ティアキンの「くっつける遊び」が実現した体験とは?
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(ティアキン)をプレイしました。
やっぱり馬に乗ってる時のBGMいいよなとか、武器の入れ替えがめちゃくちゃ楽になって個人的に嬉しいとか、色々語りたいことはありますが、
メインの遊び部分にフォーカスした分析をしてみます。
まず、ゼルダの遊びのベースは「謎解きアクション」です。
道中に置かれている祠や神殿などの謎を解きながら、アクション操作で敵を倒して物語を進めるゲームです。
ゼルダシリーズに通底するコンセプトですね。
その中で、ティアキンの遊びを大きく2つに分けてみると、以下になると思います。
「くっつける遊び」
フィールドを探索する遊び
今回は、ティアキンの遊びの重要コンセプトである「くっつける遊び」にフォーカスしてみます。
オープンエアとしてのフィールドを探索する遊びは、これはこれで書き始めるとめちゃくちゃ文字数かかるので別の記事で書きたいと思います。
「くっつける遊び」
「くっつける遊び」は、ティアキンの1番の魅力であり、唯一無二なところと言えますね。
このくっつける遊びの面白さを実現しているシステムは、「ウルトラハンド」「ゾナウギア」「スクラビルド」にあります。
これらの仕組みによって、ベースの遊びである「謎解きアクション」の体験が格段に変わりました。
例えば、今作では以下のような体験ができるようになりました。
くっつける遊びが「謎解き」にも「アクション」にも幅広く影響を与えていると言えます。
図式化するとこんな感じです。
「くっつける遊び」が最上段のコンセプトとして位置づけられ、そのコンセプトを満たしつつ、ゼルダの謎解きアクションとしての面白さも満たす仕組みとして、「ウルトラハンド」や「ゾナウギア」、「スクラビルド」が設計されていったということですね。
次にそれぞれの遊びの仕組みについて具体的に見ていきます。
ウルトラハンドの面白さ
「ウルトラハンド」の面白さについて深掘っていきたいと思います。
まず、ウルトラハンドの仕様は以下。
1つの対象に対して複数個の物をくっつけることができる
物を持ち上げたあと、X軸、Y軸自由に傾きを調整することができる
くっつける瞬間、微妙な傾きや、微妙な位置の違いもそのまま反映される
何個でも連結させることができる
この仕様があることで、以下の体験を得ることができます。
一つの道具では解決できないことを、くっつけて新しい道具を作ることで解決する達成感
意外な組み合わせによって新しい道具を作ったり、謎解きの解放を発見する面白さ
その過程で「どうやってくっつけると効率が良いか、見た目が面白くなるか」を試行錯誤する楽しさ
その過程で「これとこれをくっつけるとどんなことが起きるかな?」というワクワク
ゾナウギアの種類が多い&くっつけ方によって結果が変わるため、どんな挙動が起きるか体験が毎回違う
色んな種類の物を自在にくっつけることで、作品とも呼べる自分なりの表現をできる面白さ
「ウルトラハンド」によってあまりにも自由自在に物をくっつけることができるため、謎解きアクションの枠を超えて、もはや自己表現すらできてしまうところがティアキンの凄いところですね。
ゾナウギアの面白さ
「ゾナウギア」はそれ単体では単純な能力しか持たないですが、「ウルトラハンド」でくっつけることによって、遊び方が無限に広がるツールです。
トロッコに扇風機をくっつけてレールの上を走ったり、翼に操縦棍をくっつけて自在に空を滑空したり・・・etc.
1つのゾナウギアが持つ能力は1つの動作だけ
例:「扇風機」は一方向に風を起こすだけ
ゾナウギアは、バッテリー残量に応じて作動する
ゾナウギアを複数個くっつけると、その分バッテリー使用量が増える
スペアバッテリーをくっつければバッテリー残量は増えるが、重さが増す
ゾナウギアは物にくっつけて組み合わせて作動させることができる
ゾナウギアを複数くっつけて作動させると、くっつけた個数分すべてのゾナウギアの効果が発動される
上記の仕組みによって、以下のような遊びが実現できます。
「自分なりの謎の解き方」や「自分なりの敵の倒し方」を創造する楽しさ
扇風機1つとっても、トロッコにくっつける、翼にくっつける、ソリにくっつける、イカダにくっつける、床に置いて上昇気流を作る、棒にくっつけて回転させる、という具合に謎解きの解法がとても増える
敵を倒すことに特化したゾナウギアもあるため、それを組み合わせることで単純にリンクが剣で戦うだけでなく、ゾナウギアを使った面白い倒し方を作ることができる
「どのゾナウギアをくっつけるか」の遊びだけではなく、「どうすれば効率的にゾウナウギアを使って目的を果たせるか」というバッテリー効率を管理する遊び
スクラビルドの面白さ
最後にスクラビルドの面白さについて深掘っていきます。
「スクラビルド」の仕様は以下です。
武器・盾どちらにもくっつけることができる
武器・盾に対してくっつけることができる素材は以下
道に落ちている端材や岩
宝石やキノコ
敵を倒した時に落ちる素材(角など)
ゾナウギア
くっつけることができる素材は1つだけ
これにより、以下のような体験を得ることができるようになりました。
(ブレワイでは)防御手段でしかなかった盾が、攻撃手段に変わる面白さ
例:盾に「火龍の頭」をくっつけることで、盾を構えた時に火を吹いて攻撃できる
(ブレワイでは)料理用でしか使えなかった敵の素材が、武器素材に変わる
敵の素材の価値が上がり、敵を倒した時の喜びが増すことになった
攻撃属性(岩をくっつけた時のハンマー攻撃、ルビーをくっつけた時の火の攻撃など)を自在に操ることができるようになったことで、敵の属性に応じて最適な攻撃方法を考える遊びが生まれた
個人的には、敵の素材を武器にくっつけることで攻撃力が格段に上がるという体験が、ブレワイ比較で敵の素材の価値を上げることに成功しており、とても良いなと思いました。
具体的には「白銀ボコブリンの角」を武器に付けると攻撃力が+31も増えるので、白銀ボコブリンを積極的に倒したいという気持ちになりますね。
ブレワイの時はボコブリンのアジトを見つけてもよくスルーしていたのですが、ティアキンでは「白銀ボコブリンいるかな?」とスルーしなくなりました。
レベルデザインで工夫されているところ
「くっつける遊び」のゲームデザインを見てみましたが、ではその遊びを用意しているレベルデザインはどうか、という視点で深掘りしてみたいと思います。
レベルデザインも、工夫されているところが随所にありますね。
全部見ると大変なので、特に面白いなと思ったところをピックアップします。
それは、「エノキダ看板」です。
このエノキダ看板、「エノキダ社長の顔が描かれた看板を支えることができれば報酬がもらえる」というシンプルな遊びですが、ティアキンの広いフィールドの至る所に看板があります。(20~30くらいはあると思います)
これの工夫されている点は以下です。
場所によって支柱や看板の形を微妙に変えている
例:2枚重ねになっていたり、少しズレていたり・・・etc.
場所によって看板を支えるための道具を微妙に変えている
例:木材置き場を近くに置いている看板が多いが、場所によっては岩しか置かれていないところもある
これによって、解決方法が1種類に収斂しないように工夫されていることが分かります。
解決方法が収斂しちゃうと、創意工夫する必要がなくなり、作業になってしまいますもんね。
こういう細かい工夫があるからこそ、ゼルダの謎解きアクションには飽きが来ないんだろうな~と感じました。
まとめ
これまで見てきたように、ティアキンは「くっつける遊び」によって「自分なりの謎の解き方」や「自分なりの敵の倒し方」を創造する楽しさを発明することができたと言えます。
今までのゼルダも、「おそらく想定された解き方ではないが、別の道具を使うことで解けてしまった」というパターンはあったと思います。
ただし、ティアキンの場合はその「別の道具」というのが、色んなくっつけ方ができてしまうおかげでもはや「解法は無限大」と言っても過言ではないですね。
(同じ祠でも、同じ道具を使っているのに、自分のクリアの仕方と友達のクリアの仕方が全く異なる、なんてことがザラにあります。
しかもその解き方はその人のオリジナリティがあふれるので、見ていても楽しい。
こんな体験は少なくともブレワイの時にはありませんでした。
というわけで、ティアキンの「くっつける遊び」について深掘ってみました。
おまけ
余談ですが、「ウルトラハンド」という名前はエモいですよね。
横井軍平さんが手掛けた任天堂のおもちゃの名前をここに持ってくるのは、遊び心があるなぁと思いました。
あと、ゾナウギアの「おきあがりこぼし」は福島県会津若松市の伝統工芸品ですが、英語版ではどういう名前で表現しているんだろう?と気になりました。
調べてみたところ、"Stabilizer"(カメラのスタビライザーと言えばピンと来るかも)と名付けられているようですね。
こういう、役割は同じだけど名付け方だけで微妙にニュアンスが異なるのも面白いですね。
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