略と戦術の違い」についても具体的に説明していました。
▼目的と目標の違い
・目的(Objective)・・・達成すべき使命のことであり、戦略思考の中では最上位の概念
・目標(Target)・・・目的を達成するためのに資源を投入する具体的な的
ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドを例にしてみます。
コーポレートサイトを見ると、以下のようなメッセージがありました。
これを元に目的と目標を振り分けると、
▼オリエンタルランドの目的と目標
・目的(Objective)・・・「千葉県浦安沖の海面を埋め立て、商業地・住宅地の開発と大規模レジャー施設の建設を行い、国民の文化・厚生・福祉に寄与すること」
・目標(Target)・・・「ディズニーランドの誘致」
ということになるでしょう。
・戦略と戦術の違い
次は「戦略と戦術の違い」についても触れていました。
▼戦略と戦術の違い
・戦略(Strategy)・・・目的を達成するための資源配分の選択
・戦術(Tactic)・・・戦略を実行するためのより具体的なプラン
戦略思考は必ず「目的→戦略→戦術」と下方展開していくので、この順番で考えていくことが大事です。
これらの目的、戦略、戦術について、本の中に分かりやすい例がありました。()内は僕の補足です。
▼ダイエットの戦略思考
・目的・・・痩せたい
・戦略・・・食事制限でカロリーをコントロールする(つまり、運動して脂肪を燃焼するとか、筋肉量を落とすという選択はしないということ)
・戦術・・・毎晩の夕食をすべて野菜ジュースに変える(つまり、間食を減らすとか、朝食・昼食の内容を変えることはしないということ)
戦略をどうするかによって、戦術(具体的なプラン)が大幅に変わるので、戦略の大切さがとても分かる例だと思います。
食事制限で痩せようと思ったら、運動についてはバッサリ切り捨てるということですからね。なので運動器具などにお金を使うこともありません。
ビジネスシーンでも同じように考えて決めていくのが重要ということですね。
感想・学んだこと
①『ドリルを売るには穴を売れ』では語られていなかった、より具体的な考え方を知ることができた
1.消費者の頭の中を制する
2.店頭(買う場所)を制する
3.商品の使用体験を制する
という「売れる仕組みを作るための方法」もそうですし、
「目的→戦略→戦術」という戦略思考も、マーケティングの基本として学ぶことができました。
これ以外にも、5Cや4Pなどのフレームワークについても説明があったので、網羅的に学ぶことができました。
②USJの施策がどのようなプロセスでお客さんに届けられたのかを垣間見ることができた
特に勉強になったのが、「ハロウィン・ナイト」の話です。
今となっては、USJの「ハロウィン・ナイト」は多くの人が知るイベントとなっていますが、そもそもあの施策はどのような目的、戦略、戦術を経て実現されたのか?というプロセスが本書で説明されていました。
この部分は何度も読み返して、実際の仕事に応用できる部分だと思います。
③マーケティングという仕事のパワーを知った
本書を通じて、「マーケティングによって、企業はここまで変われる!」という熱いメッセージが実例と共にひしひしと伝わってきました。
たとえ技術志向が強い業界や会社でも、マーケティングの考え方を使って、しっかりと売れるように導いてあげれば、爆発的な結果が出ることは凄いと思いましたし、自分も開発職ではありますがマーケティングの考え方を身に着けて仕事したいと思います。
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