塩サバと豚汁

塩サバと共に食べる豚汁ほど、甘美で美味いものはこの世にあるのだろうか。

私は豚汁が好きだ。でも、違う。
そこらへんの豚汁なんて、ゆうて味噌汁の上位変換。飛びついて食べるような代物では無い。

豚汁ほど、周りの情景に影響される食べ物はあるだろうか。
こたつで食べるみかんも美味いが、みかんがうまい。
寒い時に食べるアイスは美味いが、夏の方が欲している。
映画館のポップコーンは美味いが、私は好まん。
(チュロスはよく食す)

寒空の下食べる豚汁を想像してみてほしい。
飲み込んだ瞬間、食堂を灼熱の液体が通りすぎる。そのまま、胃へダイブして体を遠慮なく温める傲慢なほどの暖かさ。
皆、豚汁といえば寒空を思い浮かべるのでは無いだろうか。
白い湯気が黙々と立つ、あのスープ。 

だが、どうだろう。
塩サバと豚汁を考えたことはあるだろうか。
口いっぱいに油の乗った塩サバを頬張って、白米を掻き込みたくなる衝動を抑えて豚汁を一口飲む。
これほど、贅沢なご馳走はこの世にはない。
塩っぱいと焦り痺れていた口の中に突如現れる甘み。
だが、この甘味は1人で作り出せるものでは無い。
塩サバの塩気と豚汁の油のまろやかさがぶつかった時に生まれる、奇跡の甘みである。

成分などを分析して、塩とほにゃららと〇〇が作用して…なんて、説明できるのかもしれない。
だが、そんなことは知らん。
これは、私の人生最大の発明だ。
世界初じゃなくとも、わたし初の発明である。

成分なんかどーでも良いのだ。
私は、塩サバと豚汁が食いたい。

油のぶつかり合う贅沢な食事。
魚と豚を食す、いわば両手に花の状態。突如のハーレムに驚きと優越感。

白飯は、横でじっと待っている。

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