歌ってみたのミックスで弄れる場所(3)

 ミックスで弄る事が出来るパートは、ボーカルとオケデータの2種類だけだ。コーラスが入ればまた話は変わるのだが、大体このどちらかしか無いのである。

 基本的にオケデータはパラデータとは違い、パンニングや音量調整が個別に行う事が出来ないので、ボーカルの処理を頑張らなければならない。そもそもオケを弄って良い事なんて本当に無いので、原則ボーカルを中心に弄るのだが、オケが馴染まない理由のほとんどは実際にはオケの方に多くある。

 本当に良い楽曲はボカロでも、他の人が歌ったオケでも、ボーカルの入る隙をちゃんと用意してミックスされているのだが、当然全ての楽曲がそう出来ているとは限らない。というより、そもそも入っていたボーカル以外に合う事は無いのだ。

 何故なら用意されたオケというのはそのボーカルの為に作られているので、他の人が歌うと何が起きるのかというと、単純な雰囲気や馴染み方が変わってしまう。しかし、もっと物理的な話が馴染まない理由を産んでいる。

 例えばEQというプラグインの話を聞いた事がないだろうか?昔のウォークマンなんかはEQが付いており、たいした事は出来ないけれど、自分好みの質感にする為にEQを弄って音質調整をしていた人は多いのではないだろうか?

 そのEQでオケを作成する中でボーカルの邪魔をしないようにミックスを行っている。つまり、そのEQで調整しているのがその楽曲のボーカルの為なのであって、歌い手の為のミックスではいのだ。よって、歌い手が変わってしまえば浮いてしまったり、埋もれてしまったりという事が起きてしまう。要するにボーカルとオケがマスキングしてしまって、本来出てくるべき音が出なくなってしまう。

 このボーカルの抜けをよくする為には、オケデータを最初から構築して合わせていくのだが、歌ってみたのミックスではそれが出来ない。パラデータではないから。だから私は散々歌ってみたのミックスはミックスではないと言い続けてきたのだ。

 では本当に何も出来ないのか?っていうと、ひとまとめになったオケデータにもEQ自体は出来る。オケ全てにEQが適応されてしまう形だが、ボーカルの抜けが悪いなと思ったら、倍音成分の集まりやすい高音域の方を何らかの処理をするというのが一つの手だ。

 勿論アプローチの一つなので絶対に効果が出るのかと言ったらそんな事はない。あくまで試す価値があるぐらいの考え方だ。

 例えばボーカルの4kHz以上を持ちあげてみるとか、反対にオケデータの4kHz以上を全体的に下げてボーカルの入る余地を作ってみるという考え方も出来る。自分のボーカルを邪魔している音域が低音域なのか、中音域なのか、高音域なのか?この辺りはベースがデカい楽曲、シンセが無駄に多く鳴っている楽曲という大雑把でもいいので聞こえ方によって処理を変えてみてほしい。結構その辺りを弄るだけでも変わる。

 ちなみに流行りのImagerやMS処理とやらはやらない方が良い。大体収集付かなくなって何もしていない状況の方が聴きやすいって音源になるのがオチだから。これこそ歌ってみたでやるような処理ではない。

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