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 本当に一年で数日しかないのでは?と思うような晴天の写真は素晴らしい。と思いながら、一年で何百日もある雨の日の今日、この写真を見ながらピッチ修正の思うところについて書いていきたい。

 昨今の音楽では、ボーカルのピッチ修正は当たり前のように行われている。寧ろ、作品として残すためにいかにしっかりとディテールを施すかという観点で行っている節もあるため、ピッチ補正は必須スキルとなっている。

 どのピッチ修正ソフトも鍵盤の画面、MIDIスクロールのような画面があるので、現状がどのピッチになっているのか目視する事が出来る。それ故にピッチ修正は音が聴き取れなくても出来てしまうような錯覚に陥る。

 しかし、この作業がエンジニアにとって、音感もなければやっていけなくなってしまった作業となってしまっている。

 一昔前であれば、ピッチ補正の技術なんてものはなくて、寧ろ1テイクの重みと言うか、失敗の許されない現場だったのである。それはエンジニアだけではなく、プレイヤーもそうだ。そんな環境だからこそ、失敗しないエンジニア、失敗しないプレイヤーでなければ、音楽家をやっていくことは難しかった。昔はそれが当たり前だったので、現代はいかに音楽家にとって。否、全てのアーティストにとって恵まれた環境である事か、編集作業をしているとつくづく思い知らされる。

 話が逸れてしまいそうなので、本題を話すそう。このピッチ補正作業はピッチ修正ソフト、プラグインを使って行うのだが、確かに鍵盤やMIDIロールの画面が出てくるので、現在のピッチを知る事は出来る。

 問題はその曲の正しいキー、ピッチを正しく把握するには、やはり音感は必要だと感じる事。絶対音感とまではいかなくとも、一度聞いて、この曲のキーがどれか、今歌っているピッチはどうズレているのかを聴感上で認識出来ないと、正しい場所への補正が出来ない。それでも昨今の音楽はその補正されるべき音程に対してはガッチガチに補正されるので、滅茶苦茶不自然な歌を平気で流してしまっているものの、それもやはり正しい音程を理解しないと、そこへ修正していく事は出来ない。しかもピッチ修正とは、本当に当てなければならない音程に充てたら音楽的に気持ちよくなるとは限らないからこそ、非常に面倒くさい作業なのである。

 ほんの気持ちちょっと上げてみたり、下げてみたり、わずかなピッチの揺らぎもコントロールしようともなれば、これは非常に厳しい。とても仕事で引き受けて居られないだろうし、徹底してピッチ補正をしたいのであれば、恐らく1トラック千円とかでは難しくて、万単位の修正が必要になるだろう。何処までもこだわってしまうと、もう金額云々の話ではなくなってしまう。また、ここまでガッチガチにこだわってしまうとかえって音楽的ではなくなってしまうかもしれない。

 ほどよく直して、でも直さなきゃいけない部分は確実に。ぐらいの方が丁度いいだろう。

 ただ、歌ものに関して言うと、最近はやれコンプだのEQだのと私のnoteでも散々話してきたものの、ミックスが上手くいくかどうかはボーカルの録音が正しく出来ている事と、ピッチ補正を楽曲にとって正しく出来ているかどうかだ。極論ボーカルがその楽曲にとって正しく出来て居れば、ラジカセ一発録りでも良い音楽は作れる。そして、そういう歌がやはり一番心地が良い。

 ピッチ補正は妥協しない方が良い、しかし妥協とガッチガチの修正はまた=ではないので、この違いを正しく噛み砕けないと、ミックスをする事は難しい。

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